医療者の専門性は“評価・判断”から、“インスピレーション・スポットライト”へ!? オランダで見たこと、気づいたこと #ポジティヴヘルス
地域に健康な人が増えるために、医療者は何をするべきか
健診に引っかかった多くの人に説教をする
再検査をして、薬を出す
定期的に薬を取りに来れない人に文句を言う
結局合併症でこんなはずじゃなかったと言う患者を励ます
そんな風な毎日を、現場の医者は送っていないだろうか?その活動は、地域に健康な人を増やしているのだろうか?
ポジティヴヘルス発祥の地、オランダではどのように扱われているのか見てきた。
ポジティヴヘルスセンター視察とインタビュー
オランダには、複数のクリニックや薬局、カウンセリングやリハビリステーション、訪問看護ステーションなどが入っている“健康センター”が各地にある。今、オランダに広がっている、ポジティヴヘルスの考え方。ポジティヴヘルスの考え方で医療やケアを行おうと考えているチームが集まった、ポジティヴヘルスを中心に据えた健康センターへ視察に。Dr.Carolら、関わる多職種のみなさんにインタビューを行った。
なんども出てきたキーワードは「必要のないことまで医療化しちゃいけない」
体調の変化は、医学的に医療で説明できることばかりではない。
そこに気づき、それを大切にすることは、ポジティヴヘルスドクターにとってとても大切なこと。
もともと家庭医だから「全人的にみる」というのは実践してきている、つもり。
全人的にみて、BPS(Bio-Psycho-Social、身体面、心理面、社会面)様々な角度でアセスメントし、アドバイスする。それはこれまでも実践してきた。
でもそれは医療側からのアドバイス、提案、導き。これはポジティヴヘルスではダメ。
「あなたは他のところは健康で、あと少しコレステロールが高いから、ウォーキングとか始めると良いですね」
ではなく
「私は毎日楽しくて、友人とのお茶会も楽しい。最高に幸せなんだ。これが長く続くといいな、って考えた時、ボランティアとか始めたいって思ったんだ。コレステロールが高めだって去年の検診で言われたことも思い出したから、体を動かせるようなボランティアを友人と探しに行こうと思ってるんだ」
と、本人が言うようになっていく。
主導権は本人だから。
本人が選び、決める。そこに医者もいる。看護師もいる。なんか、そんな感じ。
本当の意味で本人に主導権を与えることは時間がかかる。それでいい、時間をかける。
もう一つ、医療化しないために必要なのは、多職種のフラットな連携。
その人を支えるために、多職種がもっともっと連携しないといけないのではないか。
ここでは、「本当に垣根が超えられている」とDr.Carolは言う。
私たちの仕事は、インスピレーションを与えること
専門知識を駆使した、評価や指導。を、しないとしたら、専門職は何をすればいいでしょうか?
ポジティヴヘルスに関わる医療者は皆、こういいます。
「インスピレーションを与えるのが私たちの仕事。それでインスピレーションを得た人が何かをやりたいと言えばそれをサポート。
インスピレーションされなければその時はそれで終わり。」
診察のシーンはごく一部、地域向けの勉強会や、展示、
もっと言えば、ポジティヴヘルスセンターの存在自体がインスピレーションを呼ぶ。
インスパイアされた人たちが動きだす、つまりボトムアップ。
自分で思う健康な状態に向かうために、自分で気づいた、自分で見つけた方法で、それぞれのタイミングで、それぞれのペースで進んでいく。それを支えている。
(再)地域に健康な人が増えるために、医療者は何をするべきか
自分なりのハッピーに気づいた人が自ら動き出す、そこからはドミノ倒しのように
健康が連鎖する。
医療者は何もしていないように見えて、ちょっと、そっと、背中を押している。
楽しているわけではない、押し方を間違えないように気を配ってタイミングを見計らっている。
どうしようもないと思われるような患者にも、
やりたいことがある、叶えたいことがある。
どうしようもない面にスポットライトを当てるのをやめて、やりたいこと・叶えたいことにスポットライトを当て直すのだ。
その時、スポットライトは観客に見えやすくすることが目的ではない、本人に見えやすくすることが大切だ。