松橋萌の欧州散歩伝2024其の42(人と散歩をした話,昼)
ルイさんは遅れてやって来た。でもそれが彼女のペース。ゆっくりなテンポ。それはアクシデントによって遅れ、彼女によって“ゆっくり”に変わる。待ち合わせのカフェは、想像していた雰囲気と違う。恐らく韓国人の男性が一人で接客をしていて、それが良い感じの雰囲気だった。奇跡的にいつも電源プラグに近い席が空いている。ホットジンジャーは、人に切ってもらえるのがうれしかった。二杯飲んだ。お湯を足すかい?みたいに聞いてくれたから。
ルイさんは彼女よりもより小柄な女性と店の前で話し、別れたそのタイミングで私は声をかけた。私がさっきまでいたところでアトリエを探していたという。しかし、突然借りられなくなるというアクシデントが起こり、遅れてしまったそうだ。
レバノンパティスリーでお菓子の説明。ルイさんはそこで丁重に扱われた。ローズのエキスがかけられたお菓子で、パートナーには手作りの際に“もっと、もっと”と言われたらしい。その彼がデュッセルドルフに来たきっかけや、来てからの話をした。今何をしているのかについては聞かなかった。トイレに行こうとしたら、レストランに入ることができた。トイレにプライドを感じた。店が空いていることをルイさんは目に留めていた。
瓶の蓋が埋められた道を可愛いねと言いながら歩いた。
miuさんが昨日教えてくれた線路が昼になってよく見える。
パウル・クレー通り。私にとって二つ目の。
チチカカってまだ日本で流行っていますか?ルイさんのまだ入ったことのない素敵なお店に入ってみた。友達は値切れないが、彼女は交渉するらしい。
画材屋に寄って、カスタマイズできる木枠に驚いた記憶を見せてくれる。
クンストアカデミーの隣の建物はずっと工事している。それはまた、介護関係の施設になる可能性がありそうだ。“スーパーじゃないや”
彼女は友達に会った。友達からフェルトのバラを貰ったりしていた。そして、んー…今あなたにあげられるものがないの、とバッグの中を漁った。その友達は、卒業を前に韓国へ帰るのだという。ルイさんは今年アカデミーを卒業する。
アトリエで作品を見せて貰い、作品の話をした。私は話を聞いて、“散歩に名前をつけてみよう”と思った。部屋は一番良い場所だった。
屋上の景色を見せてくれて、ありがとうと言った。TV塔。花火見える。
一つ一つのアトリエが明かされていく。ルイさんが前にいて風変わりで気に入っていたところ。誰かが窓から落ちたところ。クレーのいわくつきの部屋で、誰かが死んだ所。
ルイさんの髪は、三日間だけ銀色だったそう。
アカデミー前に、ツアーをする人が立っている。仮装して。
橋の構造は面白いけど、ルイさんはアカデミーから目と鼻の先のその橋を歩いたことがない。ナムジュンパイクの作品の側で歌を歌い出した人をルイさんは苦笑いした。私はそういう人にリアクションしてしまう。彼女は私を電車が来る所まで送ってくれた。
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