健康は“状態”でなく“能力”なのだ。ポジティヴヘルス。
病気や障害を持っているからといって、不健康なわけではない。
病気や障害を持っていても、不幸とは限らない。
医学部で習ったような気がしていた
「病気や障害がない状態が、健康」という基本は、
地域や在宅で医療をやっていると、
それが真実ではない、ことに気づく。
「おうちパワー」なんです!とか、
心身二元論では、人の健康や幸せは表現できません、とか、
あげくはBeHappy!です、とか
そんな言葉を使っては
生物医学的なアプローチだけでは、
人が生きる現場や、人生という複雑なもの、その人一人に中だけでは完結しないものがたり性、そういうものは表現しきれない、見つけきれない、関わりきれない
ってことを伝えようと試みてきた。
そこに、オランダから「ポジティヴヘルス」という考え方が、聞こえてきた。
健康とは、
社会的・身体的・感情的問題に直面したときに、適応し、本人主導で管理する能力。
それが、新しい健康のコンセプト、だという。
能力。
健康診断で数値が120までだったら、健康。みたいな、
状態。
ではなく、 能力。
止まった状態の評価、ではなく
動いているベクトル、なのだ。
それを聞いたら、世界が広がった。
納得がいった。
あの、首から下が動かないのに「俺はなんでもできる」と言ったALSの方のことも、
「この病気に出会えたから、今の自分がある。病気に感謝してる」と言ったがんの方のことも、
生まれつき命がけの状態なのに、ニコニコと、周囲にエネルギーを振りまく子どもたちのことも。
医学の物差しを当てた時の「状態」は低い、異常、ダメ、なのかもしれないけど
本人が順応し自分主導で考えて発信している「能力」は高い、すごい、かっこいい。
とても、健康的、なのだ。
オランダの家庭医で、2011年にこのポジティヴヘルスを発信した
ヒューバー先生(Dr. Machteld Huber)は、こう言った。
健康になるために必要なのは、専門職による評価、ではない。
本人主導の対話、なのだ、と。
本人が自分の健康の実感についての自己理解をし、
本人が持つ、レジリエンス(回復力)・自己主導を促進する。
だから、
専門職に求められるのは、問題に焦点を当てた評価や指導ではなく、
対象者の全体に焦点を当てた、自己理解を促す対話の実践、だと。
ポジティヴヘルスの実践方法を、Dr.Huberから直々に教えていただく
研修会を開催させてもらった。
実践方法については、別noteに。
Dr.Huberはこうも言った。
「“ヘルスケア”って言葉があるけど、病気や治療にばかり囚われているヘルスケアは、実際は“ヘルス(健康)ケア”ではなく“疾病ケア”でしょう。医療者が、本当の意味で疾病、ではなく“健康”を扱える時代が来ないといけない。
社会の医療化ではなく、医療の社会化が必要なんだ」と。