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オプションの清算方法

オプションの決済方法は2つ

オプションの決済方法には2つあるとお話をしました。

図8

1.の反対売買は通常の株式投資と同じですからわかりやすいと思います。ここでは「有効期限最終日に清算」とはどんなものかを説明いたします。

オプション清算の理論的やり方

一例として「2021年8月限29,500円コール」を持っているとします。以前説明しましたように、日経平均先物オプションはヨーロピアンタイプのため、途中で権利行使をすることはできません。反対売買をしないままで有効期限最終日(SQ日っていいましたよね?)までもっていたとします。

これも以前お話をしましたが、有効期限最終日にはオプションのトレードはできません、清算のみです。

1.清算の基準となる数値の決定・・清算の基準となる数値をSQ値といいます。この数値についてはのちほど説明いたします。対象となる資産は日経平均なので、日経平均の値と関連のある数字となります。ここでSQ値は29,659円だったと仮定します。

2.29,500円コールを持っていますので、定義に従えば日経平均を購入する権利を行使して日経平均を29,500円で購入します。

3.29,500円で買ってきた日経平均をすぐにSQ値(29,659円)で売却して差額159円が儲けとなります。

図17

ここで勘のいい人は疑問点が出てくると思います。例えば

Q1:29,500円で購入した日経平均は自分のものになるの?

Q2:そもそも日経平均って購入できるの?

Q3:買ってきた日経平均って絶対に売らないといけないの?

Q4:買ってきた日経平均はそのまま持っていてはいけないの?

etc

これらの疑問にお答えしようと思います。

オプションの清算の実務的やり方

実は日経平均オプションの場合、コールオプションで日経平均を買う権利はあるのですが、実務上は日経平均を購入して所有するわけではありません。そのため権利行使したからといって、あなたの口座に購入価格29,500円の日経平均が存在するわけではありません。オプションを購入する目的は利益を獲得するためですよね?(損することもありますけど笑)。だったら、差額の儲けだけを決済すればいいじゃない、という発想ですね。つまり日経平均先物オプションは、「現物の受け渡しはしない、差額の決済のみ」ということになります。差額の決済のみということは、差額を計算するためには清算の基準となる数字がないと差額が計算できません。そのためにSQ値というものが必要となるのです。ですからコールオプションを行使して日経平均を買ってきたとしても(半ば強制的に)SQ値で清算されて利益のみが自動的に口座に入金されることになります。

図18

この一連の動きは、差金取引ではなく実際に現物をやり取りする方法と比較すると分かりやすいと思います。

アメリカには対象資産を株式(AmazonとかMicrosoft)にした株式オプションというものがあります。アメリカの株式オプションは差金決済ではなく、権利を行使すると現実の株式を取得することになります。取得して以降は通常の株式売買と同じですから、自由に売却ができます。実際に現物が割り当てられるので、差額を計算する必要がなく、そのためSQ値というものも必要ありません。このようなアメリカの株式オプションとの比較で日経平均オプションを理解頂くといいかと思います。

では29,500円コールを持っていて、SQ値が29,423円だった場合はどうでしょうか。コールを持っている人は29,500円で日経平均を購入してSQ値の29,423円で清算したら、差額73円損をしてしまいます。損をするようでも清算しないといけないのでしょうか。

この場合ですが、後日詳しく説明いたしますが、持っている権利を行使しないという選択を取った方が合理的です。そのため差金決済の場合も決済をしないで、購入したコールオプションはそのまま捨てることになります。

SQ値の計算方法

日経平均とは日本経済新聞社が選んだ225銘柄の平均値のことです。株式投資をしている方ならわかると思いますが、相場が開いている間リアルタイムで計算されています。その時点その時点でリアルタイムで平均値を求め、値段がついていないもの(特別気配で値段が出ていないもの)は気配値を使って計算しています。

SQ値の計算ですが、225銘柄の全ての始値を集めそれらの値を使って平均値を求めます。リアルタイムで計算する必要がないので気配値も使いません。

図20

計算方法が違うために、発表された時のSQ値とその時の日経平均に乖離が生じることがままあります。これを「幻のSQ値」などと呼んでいて、たまに経済ニュースにでてくることがありますが、その意味や理由は以上で説明したとおりです。


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