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【咲-Saki-考察】宮永咲の脅威である5人の黒百合と、恐怖を乗り越えた日【後編】


もうすぐ咲本編の決勝戦が決着しますね!
ということでこれを機に咲本編を読み返していたのですが、ふと気になることを見つけました。

「咲さんが対局で苦手意識を抱いてる子たち、なんかみんな髪色が紫の子ばっかな感じするな…」

これが2、3人とかなら偶然被っただけか…と考えられたのですが、該当する人が4人もいるとなると、これは偶然ではなく意図された描写なのでは…?と思い、今回の記事を書かせていただきました。

また、本来は紫という共通項を持つ4人の話をするだけのつもりで記事を書き始めたところ、想定外の5人目が出てきたりなど色々発見があったので、それら含めて最後までお楽しみいただけたら幸いです。



この記事は二部作記事の後編となります。
前編の記事のネタバレがありますので、前編も読まれる予定の方は先に前編から読んでいただくのをオススメします。
また、後編記事をもしお気に召していただけましたら、前編も読んでいただけるととても嬉しいです。


※この記事には、咲-Saki-18巻までのネタバレが含まれております。特に全国大会Bブロック準決勝大将戦のネタバレが多分に含まれております。

※この記事には、花言葉など定義が一意に定まっていない事柄を引用した筆者の解釈が含まれております。星の数ほどある解釈の一つとして読んでいただけたら幸いです。

※記事本編では敬称略とさせていただきます。



1 宮永咲の脅威とは


そもそも宮永咲が苦手意識を抱いてる、とはどういった事になのでしょうか。
これについて、咲-Saki-8巻にて竹井久が、「人は自己の領域を脅かすモノを恐れる」と言及しております。

「支配」とは?


また咲シリーズでは能力者について話す際、「支配」という言葉が頻出されます。こと能力者においては、この支配している領域を侵害されることが、脅威と感じることと言えるでしょう。
咲にとっての領域とは、言うまでもなく「嶺上牌やカン材を支配できる能力」のことです。

ということで、作中で咲の領域である、槓材と嶺上牌の能力の侵害を行った、「紫色がイメージカラーとなる、咲にとって脅威となる人物」を挙げてみましょう。

①藤田靖子

「まくりの女王」と呼ばれるプレイスタイルの一環で、カンをして咲の支配下にある嶺上牌を奪い、トップの原村和をまくりました。
久の目論見通り、咲達をヘコませることに成功し、これを機に咲達はさらに強くなることを望みます。

②加治木ゆみ

長野大会決勝大将戦において、宮永咲の嶺上開花に特別なものを感じ、加槓への槍槓&国士無双を匂わせての暗槓阻止により咲に恐怖を与え、能力行使を幾度も留めました。

③夢乃マホ

咲の能力を模倣し、日に一度できるかできないかという限定的な能力行使により、咲と同等以上の支配により支配権を奪取し、嶺上開花で和了しました。久の狙い通り、長野大会後の浮ついた気持ちに喝を入れられます。

④末原恭子

全国大会で相対した姫松高校の大将であり、能力者の牌の支配についても理解しています。宮永咲の支配の性質を見抜き、準決勝では対策を用意して咲の能力行使を幾度も留めました。


(※池田華菜、ネリー・ヴィルサラーゼ、獅子原爽も宮永咲相手にカンをしていますが、紫色の法則に当てはまらないので今回は割愛します。)

あれ?タイトルとかサムネでは5人いるのに1人いなくね?となるかと思いますが、5人目は少し特殊なため、後述させていただきます。


2 百合の花

夢乃マホ


ということで、宮永咲の脅威となる紫色の4人を挙げさせていただきました。
ではこの4人は何かしらを意図して作られたキャラなのでしょうか?正直共通項がイメージカラーが紫なことくらいしか分かりません。

そのため、名前や誕生日や出身などの情報を片っ端から調べてみたところ、この4人と、宮永咲と非常に縁の深いものとの繋がりを発見しました。


2部作の前編で語らせていただいたのですが、宮永咲と非常に縁の深いもの、それはアルストロメリアという百合に似ている花と、カサブランカという百合の花です。
宮永咲が嶺上開花で和了る時は、長野編ではアルストロメリア、全国編からはカサブランカの白い花達が印象的に描かれています。

また、前編でこの2つの花に触れたのですが、前編の内容を掻い摘んで説明すると、

「アルストロメリアをルーツとする宮永咲が、ユリの女王との異名を持つカサブランカに成長する」

という考察を行いました。
そしてこれらの話が、今から語る紫色の4人に繋がるものとなります。


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花などには、それぞれの誕生日に対応する「誕生花」というものがあります。ということで、紫色の4人の誕生花を調べてみたところ…

藤田靖子…誕生日は6月25日
誕生花…ユリアルストロメリア
加治木ゆみ…誕生日は12月21日
誕生花…カサブランカ
夢乃マホ…誕生日は12月20日
誕生花…ピンクのアルストロメリア
末原恭子…誕生日は8月9日
誕生花…赤のアルストロメリア

という結果になりました。全員誕生花にアルストロメリアか百合の花あるんやけど!?!?!?



また、月単位にも誕生花が宛てがわれており、6月、8月、12月の誕生花は百合の花となります。

月毎に調べても、12ヶ月のうち1月、2月、3月、5月、9月、10月、11月の7ヶ月は誕生花が百合ではないため、全くの偶然であるともあながち言いきれないかもしれません。
ちなみに4月はアルストロメリア、7月は百合の花が設定されています。

(※誕生花というのは、一つの誕生日に10個ほど誕生花がある上、掲載媒体によって取り上げる花も変わってきます。そのため、今記事では検索にて「〇月〇日 誕生花」や「〇月 誕生花 百合」等で検索し、3件以上ヒットしたもののみを取り上げております。)


紫色の4人


ということで、調査の結果、4人の誕生日と誕生月全てに、百合の花またはアルストロメリアが宛てがわれていることが判明しました。3人までなら偶然と考えられますが、4人も続けば必然と考えられるかもしれません。

(※ちなみに、宮永咲本人の誕生日の10月27日ですが、おそらく「読書の日」が由来となっているようで、誕生花で検索かけても百合または百合に近しいものは出てきませんでした。)

3 黒い百合の花

藤田靖子


紫色の4人の誕生花が、百合の花またはアルストロメリアにまつわるものがあるということまでは分かりました。

ではなぜ4人のイメージカラーは紫色なのでしょうか?
宮永咲の百合の花との共通項があるのなら、白またはそれに準ずる色になると思われるのですが。


と考えていたところ、百合の花であり、しかし白い百合の花と対極のイメージを抱かれるものを思い出しました。
それが、黒百合です。



ということで、紫色の4人と黒百合にはどのような接点があるのかについて、私の考えを書かせていただきます。


まず黒百合は、植物分類的な意味では厳密には百合の花とは別の植物ですが、見た目は百合とかなり似ていることから、海外でも「〇〇Lily」という名で呼ばれています。

黒百合


黒百合の見た目は、緑色の葉と雌しべに、赤色紫色に黒がかかったような花びら、そして黄色の斑点と雄しべ… 


…うわぁ!?全部ある!?マジで!!?!?

次に、黒百合は種類が2つあるのですが、紫色の4人のイメージはミヤマクロユリだと考えております。

その理由として、まずミヤマクロユリは漢字で書くと深山黒百合となります。
そう、深山というと、咲-Saki-では特に、高鴨穏乃の山に馴染みがある特性などから、「王牌を含めた牌山の深い所」を指すのに使われる言葉です。
宮永咲が嶺上牌を含む王牌の支配において脅威と感じている4人のモチーフが、深山の名を持つ黒百合だとしたら、なにかしらの意図がありそうで興味深いですね。

また、ミヤマクロユリは亜高山帯と高山帯に生育する植物です。
この亜高山帯と高山帯は、森林限界と呼ばれる高木の生長限界が境界線とされています。
そう、咲-Saki-1局の宮永姉妹の会話に登場した「森林限界」に、このミヤマクロユリは開花します。

森林限界を超えて、嶺の上で咲く強い花になるという白百合の宮永咲と対比的に、宮永咲の嶺上牌を脅かす4人のモチーフが森林限界に咲く黒百合というのは、面白い構図ですね。


それと、花言葉も対比的な意味になっていて、白い百合は「祝福」など幸せな言葉が多いのですが、黒百合は「呪い」などの不幸な言葉が多かったりします。


宮永咲を「白い百合」とするなら、その宮永咲の脅威であるならば対極の「黒い百合」とするため、宮永咲の天敵となる方のモチーフは黒百合を連想できるデザインになっている、と考えられます。

4 「対応」への恐怖

加治木ゆみ


宮永咲の脅威である紫色の共通項を持った4人とは誰か、またその4人と黒百合との関係について話させていただきました。

ここからは、宮永咲と"5人"の黒百合についての話をしたいのですが、その前提として、まずは全国大会2回戦の宮永咲について書かせていただきます。



2回戦大将戦の後半南3局、宮永咲は強大なプレッシャーを放ちながらも、自分で和了せず、オーラスでは安手を和了ってプラマイゼロを達成しました。
宮永咲は今までの対局でも普通にプラマイゼロを達成していたのに、なぜ2回戦では強大なプレッシャーを放つほどの能力行使を行わざるをえなかったのでしょうか。


石戸霞と姉帯豊音も強力な能力を行使していましたが、咲は2人の能力もろとも受けきって和了していますし、末原恭子はそもそも特別な能力を有しておりません。宮永咲にとって大きな脅威となるものはいないはずです。

なのに、2回戦終了後には特別な能力を有していない末原恭子に「一番手強い」「次は勝てない」という評価をしております。これが予想外の評価であることは読者だけでなく、咲の話を聞いてすぐの竹井久のリアクションを見ても明らかかと思います。


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宮永咲は長野編で、藤田靖子・加治木ゆみ・夢乃マホの3人から領域侵害を受け、その度に領域侵害への恐怖を覚えていましたが、その後は領域侵害についての恐怖を克服する機会を得られず、恐怖心が残った状態で全国大会に出場しております。

克服する機会が得られなかった原因として、長野編での3人の領域侵害には「再現性」が無かったためと考えられます。



藤田靖子は「勝つため」に嶺上牌を利用したという、あくまでも手段の一つにすぎません。
加治木ゆみの槍槓等も、本人が今回は偶然うまくいったが、狙って槍槓などそうできないと考えておりました。
夢乃マホはまだ中学生であり頻繁に会う機会もなく、模倣も日に一局だけという制限があります。


このように、長野編の3人の脅威というのは、再現性に乏しい状況下での領域侵害だったのです。そのためか、宮永咲は領域侵害への恐怖を払拭できていない状態で全国大会に臨むことになりました。

全国大会2回戦大将戦の前半東一局、末原恭子は早和了りのために鳴き、そのせいで宮永咲はカン材を掴み損ねてしまいました。これは恭子は意図せずして「宮永咲の領域侵害」を行ったことになります。アニメ全国編では咲の「この人…」という心の声が追加されています。

その後、末原恭子は姉帯豊音の追っかけリーチからの直撃が確実なものかを確認して、それ以後はリーチをしないという方針を取りました。
石戸霞による強制絶一門についても、三麻の経験を利用して超速攻で和了り面清和了を阻止しました。


末原恭子は、相手の性質を確認して立ち回り、2人の能力に「対応」することができました。
能力者でない者が、能力者の打ち方に「対応」して能力行使を阻止する。宮永咲はこれと同じことを、長野大会決勝で"実体験"として知っています。
加治木ゆみの領域侵害と同じなんです。

前半戦東一局の意図的でないカン材の掴み損ねだけならそこまで脅威に感じることもなかったと思われますが、その後の姉帯豊音と石戸霞への「対応」を眼前で見せつけられ、宮永咲は、

「次に"対応"されるのは私だ。東一局のカン材の掴み損ねは偶然だと思うけど、もしかしたら既に"対応"されているかもしれない」

という、領域侵害されたかもという恐怖を末原恭子に抱いてしまったのではないでしょうか。裏付けとして、準決勝にて同じくカン材が流れる局面になった際、「やっぱりこの人…」と、末原恭子に対して動揺の眼差しを向けております。


領域侵害された時の恐怖を克服できていない宮永咲にとって、これは非常に心を乱される展開になってしまいました。

宮永咲が麻雀部に加入したのは5月下旬、また全国大会の2回戦は8月上旬と考えられており、麻雀部に加入して「勝つための麻雀」をしだしたのは2ヶ月半となります。つまり、宮永咲にとって勝つための麻雀とは、ごく最近会得した打ち方であるのです。
そのため、平時では行えていた打ち方が、恐怖により心を乱されてしまっため、やむを得ず「一番慣れてる子供の頃の打ち方」をせざるをえなかったのではないでしょうか。

宮永咲は対局室への入室時は気合いの入った表情をしておりましたが、対局終了後は萎縮しきったような様子に見られます。
2回戦で清澄は何とか勝ち上がれたものの、姫松も勝ち上がってしまった。準決勝にて末原恭子と再び対峙することになってしまったのです。

ということで、2回戦の話の結論としては、
「2回戦の宮永咲は、末原恭子の能力者への対応から、過去の領域侵害の恐怖を思い出し、平常心で打つことができなくなったのではないか」
というものになります。


しかし、実は全国大会2回戦までをよく見てみると、
「全国大会2回戦までは、夢乃マホにより支配権を奪取された1局以外、宮永咲の支配は揺るぎないものだったのではないか?」
という考えが浮かびました。


というのも、例えば長野大会決勝では、加治木ゆみの槍槓や天江衣の強大なプレッシャーなどによる萎縮こそすれ、天江衣の支配も王牌にまでは届いておらず、何度も嶺上牌による有効牌のドローを行っておりました。

宮永咲が強大なプレッシャーを放った2回戦でも、他家によるカンも嶺上開花もなく、姉帯豊音と石戸霞の能力も王牌の支配までには至らなかったため、宮永咲は他家から「やりたい放題」と言われるほど、何度も有効牌のドローを行っておりました。

宮永咲にとって、2回戦は嶺上牌の支配が揺るぎない状態であったにも関わらず、宮永咲は「支配に対応されたかもしれない」、という根拠に乏しい恐怖にとらわれていた、それ程宮永咲にとって、「領域侵害」というのは恐ろしいものなのではないかと考察をしました。



しかし準決勝では、宮永咲の最も恐れていた、「再現性のある領域侵害と、王牌の支配権の奪取」が行われることとなります。

5 準決勝での避けられない恐怖

末原恭子


ということで、紫色の4人の黒百合による、宮永咲の2回戦での恐怖について話させていただきました。
ここからは、5人目の黒百合の話と、宮永咲の準決勝での恐怖について書かせていただきます。

自分の支配が対応されてしまうのではという怯えを抱いたまま、宮永咲は準決勝に臨むことになります。

準決勝前半戦東一局、末原恭子の鳴きにより、また宮永咲のカン材が流れることになります。しかし2回戦と違うのは、これは末原恭子が意図して行った、宮永咲への領域侵害となります。
今回の鳴きについては明確に領域侵害を行ったものであると宮永咲も気付きました。


しかし、末原恭子の領域侵害だけでは済みません。
東二局、ネリー・ヴィルサラーゼに「意図したかのような嶺上開花」で和了されてしまいます。

さらに東四局の獅子原爽の親番では、ホヤウカムイの行使により数局に渡る他家の能力無効化を行い、続けてアッコロカムイの行使により山(咲の領域である王牌)まで染め上げてしまいました。

と、前半戦の東場のみで、「末原恭子と獅子原爽による再現性のある領域侵害と、ネリ-・ヴィルサラーゼと獅子原爽による王牌の支配権の奪取」という、宮永咲の最も恐れていた事態が起きてしまいました。


ただ、宮永咲は、公式戦にて幾度もカンによる有効牌の追加ドローを行っており(特に全国大会2回戦)、他チームから対策されるのは時間の問題だったのですが、いきなり再現性のある領域侵害と王牌の支配権の奪取が3人からされてしまい、咲にはかなり苦しい展開となってしまいました。



非能力者であるが故に徹底的な分析と対策を講じ、宮永咲の能力行使を幾度も留めた末原恭子。

自身のプレイスタイルの一環で、嶺上牌を有効活用し和了したネリー・ヴィルサラーゼ。

限定的な能力行使により、咲の王牌の支配を上回った獅子原爽。

この宮永咲への領域侵害のパターン、見たことありませんか?
そう、これは長野で宮永咲の領域侵害を行った、加治木ゆみ、藤田靖子、夢乃マホの3人のパターンと同じなのです。

2回戦では加治木ゆみを想起させる末原恭子のみが脅威でしたが、準決勝では恭子に加えて藤田靖子を想起させるネリー、夢乃マホを想起させる爽と、準決勝の3人ともが「宮永咲が長野で領域侵害を受けた3人と重なる」状態となっていたのです。


6 「怖いけど」


前半戦終了後、ひどく疲れた様子の咲ですが、原村和の叱咤激励により、咲は麻雀を楽しむ心を思い出します。
後半戦開始時には準決勝の最初の時のような、「がんばるぞ」という気持ちが表情から見てとれます。


と思ったのもつかの間、他家も早々に攻めてきます。
後半戦東二局、末原恭子がランダムに牌を切り、卓全体へのコントロールを打ち消します。

しかし、宮永咲一人だけが「対応」されるわけではありません。
竹井久のアドバイスにより、「普通の麻雀を打つ」ことを思い出し、カンや支配などに頼らず普通に打って普通に和了るという、「宮永咲への対応」に対応し返しました。

準決勝での咲の打ち方は、嶺上牌の引き入れにより和了りまくってた2回戦とは対極の打ち方となっております。

怖いな、でもーー…負けられない!
怖いけどがんばらなきゃ!

咲-Saki-15巻  150局、151局


後半戦東三局、獅子原爽によりフリカムイが行使され、宮永咲の嶺上牌を潰す目的でカンをしました。

他家による強大な能力行使と、先制したカンでの嶺上牌潰し。
宮永咲にとってはとても怖い状況です。
そのような怖い状況であっても、宮永咲は「曲げられないところ」であるカンをして嶺上開花で和了することができました。

今までは恐怖に晒され、縮こまることしか出来なかった宮永咲が、恐怖を前にしてもがんばって進み、他者からの嶺上牌の侵害を受けてもなお、嶺の上で花開きました。


そして宮永咲の二度目の嶺上開花により百合の花が咲きます。
獅子原爽の目にも花が映り、爽は「野の百合」に関する聖書の一節を思い浮かべます。


この花は、長野編で登場したアルストロメリアとは別の花になります。
2回戦で二者の能力を受けきって嶺上開花した時と、準決勝の二度目の嶺上開花で描かれている、
カサブランカという百合の花になります。



カサブランカは百合を代表する品種であり、百合の花といえば、真っ白で、花弁が沿っており、上を向いている、このカサブランカをイメージする方が多いと思います。

そんなカサブランカは、その美しさから「ユリの女王」という異名を持ちます。
嶺上牌を含む王牌の支配を得意とする女の子、宮永咲に相応しい花ではないでしょうか。

長野編で描かれた「未来への憧れ」の花言葉を持つアルストロメリアから、強敵たちとの闘いにより「ユリの女王」の異名を持つカサブランカに成長した、と考えるととても素敵ですね。


カサブランカは、オリエンタル・ハイブリッドという交配により生まれた品種です。オリエンタル・ハイブリッドの歴史は古く、1864年にカノコユリとヤマユリを交配して誕生したのが、オリエンタル・ハイブリッドの第1号となります。


カノコユリ




このカサブランカの原種の一つであるカノコユリの誕生花は、7月4日、8月2日、8月7日とされており、この誕生日に該当するキャラクターが、2024年6月現在で咲シリーズに1人だけいます。



カノコユリの誕生花として定められている8月2日生まれであり、この準決勝で宮永咲と対局している有珠山高校の大将。彼女こそが5人目の黒百合である、獅子原爽です。


7 5人目の黒百合、獅子原爽

獅子原爽


準決勝にて宮永咲と闘った獅子原爽ですが、こちらは最初に語った「宮永咲が苦手意識を持つ紫色がイメージカラーの子」という共通項から外れており、また誕生花も百合の花ではありますが、カノコユリという絶滅危惧種の触れる機会の少ない花だったため、記事の草案段階では完全にノーマークでした。

しかし黒百合やカサブランカについて調べる内に、獅子原爽との共通項の多さから、「紫色じゃない"黒百合"」である材料が固まったので、5人目として書かせていただきます。

5人の黒百合



まず、獅子原爽が宮永咲の脅威である黒百合をモチーフとされているのならどうして紫色がイメージカラーじゃないんだ?という点についてですが、

①獅子原爽は4人とは別の種類の黒百合がモチーフであるため、アプローチが異なる
②獅子原爽の外見は誕生花であるカノコユリが強く反映されている

という理由があるのではないかと考えております。


序盤で、黒百合に種類が2つあると話しましたが、獅子原爽はミヤマクロユリではない、もう一つの黒百合である「エゾクロユリ」がモチーフなのではと考えております。

エゾクロユリ、もちろん漢字表記は「蝦夷黒百合」であり、北海道などに自生しております。検索をしたら洞爺湖にも黒百合が咲いているという記事を見つけました。



また、黒百合には「呪い」「恋」という、2つの花言葉があります。

一つ目の「呪い」の花言葉については、爽が準決勝で使用した寿命の支配者(パコロカムイ)を想起させる花言葉となっております。

二つ目の「恋」の花言葉については、北海道のアイヌ民族の伝承から来ているものになります。
白い百合は、キリスト教の聖母マリアの象徴とされており、一方黒百合の花言葉の一つはアイヌの伝承から来ております。
キリスト教系の学校に通いながら、北海道のアイヌのカムイ達からの加護を受ける爽を彷彿とさせるのではないでしょうか。

黒百合での根拠はこれで最後になるのですが、黒百合をアイヌ語にすると、アンラコㇽ(黒い葉を持つ)、またはパウチコㇿムン(淫魔の草)と言うそうです。
パウチカムイ!?


黒百合との接点の話は以上となるので、次は爽の誕生花である「カノコユリ」について考察させていただきます。


爽の誕生日である8月2日の誕生花には、カノコユリという百合の花が登場します。
カノコユリの見た目は、濃い赤橙色の雄しべに、ピンク色の花びらに、赤色の斑点です。
有珠山高校の制服を着た獅子原爽と同じ色ではありませんか?


カノコユリはピンクの百合の花です。ピンクの百合の花言葉は「虚栄心」であり、5決大将戦にてカムイがほとんど無いのにハッタリをきかせて和了した爽の姿を思い出します。


次に、爽の髪型って、咲世界でもけっこう独特だと思いませんか?
サイドポニーに決まった本数の束があったり、前髪の左側は束が2本になっていたりと。
それで爽を真正面から見た際に、爽の髪の毛束はサイドテールに4本、頭頂部のアホ毛に1本、前髪に4本、後ろに下ろした髪は前から見たら4本と、合計13本となります。


それと百合の花の話に戻るのですが、百合の花は内花被と外花被片(ようは花びらの部分)が計6枚、雄しべが6本、雌しべが1本という構造になっております。
そう、ユリの花の構造物を足すと、合計13本となるのです。


そのため、獅子原爽の髪型は百合の花がモチーフとなっているのでは?と考察しました。

次に獅子原爽本人の話になります。

「5 準決勝での避けられない恐怖」にて、爽の領域侵害を限定的な能力行使と話しました。
これは間違ってはいないのですが、100%の正解という訳でもありません。
なぜなら獅子原爽は、宮永咲が長野で受けた3つの領域侵害を1人で全部やっています。


まず爽は、ホヤウカムイの行使により数局に渡る他家の能力無効化を行ったり、意図的に嶺上牌を潰す目的でカンをし、宮永咲の能力行使を幾度も留めようとしました。

また、アッコロによりドラを乗せ打点を上げるという自身のプレイスタイルの一環で、ホヤウカムイに続けてアッコロカムイを行使し、効果の局数が短いカムイ達の限定的な能力行使により、咲の領域である王牌の支配権を奪取し、自身の能力で染め上げてしまいました。

獅子原爽一人で、宮永咲の脅威となるプレイングを行っていることになります。爽一人だけが黒百合の種類が違うというのも、この点から来ているのではと考えています。

そして極めつけには、大将戦前の爽の「遊んでくる!」という発言です。

宮永咲は準決勝のインターバルで、ようやく麻雀を楽しむことを思い出しましたが、獅子原爽は最初からこの対局をめちゃくちゃ楽しんでます。


獅子原爽は嶺上開花での和了以外の、宮永咲のライバルポジションといえるようなことを全部1人でやっています。めちゃくちゃです。とんでもねぇ。宮永咲ライバルポジション欲張りセットすぎる。



ということで、色々と書かせていただきましたが、最後にカノコユリとカサブランカとの話をさせていただきます。

先ほど語ったように、カノコユリはカサブランカの元となった、オリエンタル・ハイブリッドの第1号品種改良の原種として用いられています。


5人目の黒百合でありながら他の4人とは違う黒百合をモチーフとし、カサブランカの花の歴史の始まりであるカノコユリを誕生花として持ち、多彩な能力で王牌を支配した獅子原爽と、
幾多の恐怖を乗り越えて、領域を侵害されても尚「ユリの女王」との異名を持つカサブランカの花を咲かせて和了した宮永咲との対局は、必然だったのかもしれません。


8 宮永咲の髪のハネ


前項にて、獅子原爽の髪型は百合の花モチーフなのではないか?という話をさせていただきました。

が、私は爽だけではなく、
「宮永家と黒百合の5人全員の髪型が、百合またはアルストロメリアをモチーフとした髪型なのではないか?」と考えております。

ということで、6人を描き起こしましたので、まずはこちらをご覧下さい。


宮永咲は宮永家代表です


黒百合の5人の誕生花を見た時に、
「百合の花が誕生花にある人」と、
「アルストロメリアの花だけが誕生花にある人」
に分けられます。

そして前編でお話ししたのですが、宮永家はアルストロメリアの花がモチーフとされていると考えています。


6人を並べてみたところ、
百合の花が誕生花にある人」は、髪が大きく反っている箇所が複数あるのに対して、
アルストロメリアの花が誕生花またはモチーフとしてある家系の人」は、少しだけハネている箇所が一つだけあるんですよね。



百合の花とアルストロメリアですが、写真で分かるように花びら(花弁)の反り方が全然違います。
百合はとても大きく反っているのですが、アルストロメリアはラッパのように少し反っている程度に留まります。

つまり、この6人のうち、
誕生花に百合の花を持つ人の髪型は、百合のように髪が大きく反ったものになっているのに対し、
誕生花もしくは家系にアルストロメリアだけを持つ人の髪型は、アルストロメリアのように少しだけ反った髪型になっている
のではないでしょうか。


アルストロメリアがモチーフの家系である宮永家(アークタンデ家)についても、アルストロメリアの花をモチーフとされた髪のハネであるという証になるのではないかと考えています。



前編にて宮永家の髪のハネについて少し触れましたが、前編の情報だけでは物証となる材料が不足していると記載しました。

宮永家の特徴的な髪のハネをアルストロメリアがモチーフであると言うには、宮永家だけでなく宮永咲のライバルたちの情報も必要だったため、後編のこちらで詳しく書かせていただくことになりました。


9 末原恭子の憧れ


しかし、この5人(+一家族)の中で、過去回想にて特徴的な髪のハネがなかったことが判明している子がいます。それが末原恭子です。

1年生の末原恭子


末原恭子は高校1年生の時の回想があるのですが、最初は特徴的な髪のハネがなく、初めて髪のハネを観測できたのは、時系列では1年生の秋冬頃の回想となります。

髪のハネといえばキャラクターの構成要素としてとても大事で、髪型を変えても特徴的なハネやアホ毛、前髪などは残るものです。その髪の特徴が元々なかったのが確認できたということは、この髪のハネは末原恭子の固有の髪型ではなく、後からそういう髪型にした、と考えられます。

ではなぜ末原恭子は髪のハネがある髪型にしたのでしょうか?


この恭子の回想で特に重視したいのは、「近畿大会後の末原恭子は強者との力の差を埋めようと、"バケモノ連中の真似をした"」という点です。

真似とはどこまででしょうか?

面前で進めるか鳴くか染めるかという打ち方だけでなく、牌を捨てる動作や発声、はたまた願掛けや気合の出る言動、特徴的な身なりなども範疇に入るのではないでしょうか。
そして末原恭子の同学年には、最強の高校生と言われる宮永照がおり、彼女も1年生のインターハイにて宮永照に目を奪われております。


私の仮説としては、「末原恭子は強くなりたい一心で"バケモノ連中の真似"をし、その一貫で宮永照の特徴的な髪のハネを真似した」のではないかと考えております。


末原恭子のツノが宮永照由来というのは結構突飛なことを言い出したなと思われそうですが、実は似た前例(時系列的には後例)があります。

1つ目は末原恭子本人です。
全国大会2回戦終了後、末原恭子は宮永咲との圧倒的な能力差を前に、赤阪郁乃の「強くなりたい?」の言葉に藁にもすがる思いで乗せられ、髪型から服装まですっかり変わった見た目になり、準決勝前半戦もこの格好で対局を行いました。この格好は後に「10年くらい前に赤阪郁乃がした格好」であることが明かされています。

2つ目は宮永照の妹である咲の同級生、原村和と片岡優希です。
原村和は夢乃マホにリボンの片方をプレゼントしたことが明かされており、そのためか全国編からは髪型を変化させています。
片岡優希は決勝先鋒戦において「先輩である花田煌の5決での勢いを受け継ぐ」ために花田煌に髪型を似せています。


このように、「想いを受け継ぐ」や「単純に気分転換のため」などのさまざまな理由で髪型を変更するのは作中でも描写がされているため、恭子が照の真似をして髪型を変えた、のは面白い仮説ではあると思います。

ただ、きっかけは宮永照だったかもしれませんが、3年生現在でそこまで考えて髪のハネがあるヘアスタイルを選んでいるかというとおそらくそうではなく、このヘアスタイルが素直に自分に馴染んだので、今の髪型は末原恭子のアイデンティティになっていると思われます。準決勝のインターバルにて普段と違う格好を「落ち着かへん」と言っていつもの髪型に戻しているくらいなので。



ここからは、裏付けがない仮説というか、もはや妄想の域を出ないものになるのですが、せっかくここまで来たので少し私の妄言にお付き合いいただければと思います。


末原恭子は元々、
①誕生花にアルストロメリアがある
②紫色がイメージカラーである

という特性を持っていましたが、1年生の時の模倣の一環で宮永照の髪のハネを真似したことにより、「8 宮永咲の髪のハネ」で語った、
③アルストロメリアまたは百合の花をモチーフとした髪型
と、3つの特性が揃ったことで、宮永咲の脅威である黒百合としての特性を得ることになったのではないでしょうか?


同い年の宮永照ら強者の強さに「憧れた」ことで、結果的にスランプに陥ってしまった末原恭子。

スランプ真っ只中の恭子は赤阪郁乃の助言を受け、他者比較をやめて自己研鑽に励んだ結果スランプを脱し、3年生のインターハイでは大将のポジションを務めることになりました。

そしてインターハイ2回戦の大将戦にて、末原恭子の憧れた宮永照の妹である、宮永咲と対局することになりました。

「普通に打って、毎回私より先に和了れると思うなよ 宮永咲――!!」

咲-Saki-15巻  150局135P


作中でも特に”能力者”達への憧れが強い末原恭子が、その能力者達を前にしてもなお、自身の磨き上げた技術を信頼している。能力者相手にも揺るぎないほどの自信を獲得するまでにどれほどの研鑽を重ねたのでしょうか。

宮永照に憧れた末原恭子が、他者に憧れるのをやめて自己研鑽を重ねた結果、妹の宮永咲と対局することになったのは、末原恭子の積み重ねた努力の結晶と、「未来への憧れ」という花言葉のアルストロメリアを誕生花に持つ末原恭子の宿命だったのではないでしょうか。


10 嶺の上で花開く



ということで、とても回り道をしましたが、宮永咲の話に戻ってきました。


準決勝での幾度もの領域侵害という恐怖に打ち勝ち、「曲げられないところ」である嶺上開花で和了できた宮永咲。


対局後には、偶然にも末原恭子と邂逅します。

末原恭子は、2回戦と準決勝と、二度の対局を経て最も宮永咲を観察した人物であり、あらゆる能力者対策を講じ、また自身の強みである超速攻により、咲の能力行使と和了の機会を阻止し続けました。

宮永咲は、麻雀を楽しむ心を思い出し、恭子らの能力者対策に「普通に打つ」ことで対応し返し、他家からカンされても嶺上開花で和了する、と対局中にその能力をさらに強固なものにしました。

咲は恭子に「勝てる気がしなかった」と話し、恭子は咲に「かなわんな」と零しました。
敵である対局者に送る、最上級の賛辞ではないでしょうか。



別れ際、恭子は決勝に進む咲へ激励を送ります。
この激励には、末原恭子の3年間の想いと、いままで宮永咲と対局をした人々の想いも込められていたらいいなと思っています。


そしてこの準決勝での成長は、決勝に繋がります。


なにせ決勝に進む3人は
「準決勝で意図したかのような嶺上開花での和了をしたネリー・ヴィルサラーゼ」と、
「配牌5向聴の強制かつ暗槓をし、カン裏を支配する大星淡」と、
「王牌など山の深い部分を支配する高鴨穏乃」と、
宮永咲の領域である王牌にまで支配が届いてると考えられる3人です。

2回戦の時の宮永咲なら、乗り越えられなかったかもしれない。でも準決勝を乗り越えた宮永咲なら!


耐雪梅花麗、という言葉があります。梅の花は、雪の冷たさに耐えてはじめて麗しく咲く、という意味だそうです。

幾度の恐怖を乗り越えてカサブランカの花が咲いた宮永咲は、決勝でも麗しく、そして麻雀を楽しみながら、嶺の上で花開くのではないでしょうか。




余談① 2回戦と準決勝は紫色だらけ?


2回戦では、末原恭子はもちろん、実は姉帯豊音や石戸霞も紫色のイメージカラーであるため、実は宮永咲以外の3人がイメージカラーが紫色という構図になっているんですよね。

2回戦は咲以外の3人ともが3年生なので、宮永咲1人がアウェーな状況という構図の意図があったら面白いなと思いました。
(姉帯豊音は分かりやすくイメージカラーが紫色ですが、石戸霞も水着やMJコラボのネグリジェなど紫色が多用されています。)


そして準決勝の方ですが、前述した黒百合である末原恭子と獅子原爽に加え、ネリー・ヴィルサラーゼも実は紫色の要素があるため、準決勝でも宮永咲以外は紫色の要素を持っていることになります。

え?ネリーの紫色要素ってどこや?と疑問に思われと思いますが、こちらはネリーの誕生花と出身国に繋がりがあります。


ネリーの誕生日は3月24日となります。
3月24日は誕生花に、ムスカリという花があります。
ムスカリは、まるでブドウの房のように密集して花が咲く様子から、別名グレープヒヤシンスと呼ばれます。

そしてネリーの出身国であるサカルトヴェロは、ワイン作りが8000年以上という圧倒的な歴史を持ち、隣国と合わせて世界最古のワイン生産地となっております。そのため、ブドウはサカルトヴェロの国の花になっています。

サカルトヴェロの民族衣装と思われる服を着て試合に臨むネリーの誕生花に、自身の国の花であるブドウに似た花があるというのは素敵ですね。


また、ネリーの誕生花にはこのムスカリや、他にもカタクリなど、ユリ科に分類される花もあります。
カタクリの花の興味深いところは、1860年当時のアイヌの食用植物として挙げられたり、葉に鹿の子模様があったりするのですが、
アイヌのカムイの恩恵を受けていたり、漢字で鹿の子百合と書く花を誕生花に持つ獅子原爽と接点を感じられるような気がしてとても好きですね。

余談② 私服


そういえば宮永咲の私服のうち、PSvitaのゲームなどで着用されているこの私服ですが、黄色と赤と黒とで、もろ黒百合のカラーリングなのが興味深いですよね。

あと服だと、咲-Saki-209局の、高遠原の制服にピンクのコートを着た夢乃マホがアルストロメリアと黒百合の色全部盛りで良かったですね!

花 赤のリボン、ピンクのコートとカーディガン、紫の髪、白のニーハイ
茎 高遠原の制服の緑
土 コート裏地のベージュとローファーの茶色


余談③ 2回戦の宮永咲の意図


2回戦について色々と書かせていただいたので、せっかくならもう少し書いていいですか?書きます。


全国大会2回戦大将戦にて、嶺上牌による有効牌の引き入れを幾度も行っていた宮永咲ですが、後半戦南三局にて強大なプレッシャーを放ちながらも、宮永咲の支配下にある嶺上牌をツモ切りという奇妙な行動を取りました。この2回戦の宮永咲の強大なプレッシャーとは逆に嶺上牌をツモ切りという行動は、どのような意図があったのでしょうか?

この行動について、岩戸霞と姉帯豊音は「カンドラを増やす」と、末原恭子は「ズラして永水と宮守の手を遅くする」と推測しました。

まず「カンドラを増やす」について、こちらは結果的に宮永咲が和了せず、また恭子の指摘通り咲はカンドラを乗せることがほとんどないため、この説は違うと考えられます。

「ズラして永水と宮守の手を遅くする」についても、原作では確認できませんが、アニメ全国編においてはこの局の岩戸霞の手牌が明かされており、岩戸霞の手牌に他家に強制している絶一門の萬子と索子の牌が来てないのが確認できるため、この説も違うと考えられます。


と、2つの予想が外れていることが判明しているため、

・まったく別の理由である
・2つの予想ともが本来の意図とニアミスしている

のどちらかなのではないかと考えました。


---

アニメ全国編では後半戦開始時の清澄の得点が明かされており、105100点となっております。

プラマイゼロを達成するには、後半戦終了時に、105100点から25000点の半荘として見た場合、105100点から4600点〜5500点を足す、つまり109700点〜110600点にしないといけません。
(※点数計算が絶望的に苦手なので間違ってたらすみません。)

しかし、清澄は後半戦南三局時点で116100点となっており、宮永咲がプラマイゼロにするためには最低でもあと5500点減らさないといけない計算になります。

そのため、「2つの予想ともが本来の意図とニアミスしている」方面で考えてみて、
「宮永咲はプラマイゼロ達成のために他家にカンドラを乗せ、他家が清澄の得点を5500点以上減らせるようにするためにツモ順をズラし、高い手を作る手伝いをした」
という意図があったのではないかと予想します。


宮永咲は準決勝にて、自身の支配について「意識が卓全体に通る」という表現をしており、また2回戦では咲の嶺上牌の支配は揺るぎないものだったことを考えると、プラマイゼロを達成するための条件と支配の場は整っていた。そのために必要なカンだったのではないでしょうか。

まぁ、公式試合で誰が好き好んで他家の点数を上げる目的でカンドラを乗せるねんってなるので対局者はこんなの予想できるわけがないんですよね。しかし2回戦の宮永咲はプラマイゼロしか見えてないので、プラマイゼロ達成の為なら他家にカンドラを乗せると考えられます。

そして、あの局面でカンドラを乗せられ、かつツモ順をズラした上で高い手を和了れそうなのが、姫松の末原恭子の手牌だったのではないでしょうか?


宮永咲のプラマイゼロは、自身がプラマイゼロを達成することにおいては強力な支配力を発揮しますが、「自分がプラマイゼロを達成しながら、プラマイゼロとは別に特定の他家の点数も調整する」ことはさすがに不可能かと思います。

例えば幼い頃の家族麻雀でそういう場面が多々あって何度も能力を行使した…とかの場合はできるかもしれませんが、幼い頃の宮永咲は勝っても負けてもない状態にすることが最優先事項だったので、他家の点数調整まではやろうとすることもなかったのではないでしょうか。

そのため、「プラマイゼロは達成したが、2位抜けしたのが最も手強い姫松になってしまった」のではないかと考えております。



しかしこう書いてみると、2回戦後の末原恭子が、

「後半戦南三局は、宮永咲の姫松への見積もりが甘かったおかげで倍満和了できたと思ったら、結果を見たらプラマイゼロ達成のため宮永咲に必要な点数減少だった」

と、大明槓からのツモ切りが、宮永咲のプラマイゼロの達成のための意図したものではないかというところまで末原恭子の考えが及んだのなら、咲のプラマイゼロの背景を知らない人からしてみれば清澄は1位抜けで準決勝に進んだ上にプラマイゼロ達成のために点数調整されて弄ばれた、と捉えられそうだしめちゃくちゃ悔しいだろうなと…。

それと宮永咲のプラマイゼロが判明した後の末原恭子、末原恭子の憧れの話のところでも近畿大会後以降のスランプについて少し触れたのですが、末原恭子は1年生の近畿大会以降から幾度もこういう能力者達との圧倒的な差を見せつけられ、その度に絶望し、藁にもすがる思いで色々なことを試したのかなと……。
2回戦後の末原恭子は、まだ「監督」呼びする前の赤阪郁乃の意見すら鵜呑みにして慣れない格好に着替えているという、まさに藁にもすがる思いだったのではないかと。末原恭子…………………

ということで二部作の前後編合わせて、2回戦への多角的な考察をさせていただきました。



①白い薔薇のつぼみは?
→プラマイゼロをやりまくっていた子供の頃の慣れた打ち方のため。花言葉の「少女時代」の意味

②宮永咲が末原恭子を怖がっていた理由は?
→能力に対応していく姿から、夢乃マホ筆頭に領域侵害されたことを思い出し、また領域侵害されるのではと怖がった

③宮永咲の強大なプレッシャーは?
→宮永家では普通のこと。
また、対戦相手が強力だったため、普段よりプラマイゼロの行使に力が必要だったのではないか?

④大明槓してツモ切りは?
→宮永咲はプラマイゼロ達成のために他家にカンドラを乗せ、他家が清澄の得点を5500点以上減らせるようにするためにツモ順のズラしを行った


と、2回戦について、自分なりの見解をたくさん出すことができました!大満足!!!


余談④ 構想のみ



他にも構想があったのですが、確たる証拠が集められずお蔵入りした構想です。歴史も神話も疎い上に全部調べたら年を越しそうな情報量であり、これ以上自分では調べられないので放流します。どなたかの考察の一助になれば幸いです。

・日本神話のヒメタタライスズヒメの話に登場する、ヤマユリの咲く奈良の佐韋(さい)河がサキと読みが変わったのが宮永咲の語源説。ユリの古名は佐葦のようだし。

・咲が奈良県桜井市と接続するなら、宮永家が吉野にいた理由にもなりそう。

・とすると、咲和的にはヒメタタライスズヒメの夫である神武天皇が原村和のモチーフ説。

・であれば、「まほろば」の語源であり神武天皇の子孫であるヤマトタケルが夢乃マホのモチーフ説!

・末原さんの3つの腕輪から三輪明神(大神神社)を連想。ヤマユリの咲く佐韋河が奈良県桜井市で、三輪明神も奈良県桜井市だから、宮永咲の佐韋河の話と接続したら面白そう。

・「三輪」っていう能楽の演目に、「アイ」という名の人物だったり天照大神だったり天岩戸だったりが出てくるので、まじで関連あったら面白そう。

宮永と末原の名前は対比説。宮永はもちろん「永遠」の「永」だからずっとって意味だし、末原は「物事の発生から終わり」って意味らしいから明らかに対比的な名前ちゃうかなぁ。

・加治木ゆみが黒百合モチーフで、池田華菜にも「華」の名前が入ってて、天江衣は「不思議の国のアリス」モチーフっぽいけど、「Alice」って読みが「アリス」だから「アルストロメリア」の頭3文字と発音が似ている上に、「Alice」には「AIの法則」も「Lの法則」も適用されるので、長野大会大将戦メンバーも花とかの意図がありそうな感じする。

・龍門渕が不思議の国のアリスだとしたら、衣がアリスっぽいけど、色だけ見たらアリスってどちらかというと透華なんよな。

アリスの見た目は衣が、見た目以外の色構成や性格は透華にすることで、龍門渕の従妹同士でアリスの要素を分けているのかもしれん。

で、衣は腰の時計や色的に白うさぎの要素が強そうなんよな。
「Alice」って高貴って意味だから透華っぽさあるし、アリスは「大胆さ」「決意の素早さ」という性格で、反対に白うさぎは狐疑逡巡(疑り深く、なかなか決心がつかない様)って性格なので、ますます透華がアリスで衣が白うさぎっぽいんだよなー。

あとともきは色的にチェシャ猫っぽいけど、あとわからん〜登場箇所的には純くんが帽子屋、一くんが3月うさぎっぽいんだよ。

そしたら一くんの最初にしてた月のタトゥーも3月うさぎだからって理由になるし、で衣の方の月の要素ってのはおそらく一般的に言われてる方の「月にはうさぎがいる」または天照大神の弟神である月を神格化したツクヨミから来てそうなんよ。
そしたら衣も一くんも月とうさぎがモチーフとなるので、衣の月要素と最初期の一くんのタトゥーの月が被ってた理由付けにもなると思うんよな。
3月うさぎの由来が3月の兎は発情期で落ち着かない様子から来てるらしいから、一くんが露出の高い格好を好むのも(ここから先はご想像にお任せします)。
あと一くんのタトゥーが切れてるのって、あれ切れてるんじゃなくて、挿絵に描かれた「3月うさぎに巻きついた藁」なんじゃないかって思ったけどどうなんだろ、あの線が「切れてる」のではなく「月/星に巻きついてる」って考えたら、あのタトゥーだけで3月うさぎを表してるってことになるから面白い説ではあると思うけど。
ただ自分は不思議の国のアリスが致命的に分からんので(wikipediaと格闘してなんとかそれっぽい情報だけ拾った)、お詳しい方お願いします!

龍門渕の5人が不思議の国のアリスモチーフだと6巻の友達集めってまさに「不思議の国のアリス」アリスの冒険の話なんじゃない!?と思って見に行ったら透華の友達集めの前のコマにトランプ写っとるんやけど!?!?ハートの女王じゃねえか!?!?!?

・石戸霞の誕生日が閻魔賽日なの気になる!

・天照大神の4人って、特に宮永照が天照大神本体を色濃く反映していて、他の3人は天照大神由来の逸話由来の説ある?

小蒔ちゃんの「神代」は、天照大神の命で桜の様子見に来たスサノオノミコトが見た、一番最初に植えられた素桜(もとはな)の神代桜ってのがあるっぽいし、「蒔」要素も桜を植えるために種を蒔いたとも考えられそう。

衣ちゃんは天照大神が神御衣を織ってたときのあれやこれやで岩戸隠れしたようだし。

淡の「淡」要素は吾田節の淡郡にいた稚日女尊が天照大神自身またはその幼名だったって話があるみたいだし。あと淡の「星」要素はアマテラスって小惑星やアマテルって惑星があるっぽいのと、すばるってのが天照大神とスサノオノミコトの話が語源らしいし。稚日女尊が天照大神の幼名説だとすると照が淡を拾ったって話からも色々膨らんで面白そう。

・…あれ?今思ったんやけど、準決勝にてネリー以外は百合または黒百合モチーフ持ちで、試合終了後にその3人を煽りまくった末に(自業自得で)パウチカムイ食らって撃沈したの、黒百合がアイヌ語でパウチコロムンって呼ぶのも加味したら、百合と黒百合の3人を煽って黒百合から手痛い一撃を食らったって文脈に読み取れん?考えすぎか…

・あ!?というか、宮永家以外のアルストロメリアの2人である末原恭子と夢乃マホやけど、
末原恭子は他者との比較や模倣を行ったが彼女には合わなかったため、自己能力の向上を図る方向に進んだ一方、夢乃マホは「一日に一局ほど他人の特性を模倣できる」能力なの、やばくね!?!?これ絶対意図しとるやろ!!!おい!!!!!あまりに対比的存在すぎる。死

脳直連想ゲームをそのまま出力するな!


おまけ 主要キャラの誕生花


今回の記事執筆にあたり、キャラクターの誕生花と花言葉を調べてたらとても楽しかったので、せっかくなので何人かの誕生花とその花言葉を載せさせていただきます!

原村和…10月4日(天使の日)
誕生花…オニユリ(賢者)

加治木ゆみ…12月21日
誕生花…コルチカム(幸福)
池田華菜…2月22日(猫の日)
誕生花…ムクゲ(情熱、粘り強さ)
天江衣…9月6日(妹の日)
誕生花…パンパスグラス(風格、光輝)

藤田靖子…6月25日
誕生花…ユリ(威厳)
夢乃マホ…12月20日
誕生花…アルストロメリア(未来への憧れ)

末原恭子…8月9日
誕生花…ストレプトカーパス(信頼に応える)
石戸霞…7月16日(閻魔賽日)
誕生花…ストック(おおらかな愛情)
姉帯豊音…3月16日
誕生花…クチナシ(とても幸せ)

獅子原爽…8月2日
誕生花…ノコギリソウ(戦い)
ネリー・ヴィルサラーゼ…3月24日(マネキン(=招金)記念日)
誕生花…ハナビシソウ(富、成功)

高鴨穏乃…4月8日(出発の日)
誕生花…シバザクラ(臆病な心、耐える力)
大星淡…12月15日
誕生花…ジンチョウゲ(栄光、不滅)

園城寺怜…5月10日
誕生花…アゲラタム(幸せを得る、信頼)
清水谷竜華…6月8日
誕生花…ジャスミン(貴方について行く、愛想の良い)

白築慕…1月31日
誕生花…クロッカス(切望、青春の喜び)
石飛閑無…8月11日
誕生花…ゼラニウム(尊敬、真の友情)

宮永照…2月18日
誕生花…スカシユリ(神秘的な美)、タンポポ(神のお告げ)


あとがき


ここまで長いことお読みいただき、本当に本当にありがとうございます!!!!!
まず謝罪をしないといけないのですが、筆が乗りすぎた結果、この二部作記事は後編だけで2万1千字、前後編合わせると3万3千字になってしまいました。(3万3千字!??!?)
ただ、この記事からなにか文章を削れるか?と言ったら、「いや、全部必要やから無理やな…」という結論になってしまうくらい、今回の記事に必要だと思ったことは出し惜しみなく書けた点は大満足ですね。

咲さんのライバルに紫色がイメージカラーとなる子が多い理由や、咲さんマホちゃん末原さんに共通している髪のハネについての個人的な考察ができたのがとても嬉しいです!考察なんてなんぼやってもええですからね

ついさっきも書かせていただいた文言になるのですが、この記事を読んでいただいた方々の、咲-Saki-考察の一助になれば本当に幸いです。

そうだ、咲-Saki-でも聖地として登場した、東京の日比谷公園にはユリロードなるものがあるらしいので、東京がお近い方は観にいかれてはいかがでしょうか!ここに咲さんを感じる…


引用文献
小林立,「咲-Saki-」,SQUARE ENIX,1〜21巻,2007-2021

記事内で使用した花の写真とそれを模写したイラストについては、写真ACにてDLをし、利用規約に沿って使用したものとなります。


参考にさせていただいたサイト様
(記事内でリンクを貼れなかったものとなります)

帯広百年記念館 アイヌ民族文化情報センター「リウカ」  |  アイヌ語で自然かんさつ図鑑  |  クロユリ


チルの工房  |  花言葉と誕生花を調べる


FLOVER  |  ユリの花言葉は色・国・品種で違う!プレゼントに役立つ花言葉を詳しく紹介


45927  |  【咲-Saki-】 全国大会 二回戦 清澄(長野)vs宮守女子(岩手)vs永水女子(鹿児島)vs姫松高校(南大阪) 得点収支MEMO


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