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ルビらしき文化を発達させた寿司屋

寿司屋のポスター

 休日の駅ビルは混雑していて、昼時にもなれば上層にあるレストラン街はどこも酷く行列を作っている。とりあえず名前を書いて待つのだが、時間を持て余しているものの他のフロアに行くほどの時間もなく、辺りの食事処を見てまわった。
 そこで寿司屋のメニューが目についた。

 おいしそうではあるが既にスパゲッティの順番待ちをしているため食べたくはならない。
 気になったのは「匠 たくみ②」という表記だ。
 匠の読みは「たくみ」であるから、振り仮名に相当するものであることはわかるのだが、あえて たくみとしなかったのは不思議である。そして漢字の「匠」とひらがなの「たくみ」の間には半角スペースが差し込まれている。
 また、②がひらがなの後に書かれているもの気になる。「匠② たくみに」でもよいところをあえて先ほどのように表したのは独自文化といえるだろう。なお、三役にも同様の表記があるがにぎりの「松」や「特選」は漢字のみとなっている。
 この表記が店舗独特のものかもしれないと思い公式サイトも調べてみた。

寿司屋のWEBサイト

 回し寿司活のWEBサイトを見てみたが表記は同様であった。「匠」以外のメニューも漢字+ひらがな表記で揃い踏みである。この表記は店舗が勝手にやっていたわけではなくこの回転寿司で公式に使われているのだ。
(祭に「り」の送り仮名がないという問題については別の記事を参照されたい)


他の寿司屋はどうか

 では他の寿司屋ではどのように表記されているのかが気になる。
 価格帯が近い「回転する」寿司屋のメニューを見てみた。

根室花まる

 根室花まるはひらがなのみ


トリトン寿司

 トリトン寿司もひらがなのみ


天下寿司

 天下寿司は漢字のみだった。

 その他に安めのチェーンでも調べてみたが命名の傾向が異なっていた。
・かっぱ寿司:「まぐろセット」など商品名が具体的なものしかない。
・はま寿司 :「天板」「特上」などのランク商品名のみ
・スシロー :「特上」などのランクか「サーモンセット」のような具体名のみ
・くら寿司 :「大人気セット」「お得セット」などの名称


なぜ併記したのか

 具体的に商品の特性を表していない持ち帰り寿司のメニュー表記には3パターンが見られた
・漢字+ひらがな(回し寿司活)
・ひらがなのみ(根室花まる、トリトン寿司)
・漢字のみ(天下寿司)

 この理由に天下寿司の漢字のみを例外としていいのなら次のような仮説が立つ。
①持ち帰り寿司はそもそもの期限が出前寿司だった
②電話で注文を受けるためには読めない漢字があると困る
③漢字に読みを宛てるか、ひらがな表記とする
④その結果として漢字+ひらがなという特徴的な表記が根付いた
⑤電話注文の文化が廃れてものこっている

 商品名というのはとにかく使われる必要がある。それは電話の時代であれば読み上げられることだったし、現代では検索窓に入力できることである。
 いずれにしても一度その読み(発音orひらがな入力)を経る必要がある。
 これはつまり読めない漢字は商品名に使ってはいけない、使いたい場合は振り仮名を当てよということである。

 公式サイトやアプリから選択するだけで選べるようになり読みが不要になっていく中で「漢字+ひらがな」という表記文化が生き残り続けていくのか見守っていきたい。



参考サイト

https://katumidori.co.jp/takeout/