『偶然見つけたハル』感想(ネタバレ注意)
ストーリーがとても刺さった!
まず、最初タイトルを見た時のイメージとして、『偶然見つけたハル』だから学園ものの恋愛で「春が来た!青春だ!」みたいな話なんかなと思っていた。
実際は、全く違った。
この『ハル』は『春』ではなく、人名だし、韓国語で『一日』という意味の言葉だった。
私の中でチープなタイトルだという印象から、一気に特別なタイトルになった。
~あらすじ~
主人公は、とある漫画のエキストラ。登場人物欄の隅っこにいるような存在。
漫画のキャラクターに自我が芽生え、ちっぽけな脇役が自分の意思で行動しよう仲間と共にともがく物語である。
設定がてんこ盛りだから、以前は難しくて敬遠していたが、現在Netflixで配信中の新作『この恋は不可抗力』でSF9のロウンに興味を持ったので、観てみることにした。
結論から言えば、最高に泣ける話だった。
私が泣いたポイントは2点ある。
1つ目は、自分は覚えているのに相手は忘れている切なさだ。
自我を持つキャラクターしか漫画外での出来事を覚えていられないという設定を活かした、"2人の思い出なのに1人だけの記憶"というのが何とも寂しかった。
そんな寂しさを乗り越えて、忘れられた思い出を思い出してくれた時の感動は泣くしかない。
自分だけしか思い出を覚えていないのは、時間に取り残されているようでとても悲しくなった。
2つ目は、終わりのあるお話というところだ。
漫画の世界の話なので、漫画そのものが終わればキャラクターたちの人生も終わりを迎える。
普通のドラマであれば、描かれず続くその後の人生さえもドラマの終了と同時になくなることが確定していたので、すごく悲しかった。
登場人物のほとんどが高校生で最後は卒業式までしていたので、自分の終わった学生生活も思い出して泣けてきた。やっぱ何事も終わりがあるっていうのは悲しいな。
この2点が話を展開するにあたり、必ずついて回っていたので話の中で主人公たちが思い出を重ねていく度に涙が堪えられなかった。
昔見た、『Angel Beats!』というアニメ作品を思い出した。あれは死後の世界で自我のあるキャラクターたちが未練を解消して輪廻に帰る話だったので、"自分だけ取り残された"ところが少し似ていたのかもしれない。
ここまででも最高に性癖に刺さったが、更にこの作品は刺しまくってきた。
キャラクターたちは前作の別漫画でも自我を持って恋をしていたのだ。
所謂、前世というやつである。
自論だが、韓国ドラマでおもろいなコレとなる作品は大体「前世」(あるいは「過去」)でも同じ人を好きになって悲恋で終わっている主人公が存在している。
(ex.『星から来たあなた』『ホテルデルーナ』)
運命の出会いっていいなと感じさせてくれるロマンティックな作品ばかりで、やっぱり韓国ドラマは最高だ。
近年、オフィスラブや青春もの、財閥ものなどマンネリ化していたドラマ文化において、本作は、舞台が漫画の中の世界だからこそできることを実現した珍しい作品だと感じた。
次に、キャラクターに視点を当ててみる。
そも、男主人公であるハルが子犬系で性癖だった。
ああいったキャラは普通のドラマではメインになりにくく2番手のイメージが強いので、脇役を主人公にしたこのドラマならではだと思う。
どのキャラクターも学生らしい瑞々しさで、演じる俳優もあ〜、学園もの特有の若々しい演技!という感想を持った。
また、自我のあるキャラクターは漫画内と漫画外での行動の差が生まれるため、内外で客観的に見えるキャラクターの立ち位置が難しいと思った。
例えば、ペク・ギョンは最初から中盤まで嫌なやつだったが、あくまで漫画内の話だったので漫画外になった時の主人公への優しさや好意を素直に受け入れるのが視聴者的に難しかった。
それだけ演技が上手かったということだと思う。
ただ、漫画内でどれだけ性格が悪かろうと、結局絶対悪は漫画を書いている作者だったので、モヤモヤが晴れない作品かもなと思った。
漫画内でどれだけ足掻こうと、作者は痛くも痒くもないだろうので。ドラマを観て、初めて「親の顔が見てみたいな」と思った。
そして、更なる作品の魅力として、OSTが挙げられる。
あらゆる韓国ドラマのOSTは魅力的なものが多いが、本作のOSTで特に良いと感じた点として、歌詞と作品内容の合致がある。
OSTの曲調が作品とピッタリでも話の流れにマッチする歌詞のOSTは中々出会わないが、『偶然見つけたハル』でのOSTはどの曲も話の流れに沿った感情を表現していたり、状況を表すものが多かった。
セリフと歌詞が合致していたところもあり、普段キャラソン畑の住人としてはとても胸に残るものがあった。
特に好きなOSTはStray Kidsの『終わらない物語』だ。流れるシーンにもよるが、ハルの心情を的確に表した曲だと思う。
最大の難点としては、本作のOSTはどのサブスクにもないことだ。悲しい。
以上が、私の性癖に刺さった『偶然見つけたハル』の魅力である。
似たような好みを持つ人にも、本作をぜひ観て頂きたい。
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