2021年に出会った素敵な楽曲たち #1 SIRUP - Thinkin about us
2021年は、SIRUPさんのアルバム「cure」とともに多くの時間を過ごしました。そのタイトルの"cure"には「(病気)を治す」、「(問題)を解決する」といった意味がありますが、同アルバムにおいてSIRUPさんは、コロナ禍で思い悩んだり、苦しんでいる人々に対して、そして個々人のメンタルヘルスや社会問題に対して向き合い、語り合おうとしたのだと思います。その結果として、多くのリスナーが癒やされた感覚を得たのではないでしょうか。
SIRUPさんは、"Love yourself"、"Educate yourself"という言葉を大事にされており、自身を愛してあげることと学び続けることを常に意識されて活動されていますが、本作「cure」はそのようなSIRUPさんのモットーが強く反映されているアルバムになっていると思います。まさにその一節が歌詞の中に出てくる「Overnight」という曲では、日常の中で無邪気に発される言葉が、人を傷つけてしまっていることに対して目を向けており、本アルバムの中においてもとくに印象的な曲となりました。
「Overnight」をはじめ、アルバム「cure」に収録された楽曲はすべて素晴らしいものでありましたが、中でも「Thinking about us」は非常に強く心に響くものでした。この曲は、大切な人への思いが内省的に描かれており、とても普遍性をもつ楽曲となっています。正確に言えば、同曲は2020年12月にリリースされたものですが、2021年3月にTHE FIRST TAKEでの歌唱とMVの公開があり、また、なかなか終わりが見えないコロナ禍の中で、私自身2021年を通して何度も何度もかみしめるように聞いた曲となりました。
SIRUPさんの尊敬できるところは、楽曲を通じてだけでなく、SNSなどを通じても社会がより良くなるために積極的に発信されている点です。そういった発信は2021年はとくに顕著で、意識的におこなっていたのではいかとも個人的に感じました。たとえば、FUJI ROCKへの出演が決まった際にも、世論からはフェス開催に対する冷ややかな視線が投げかけられましたが、SIRUPさんはアーティスト側からはいち早く声明を出しておりました。そういった発信をすることで、批判の言葉がSIRUPさんに直接向けられることもありました。しかし、影響力のある方が勇気をもって声をあげられることで対話が生まれていくことになるので、そういった行動は本当に素晴らしく、とても尊敬できるものであると思いました。
"Love yourself"を大事にするSIRUPさんだからこそ、メンタルヘルスの重要性も積極的に発信されていました。日本では依然として心の健康・不健康に対して十分な理解が進んでいないと思います。とくにアーティストであったり、スポーツ選手、芸能人などのメンタルヘルスは軽視されがちで、ネット上での誹謗中傷が非常に悲しい結果につながる事件も起こってしまいました。たとえば、テニスプレーヤーの大坂なおみさんも自身のメンタルヘルスの問題について語ってくださったり、東京オリンピックではアメリカの体操選手バイルスさんが決勝戦を棄権されたりしましたが、そのあたりのことが日本に伝わると、違う受け取り方をされてしまうことも多かったです。SIRUPさんは、メンタルヘルスの重要性を多くの人に知ってもらうためにも、そして、ご自身のメンタルヘルスのためにも、自身のファンコミュニティ「channel SIRUP」に臨床心理士のみたらし加奈さんを招くなどして、心の健康についてよりカジュアルに語り合う機会を持たれていました。私自身、みたらしさんのことはこの時に初めて知りました。みたらしさんはメンタルヘルスの啓蒙活動はもちろんのこと、同性パートナーの方とのYouTubeチャンネル「わがしChannel」を運営し、LGBTQに関する発信もおこなっており、SIRUPさんを通じてまた素晴らしい活動を知ることができました。
私が記憶している範囲でも、SIRUPさんはジェンダー平等、セクシズム、LGBTQ、ルッキズム、cultural appropriation(いわゆる「文化の盗用」)、衆院選と若者の投票、気候変動、SDGsなど、とても社会的に重要な事柄について幅広く取り上げていたと思います。このような多様な発信からも、SIRUPさんが常に"Educate yourself"していこうとしているする姿がみてとれます。一ファンとしても、SIRUPさんの投げかけを通じて、自身の考えに向き合う機会が増えることにもなりました。その意味で、SIRUPさんからは、音楽以上のことを与えてもらいました。
音楽以外の部分の話が長くなってしまいましたが、アルバム「cure」以外にもいくつかの素晴らしい楽曲もリリースされていました。資生堂マキアージュのショートフィルムテーマ曲「change」は、変化することを後押しするような歌詞がとても素敵でした。TENDREさんとのフィーチャリング曲「ENDLESS」は2人の長年の素晴らしい関係性を垣間見ることが出来て素敵でした。また、トリプルボーカルの1人として参加するSoulflexの活動では、新EP「More Vibrant」を発表されましたが、とくに「Refill」が私のお気に入りとなりました。
SIRUPさん自身、2022年はさらなる大きなプロジェクトに取り組むことなどについて話されているので、今後どういった発表が出されるのか今からとても楽しみです!
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macico - if