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基本の問診ポイントOPQRST

問診 (医療面接) は診断や治療の最初の一歩です。しかし、どうやってスキルアップしていくか分かりにくいかもしれません。

医療面接にも、テクニックや理論・フレームワークがあります

中でも、OPQRST法は問診すべきポイントがまとまっていて、オススメです。
医療系学生や研修医、働き始めた看護師さん向けに、OPQRST法の概要と使い方を解説します。


OPQRST法とは?

OPQRST法は、症状 (とくに痛み) を評価するフレームワークです。
もれなく情報収集でき、系統立った理解に役立ちます。

  • O (Onset) : 発症様式

  • P (Provocative/Palliative factor) : 増悪・寛解因子

  • Q (Quality) : 性質

  • R (Related symptom) : 随伴症状

  • S (Severity) : 重症度

  • T (Time course) : 経過

緊急性を判断するために、問診する順番も重要です。

まずは Onset (発症様式) や Time course (経過) を聞いてみましょう。急性・増悪傾向でなければ、余裕をもって検討できます。


OPQRST法で問診すること

O (Onset) : 発症様式

いつから、どのように始まったのかを確認します。

急に始まったのか、徐々に悪化したのかで、緊急性を判断できます。

秒単位で完成するような突然発症であれば、超緊急の病態を想定します。臓器や血管が「破れる」、「詰まる」、「捻れる」といった病態かもしれません。

医師:「その痛みはいつ始まりましたか?」
患者:「昨日の午後からです。」
→ 急性発症

P(Provocative/Palliative factor): 増悪・寛解因子

悪化させる要因 (Provocation) や和らげる要因 (Palliation) を尋ねます。

動作や食事などで悪化するか? 楽な姿勢はあるか? などです。

"P" は診断に大きく影響する要因です。その因子で影響を受ける部分に原因があるからです。

医師:「どのようなときに痛みが増しますか?」
患者:「食事をとると胸の痛みが強くなります」
→ 食事で増悪 (上部消化管に原因がありそう)

Q (Quality) : 性質

痛みの感じかたを尋ねます。

例えば、鋭い痛み、鈍い痛み、焼けるような痛みなど、患者の表現を引き出します。

「チクチク」「ズキズキ」「ずーんと」といったオノマトペで表現してくれるかもしれません。性質が簡単に表現されていて、診断のヒントになります。

痛みの部位や他の部位への放散も確認しましょう。とくに放散は、一部の疾患の特徴のことがあります。

医師:「その痛みはどのような感じですか?」
患者:「チクっと刺すような痛みです。」
→ 神経痛らしさがある

医師:「痛いのはどこですか?」
患者:「胸の真ん中が痛みますが、左肩にも広がっている感じです。」
→ 前胸部痛・左肩への放散痛 (心疾患の特徴)

R (Related symptom) : 随伴症状

患者さんが自覚する痛みが最も辛い症状であったとしても、随伴症状のほうが病気の特徴を表していることがあります。

自分からは最初に訴えない症状かもしれません。疑っている病気がある場合には、その病気で想定される症状があるか聞いてみましょう。

医師:「どのような症状でお困りですか?」
患者:「頭が痛いのがとても辛いです。いつもの頭痛だとは思いますが。」
医師:「光がまぶしく感じたり、音がうるさく感じたりと、感覚が過敏になっている感じはありますか?」
患者:「どちらもあります。」
→ 光・音過敏を随伴する頭痛

S (Severity) : 重症度

痛みの強さを評価します。

つらさは個人差があるので、指標を用いてみましょう。
よく使われるのは数値化です。0点 (痛くない) から10点 (人生最悪の痛さ) の尺度です。

数値にすることで、ほかの痛みと比較できるようになります。10として何を想像したかも聞いておくと分かりやすいです。

より簡単には、日常生活への具体的な支障を聞くことも、重症度の推測に役立ちます。

医師:「その頭痛のせいで、どんな支障が出ていますか?」
患者:「あまりに辛くて仕事を早退しました。」
→ 日常生活に支障がある重症度

T (Time course) : 時間経過

良くなってきている/悪くなっているなど、病状の大きな流れを確認しましょう。

ウイルス感染症のように自然治癒傾向をとるもの、悪性腫瘍のように経時的に悪化するものなど、原因によって大まかな特徴があります。

医師:「喉の痛みはじめた頃と比べてるとどうですか?」
患者:「3日前と比べて悪くなってきています。」
→ 日単位で増悪傾向 (風邪 (ウイルス感染) ではなく細菌感染を考慮)


実践例

ここまで、OPQRST法の詳細を解説してきました。

  • O (Onset) : 発症様式

  • P (Provocative/Palliative factor) : 増悪・寛解因子

  • Q (Quality) : 性質

  • R (Related symptom) : 随伴症状

  • S (Severity) : 重症度

  • T (Time course) : 経過

それでは、よくある問診の様子をOPQRST法という視点で見てみましょう。

1. はじめに "O", "T" を聞く
患者:「昨日から急に胸が痛くなりました。」
医師:「それはご心配ですよね。今の痛みはどうですか? (T)
患者:「昨日の一番ひどい時に比べて、落ち着いてきています。」
医師:「それは良かったです。昨日の痛みはいつから始まりましたか? (O)
患者:「昨日の昼過ぎくらいからです。」
医師:「どのくらい続きましたか? (T)
患者:「10分くらい続きました。1回だけでなく、何回かありました。」

2. くわしく "P", "Q" を聞く
医師:「どのような痛みでしたか? (PQ) より詳しく教えてください。」
患者:「胸の真ん中がズキズキする痛みでした。動いたり深呼吸したりすると、特に痛かったです。」
医師:「他に痛むきっかけや、悪化する状況 (P) はありますか?」
患者:「以前から、運動したり、食後に出ることがありました。」
医師:「そういった痛みを和らげるために何か試されたことはありますか? (P) 
患者:「横になって休むと少し楽になる気がします。」

3. 忘れず "R", "S" も聞く
医師:「痛み以外に一緒に出ていた症状 (R) はありますか?」
患者:「動悸がして、息も苦しかったです。」
医師:「痛みの強さはどのくらい (S) でしたか?例えば、10を人生最悪の痛みと想像すると、どのくらいでしょうか?」
患者:「6か7くらいでした。」

  1. 緊急性判断のために、O (発症様式) や T (時間経過) から聞いています

  2. 詳細評価のために、P (増悪・寛解因子)、Q (性質) と問診を続けています

  3. 関連情報として、R (随伴症状)、S (重症度) も忘れずに聞いています

問診は診断のための情報収集という側面もありますが、患者さんとのコミュニケーションという側面もあります。実際は話の流れ・文脈によって順番が前後することも珍しくありません。

文脈を無視してOPQRSTに沿って機械的に質問していくという使いかたは良いコミュニケーションとは言えません。

OPQRSTの項目を思い出しながら、どの情報を聞き漏らしているのか聞いた情報をどう整理するのか、と振り返ることで、問診の質を高めるのに役立てましょう。

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