どこかで誰かが歌ってる
私は以前フィリピンに何回か旅行に行ったことがあって、アジアなのに南米やアメリカのような明るいノリがある国だなぁという印象を受けた。
とても明るくてフレンドリーな人柄はロサンゼルスに行った時も同じように感じたし、古い教会や要塞などの街並みの印象は南米のどこかの国のようだった。
空港のマーシャラー
3年くらい前に私はセブ島の隣にあるネグロス島という島へ行った。セブからプロペラ機で1時間くらいで着いた。島の空港は本当に小さくて、タラップで飛行機から降りるとすぐロビーへ着く。これからどうやって街の中心地まで行こうかなと考えつつぼーっと座って休んでいたら、さっき手旗信号で私の乗った飛行機を誘導していた係員(マーシャラー)が隣に座ってきた。
『元気かい?どこから来たの?何か困っているのかい?』と親切に声をかけてくれた。「日本から来ました。友達が迎えに来るから待っているんです。」と言うと、『この島は初めてかい?』「いえ、2回目です。明日ダイビングに行くんですよ。」『そっか、いいね。楽しんでいってね。』と一通り世間話が終わると、『じゃあ、次の飛行機があるから行くね。』とロビーから出てまた飛行機を誘導しに行ってしまった。
田舎の空港のせいもあって人との距離感が近いというか、空港のマーシャラー(誘導員)とのどかに世間話できる雰囲気っていいなぁと思った。
フィリピンの井上陽水
帰りの出発ロビーでは、どことなく井上陽水に似た人がサングラスをかけ、ギターで弾き語りをしていた。どうも目が見えない方だったらしく、出発ロビー内にマッサージコーナーがあって、そこでマッサージの仕事をしながらお客さんがいない時はロビーで歌を歌っていた。ロビー内にはお土産コーナーや売店もあって、店員さんがフィリピンの陽水さんの歌に合わせてハモりながら歌ったり、踊ったりしていた。誰かがチップを払うとリクエストした歌を歌ってくれたり、ギターを演奏して私たちの出発を素敵な音楽で見送ってくれた。
プチフラッシュモブ
街中にあるショッピングモールなんかでも週末に歌自慢大会が開催されたり、夕方にはズンバ大会が行われてみんなが踊っていた。日曜の礼拝の後にはご近所さんたちが集まって食事をしながらカラオケ大会をやっていたりする。街を歩いていてもいつもどこかで音楽が流れていて、人目を気にせず通行人が歌ったり踊ったりしていて、プチフラッシュモブが発生している感じだった。スーパーマーケットでも店員さんが仕事をしながら気楽に歌っているし、つられて私も一緒に歌ってしまうこともあった。
色々あるけれどフレンドリーで音楽が日常にある国
きっと南米とかアフリカなんかも日常に歌や踊りが溢れていそうな雰囲気だけど、フィリピンもどこかで誰かが歌っているなぁと思ったし、治安はそんなに良くないのにそれでも雰囲気はフレンドリーで明るいというイメージを持った。しかし旅行者にとって南国の開放的な雰囲気にうっかり油断してしまうととても危ないなとも思った。
きっと悲しいこともつらいことも、嬉しいことも楽しいことも全部音楽に乗せて日常的に歌ったり踊ったりして表現してしまうことは、日本の割と静かで控えめにする国民性と全然違っていて、その国らしさを知ることができて面白いなと思った。