2021年に出会った素敵な楽曲たち #6 Foi - Don't play the love song
Foiさんを本格的に聞き出したのは昨年からでしたが、私が2021年に最も多く聞いたアーティストはFoiさんだったと思います。Foiさんの第一の特徴は、透明感のある高音とメロウな雰囲気を持つ歌声であると思います。キャリアのスタートから、アコースティックギターを使って曲をつくり、路上で演奏されてきたこともあり、その歌声は切ないバラード系の曲と相性抜群です。
第二の特徴が、C-POP、マンドポップの影響がみてとれる楽曲です。というのも、Foiさんは中国にルーツがあり、小さい頃から中国・台湾の音楽に慣れ親しんでいたからです。台湾出身の有名シンガーであるジェイ・チョウ(Jay Chou/周杰倫)さんの大ファンでもあるそうです。私自身、Foiさんに出会うまで、C-POPやマンドポップについて全く知りませんでしたので、Foiさんのおかげで新たな楽曲を知り、とくに素敵なバラードをたくさん知ることができました。そのため、FoiさんのつくるサウンドはJ-POPにはない要素を多分に含んでおり、多くの方にとって新鮮さを感じると同時に、どこか懐かしさのようなものを感じると思います。
2021年2月にリリースされた「Don't play the love song」はまさにFoiさんの魅力が凝縮された一曲になっていると思います。本作は切ないラブソングですが、今のような肌寒い季節にぴったりな曲です。この曲のプロデュースを担当したのがTiMT(PEALR CENTER/Mime)さんです。TiMTさんもまた、少し懐かしさのあるメロウな楽曲をつくるのが特徴的だと思いますが、本作でもそのような雰囲気が見事に表現されています。
「Don't play the love song」以降、フィーチャリングを含め、Foiさんは3曲の楽曲を発表されました。まず、5月にはGloomyさんの「SEEKER」という曲にゲストボーカルとして参加していますが、この曲ではこれまでにあまりなかったラップを披露しています。9月には「婆娑羅」という曲を発表しました。本作は、ボカロPとして知られるJohn/TOOBOEさんによるプロデュースでしたが、ボカロ曲らしいアップテンポな曲をFoiさんは見事に歌いあげています。もともとFoiさんはJohnさんと友人であったようですが、お互いをよく知っているからこそ、これまでとは異なるジャンルであっても、とても素晴らしい作品になったのだと思います。
最後が10月にリリースされた「FLASH POINT II」でした。この曲はもともと「FLASH POINT」として2019年にリリースされていましたが、本作はそのリアレンジとなります。原曲は各種ストリーミングサービスでスマッシュヒットしていました。私自身、「FLASH POINT」を最初に聞いたときにとても強い衝撃を受けたことを覚えています。2020年にはSpincoaster主宰のMusic Bar Sessionにおいて、George(MOP of HEAD)さんがアレンジした「FLASHPOINT」が演奏され話題となりました。そして、2021年に満を持して、Georgeさんプロデュースのもと「FLASH POINT II」がリリースされることになりました。原曲はシティポップ感のあるチルな楽曲でしたが、Foiさんはこの2年間でアップテンポな曲を歌う能力にさらに磨きをかけ、本作をよりダンサブルなサウンドとして作り上げています。このように、2021年のFoiさんはこれまでの音楽性をベースにしつつ、新たなジャンルにも挑戦された1年であったかと思います。
Foiさんは高校時代からシンガーソングライターをしておりますので音楽歴は長いですが、2020年3月に大学を卒業されたことに伴い、昨春から音楽活動をより本格化させています。ただ、2021年度はコロナ禍の影響もあり、思うような活動(とくにライブ)が出来なかったと思われます。しかし、そのような制約下であってもなお、YouTubeの自身のチャンネル上に精力的にデモ曲をアップしたり、中国の最大手動画サイトbilibiliにC-POP、マンドポップのカバーをあげるなど、地道に製作活動を続けられています。中国語のカバー曲として、個人的にとくにお気に入りとなったのが、カリル・フォン(Khalil Fong/方大同)さんの「爱爱爱」でした。
さらには、TBSラジオ「CITY CHILL CLUB」のパーソナリティをつとめ、DJとして、日本・中国・台湾・韓国・アメリカなどのポップス、バラード、R&Bなどの幅広い楽曲を紹介されていました。C-POP、マンドポップはK-POPなどに比べると日本ではまだまだ知られていないと思いますが、それらを高いレベルで紹介できる方というのは、日本ではなかなかいないと思いますので、Foiさんの存在は非常に貴重であると思います。
そのような様々な経験を経たFoiさんにとって、2022年が飛躍の1年になると確信しております!