フィリピン留学と停電
何年か前にフィリピンに語学留学に行った。セブ島の隣にあるネグロス島という所に、日本人が経営している語学学校+ホステルのようなアットホームな学校がある。混んでいる時期を避けて7月に、試しに1週間行ってみることにした。
生徒は4人
私の他に日本人の女性の生徒が3人来ていた。
一人はカナダの高校に留学していている人で、割と流暢に英語を話していた。高校が夏休みの間、英語力をキープするためにフィリピンに来たと言っていた。もう一人は20代で東南アジアを旅している途中で、この留学が終わったらベトナムにいる彼氏に会いに行くと言っていた。もう一人の20代は小学校の教員で退職して、夏休みを兼ねて来ていると言っていた。
授業は優しいスパルタコース
朝食をみんなで食べた後、午前中はレベル別に分かれてマンツーマンレッスンを受ける。リスニングや会話など、個別にメニューを作ってもらって進めていく。昼食の後もそれぞれレッスンがあり、最後にグループレッスンで1日が終わった。
私はみっちりスパルタコースを受講していた。初心者であまり話せなかったけれど、先生たちはみんな優しくてゆっくり話してくれたので、たった1週間でも英語に対する苦手意識みたいなものがなくなったと思う。
先生との会話からフィリピンを知る
そして何より先生たちの今考えていることとか、フィリピンの生活の様子を知ることができて、語学だけでなく文化や人にも親しみを持った。
今までフィリピンって治安が悪くてスモーキーマウンテンとかストリートチルドレンとか、フィリピンパブのイメージくらいしかなかったけれど、それだけではなく、明るくてフレンドリーな人が多かったし、世界中で働いているためか、英語力だけでなくコミュニケーション力も高い印象を受けた。
20代の女性の先生が『今日子供が風邪をひいて実家に預けて来たの。すごく心配だからこのレッスンが終わったら帰るね。』と言っていて、若いのに結婚して子供も小さいけれど、先生として働きに来ているなんてすごいなと感心した。
またその先生は3人兄妹で『弟は今大学生だけど、ゲイなの。』と割とセンシティブな話も明るく笑って話してくれた。
その先生の妹も先生として来ていて、発音コース担当でちょっと厳しかった。しかし『フィリピン人は幼稚園から英語を学ぶんだよ。すぐ話せなくても大丈夫。』と言ってくれた。
私は自分からなかなか話すことができなかったので、オススメのカフェとか、スイーツとか、お土産を買うならどこがいいかとか、服はどこで買ってるのとか、簡単な単語を使って色々質問したけれど、先生たちは丁寧に答えてくれた。
『I'm jealous.』
休日の過ごし方についての話題になった時、私は学校が終わったらスキューバダイビングへ行くことを、ちょっと嬉しそうに話した。先生が『島の人は結構泳げない人がいて、海の中を知らない人も多いよ。』と言われた。
先生自身もダイビングに興味があったけれど費用が高すぎて諦めた、だからすごく羨ましいと言われた。
なぜかその『I'm jealous.』という言葉が少し気になった。割とお金がかかるスキューバダイビングとか旅行とか、国によって物価の差があって、自由にやりたいことができないということについて、もう少し配慮して話せばよかったかな、と反省した。
先生は明るく『I'm jealous.』と言っていたのでおそらく『わー、羨ましい、いいね!』くらいの軽いノリだったとは思うけれど、先生は日本に旅行に行ってみたいけれど、日本は物価が高すぎて行けないよ、と少し寂しそうに言っていた。
学校が停電
授業が始まってしばらくしたある日、突然学校が停電した。昼間だったけれど教室が暗く、エアコンも使えなかったため、近所のスーパーマーケットのイートインコーナーへハロハロ(フィリピンのかき氷)を食べに行こうということになった。食べ物の注文の仕方とか、支払方法、トッピングはどうするか、ソースはどれがいいかなど、実践英会話という感じでレクチャーしてくれて楽しかった。
結局一日中停電が復旧せず、夜も学校と宿泊ルームが真っ暗だったので、私と高校生以外の人たちは街に飲みに行ってしまった。
その高校生とスマホの明かりだけで真っ暗な中、妙に話が盛り上がった。カナダにいる彼氏の話とか、将来の夢とか、カナダの学校でタバコとか大麻が流行っていて断るのが大変だとか、週末のパーティー(プロム)の話など、色々と充実した学生生活を送っている感じだった。自習時間も海外ドラマや映画を字幕なしで見ていたり、予習復習もしっかりやっていて一番勉強熱心だった。
人生で一番多感な時期をカナダやフィリピンで過ごすなんてすごい勇気があると思ったし、私ももっと勉強しなければと、とても励みになった。
またその他の毎晩飲み歩いていた女性2人(笑)も、今付き合っている彼と結婚したいけれど、その前に海外で色々と視野を広げて、次のステップに進みたいと言っていて、留学とか旅が自分を見つめ直す大切な時間になっているんだなと感じた。
次の朝も停電が復旧せず、学校の隣の家でトイレを借りたり、顔を洗わせてもらった。ご近所さんがすぐ助けてくれるって、昔の田舎みたいだなと思ってありがたく使わせてもらっているうちに、ようやく電気が復旧した。
フィリピンでは停電はよくあるみたいで、学校を終了した後、1週間くらい旅行していた時もスーパーマーケットで2回ほど停電していた。台風とかが来ると1週間停電なんてこともあるらしい。日本はほとんど停電なんてないよ、と先生に言ったらすごく驚いていた。
旅人にも優しい語学学校
そんなこんなであっという間に1週間経って先生と生徒全員の前でお礼のスピーチをしたら、感極まって泣いてしまった。停電があったおかげで先生と生徒の距離が近づいたというか、アットホームだったので一緒に生活をしたような仲間のような親近感を持つことができた。また帰りに先生からお土産を頂いたり、友達のように接して下さったのでリラックスして授業を受けることができた。別れる時、『1週間なんて短いよー、もっと居ればいいのに。』と笑顔で言ってくれて嬉しかった。
最終日、私が帰る頃に入れ替わりで世界一周をしている男性がやってきた。その人は将来海外で働きたいと言っていて、昨日マニラでぼったくられてお金がない、と笑っていた。きっともう笑うしかなかったのだと思うけれど、その様子を見ていると、何か良い方向へ向かっていくような気がした。
海外に行くと色んなアクシデントが起こるけれど、肝が座ってくるというか、何とかなるだろうと開き直れる感じがするし、思いがけず助けてくれる人も現れたりする。
語学学校なのに、そういった旅人も優しく受け入れてくれる温かさがあるっていいなと思った。
セブ島などの都会的な語学学校とはまた違った、ローカルな生活も垣間見れたり、またホステルのような旅人たちにも優しい語学学校だった。
ただ語学を学ぶだけではなく、現地の人たちや旅人たちと交流もできて、充実した1週間だった。
これからもこういった沢山の人たちの話を聞いてみたいと思うようになり、さらにもっと英語を勉強したいと思った。
追伸:ヘッダーの卵の画像はフィリピンのローカルフードの『バロット』です。殻を剥くと茹でた雛鳥が出てきてグロテスクですが、美味しかったです。