2021年に出会った素敵な楽曲たち #3 chelmico - COZY
2020年は「Easy Breezy」の大ヒットもあり、chelmicoにとって大きな飛躍を遂げた1年であったと思います。2021年4月に発表されたシングル「COZY」は、最近のポップなラップサウンドとは真逆のとても落ち着いた楽曲でした。心地よいベースサウンドに、お二人のゆったりめの歌・ラップが見事にはまっていました。何よりも歌詞が本当に素敵で、「ただ息吸って生きてマジ偉い」という部分は、仕事疲れ、コロナ疲れの時にはとくに強く胸に響きました。なかなか人に会うことができない時期に、近所を散歩しながら聞く「COZY」は、心をあたためてくれるものでもありました。「COZY」はその後、同名のミニアルバムとしてもリリースされ、多くの素敵な曲が収録されています。
また、2021年はRachelさんのご結婚＆妊娠・出産もあったという素敵な1年になりました。これに関連してとても素敵だなと思ったことがありました。1つ目が、Rachelさんの結婚発表は事実関係をサラッと述べて終わっていた点です。これまで芸能関係の方の結婚報道では、きわめてプライベートなことまでむやみやたらに詮索されることが少なくありませんでした。しかし、当然ながら有名人の方であってもしっかりプライベートは守られるべきで、何を公開し、何を公開しないかは当人によって主体的に決められるべきであり、その意味でRachelさんの発表の仕方はとても素敵だと感じました。
2つ目が、「COZY」のMVに「命2個持ち」（RachelさんがMamikoさんに妊娠を伝えた際に言われた言葉）をしっかり描いていることです。私の知る限り、妊娠されているミュージシャン自身がMVに出ることはこれまでなかった（妊娠という状態が意図的に隠されてしまっていた）と思うので、妊娠・出産に伴う女性のキャリアについて人々の理解をより深めるという観点からも、そういったことも隠さずに出していくというのがとてもchelmicoらしくて素晴らしいと思いました。こういったふるまいは、今後のアーティストの方にとっても1つのモデルになるのではないかとも感じました。それに加え、RachelさんとMamikoさんがお互いを思いやり、信頼しつつ、活動をおこなっているのがとても素敵であると感じました。
ミニアルバム「COZY」リリース後はchelmicoとしての活動は少し少なくなりました。この期間を活用し、Mamikoさんがソロプロジェクトを進め、ソロ名義の鈴木真海子としてフルアルバム「ms」を出され、ワンマンライブも開催されました。「ms」の中でも、親友のiriさんをフィーチャリングした「じゃむ」は、シングル「COZY」とも曲のコンセプトが重なるような、とても素敵な楽曲でした。
Rachelさんの方も、妊娠・出産前後で個人としての活動を精力的におこなっておりました。ラップユニットのlyrical schoolさんに、chelmicoのトラックメーカーでもあるryo takahashiさんとともに楽曲提供された「Fantasy」は、Rachelさんのまた別の大きな可能性を示唆するものでした。さらには、lyrical shoolのminanさんによるソロプロジェクトでは、「all-rounder」という曲にフィーチャリングで参加しており、とてもクールな作品になっています。また、昨年末からRachelさんはSDGs関連のPodcast番組「あしたメディア in Podcast」のMCを務めるなど、社会問題に対しても積極的に学び、発信しようとしており、そういった姿勢もとても尊敬できます。
もちろん、chelmicoのDJであり、ビートーメーカーでもある%C（TOSHIKI HAYASHI）さんの活躍も見逃せません。今年も国内外の様々なジャンルのアーティストに楽曲提供をおこなわれています。個人的にはとくに、HowZさんとの「Ocean」とmoekiさんとの「かわいい」が強く印象に残りました。
Rachelさんが無事に出産されると、2021年11月には約2年ぶりのワンマン「chelmicoの大きい音ライブ」も開催されました。残念ながら、これには参加することが出来ませんでしたが、ライブの様子はスペースシャワーTVにて放送され、現在はオンデマンド配信されているようです。同じく11月にリリースされた「三億円」というシングルは、逆にこれまでのchelmicoらしさ全開で、メッセージは「毎月3億円くれ（非課税で）！」という全人類に突き刺さるものでした。トラックのテイストはこれまでのchelmicoにはあまりなかったタイプでしたが、聞けば聞くほどハマっていく中毒性のある楽曲となっています。
もう1つ特筆すべきは、タイのアーティストとのコラボです。2021年2月にはタイの国民的スターであるSTAMPさんとのコラボ曲「HIDE YOU」を発表しています。この曲では、STAMPさんの、包み込むような優しい大人の歌声がとても素敵でした。また、10月には気鋭のラップデュオのLUSSさんともコラボしており、LUSSさんがchelmicoの「Balloon」を、chelmicoがLUSSさんの「247」をカバーしています。「247」の原曲もあわせて聞いてみましたが、タイ語の与える音の印象が非常に新鮮でした。私自身、これまでタイのアーティストさんのことは全く知りませんでしたが、このコラボをきっかけに素敵なアーティストと出会うことが出来たので、chelmicoに感謝しています。
2021年には、アーティストとして、そして、人として多くのことに新しくチャレンジしたお二人が、2022年に個人としてもchelmicoとしても、どういった活動を進められるのかがとても楽しみです！
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