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胃食道逆流症の問診ポイント
胃食道逆流症 (GERD) の問診のポイントを解説します。
記事後半では VignettesHub のサンプルを公開します。
VignettesHub はAI生成症例集で、当社 (OPQRST Inc.) のサービスの1つです。病歴 (Vignette) や患者との対話 (Dialogue) の典型例をAIで生成し収載しています。
問診のポイント
胃食道逆流症では、胃酸が食道方向へ逆流することで症状をきたします。
この病態のため、とくに問診ポイントでは O (発症様式) や P (増悪・寛解因子)、Q (性質)、R (随伴症状) に特徴があらわれます。
O : 発症様式
逆流のたびに症状をきたすため、1回1回は急性発症のように訴える場合もあります。しかし、症状を繰り返しながら問題が顕在化するため、長いスパンでみると緩徐に発症してきます。
単発の症状だけでなく、過去の類似症状と頻度についても確認しましょう。
患者:「昨日、食後に急に胸焼けがありました。」 → △ 急性発症
医師:「初めて経験した症状ですか?」
患者:「以前もこのようなことがありましたが、今月に入ってから増えてきています。」→ ◯ 緩徐発症
P : 増悪・寛解因子
胃酸の逆流が原因のため、逆流を起こしやすい体勢 (臥位) や逆流を防いでいる構造 (下部食道括約筋 LES) の機能低下がきっかけになります。
LES圧を低下するものとして、脂っこい食べ物やお酒の他、一部の薬剤 (高血圧治療薬のCa拮抗薬など) が代表的です。
患者:「食後に症状が出ます。」→ △ 食事で増悪
医師:「どのような食事だと出やすいですか?」
患者:「脂っこいものやお酒を飲んだ後に出やすいです。」→ ◯ 高脂肪食, 飲酒で増悪
Q & R : 性質&随伴症状
胃酸が逆流した先の障害を起こします。
食道症状 (胸焼け等)、口腔症状 (酸っぱい感覚等) の他、刺激による咳嗽の原因にもなります。
代表的な胸焼け症状だけでなく、予想される周辺症状も確認しましょう。患者さんは無関係な症状と思って訴えないこともあります。
患者:「胸焼けがありました。」
医師:「他に症状はありますか?」→ △ 焦点を絞らない質問
患者:「とくに無いです。」
医師:「口が苦く感じることや、咳が増えたことはありますか?」→ ◯ 予想に基づく質問
患者:「そういえば咳も増えています。これも胸焼けと関係しますか?」
症例
問診のポイントをふまえて、VignettesHub (AI生成症例集) による症例のDialogueとVignettesサンプルを見てみましょう。
確定診断・重症度評価のための内視鏡検査も重要ですが、その前の問診の段階で、胃食道逆流症の特徴が出ているのがよく分かる病歴です。増悪因子の解除が、生活指導にも役立っています。
Dialogue (会話例)
医師:「こんにちは、佐藤さん。今日はどうされましたか?」
患者:「こんにちは、最近食後に胸焼けと逆流感があって困っています。」
医師:「それは辛いですね。いつ頃からその症状がありますか?」
患者:「数か月前からですね。だんだん酷くなってきました。」
医師:「特にどんな食事の後に症状が強くなりますか?」
患者:「脂っこい食べ物を食べた時が一番ひどいです。」
医師:「夜間にも症状がありますか?」
患者:「はい、夜になるともっと悪化して、眠れないことがあります。」
医師:「これまでに何か持病はありますか?」
患者:「高血圧で、リシノプリルを飲んでいます。」
医師:「胸やけ以外に、他に関連する症状はありますか?」
患者:「特にないですが、いつもより胃が重く感じることがあります。」
医師:「佐藤さんのご家族に同じような症状を持つ方はいらっしゃいますか?」
患者:「いいえ、特には聞いていません。」
医師:「体重や生活習慣について気になることはありますか?」
患者:「ちょっと太ってきたかなと感じています。」
医師:「どんな運動をされていますか?」
患者:「あまり運動はしていないですね、仕事が忙しくて…」
医師:「お酒やカフェインは摂取されますか?」
患者:「はい、毎晩ビール一杯とコーヒーを飲んでいます。」
医師:「食事はどのような内容ですか?」
患者:「やっぱり仕事柄、外食が多いです。」
医師:「最近ストレスを感じることは多いですか?」
患者:「仕事が忙しくて、少しストレスはあります。」
医師:「症状が出たときに何か改善を試みましたか?」
患者:「市販の胃薬を試しましたが、あまり効かなかったです。」
医師:「先日行った検査についてお話しますが、結果をお聞きになりましたか?」
患者:「まだ聞いていません、お教えいただけますか?」
医師:「検査の結果、逆流性食道炎が疑われる状態でした。」
患者:「それで、どうすればこの症状を抑えられるんでしょうか?」
医師:「まずは生活習慣を見直すことが重要です。」
患者:「具体的には何を変えたら良いでしょうか?」
医師:「食事内容と摂取する時間、アルコールやカフェインの制限ですね。」
患者:「それと、寝る前に何か気を付けることはありますか?」
医師:「寝る前の食事を避け、寝具も工夫する必要があります。」
患者:「寝具を工夫するとは、例えばどんなことですか?」
医師:「頭部を少し高めにすると良いです。」
患者:「それで少しは楽になるんですかね。」
医師:「はい、症状の緩和に役立つはずです。」
患者:「薬も処方していただけますか?」
医師「わかりました。プロトンポンプ阻害薬を使ってみましょう。」
患者:「その薬はどう効くんですか?」
医師:「胃酸の分泌を抑制し、症状を改善します。」
患者:「それでいつ頃症状が収まりますか?」
医師:「2週間程度で改善が見られると思います。」
患者:「それは良かった、安心しました。」
医師:「もし改善が見られない場合は、また相談してください。」
患者:「ありがとうございます。頑張って生活を見直してみます。」
医師:「体重管理もお忘れなく。何か他に質問はありますか?」
患者:「いいえ、今のところは大丈夫です。よろしくお願いします。」
Vignette (病歴例)
45歳男性は、食後に胸焼けと逆流感を訴えて来院した。症状は数か月前から徐々に始まり、特に脂っこい食事を摂った後に悪化する傾向があった。また、就寝時に症状が増悪し、眠れない夜が続くこともあった。過去に高血圧と診断され、現在は降圧薬を服用している。それ以外の既往歴に特筆すべきことはなかった。
身体所見では、やや肥満気味で、身長175cm、体重82kgであった。血圧は128/82 mmHgで、心拍数は72回/分で規則的であった。腹部診察では特に異常を認めなかったが、胸部聴診で心音、呼吸音に異常は見られなかった。体重に関連して、食事および生活習慣改善の必要性が感じられた。
内視鏡検査を行った結果、食道下部に粘膜の発赤とびらんがみられ、逆流性食道炎の診断が下された。
治療には、プロトンポンプ阻害薬 (PPI) が開始された。また、患者には生活習慣の見直しとして、食事内容の改善、アルコールやカフェインの摂取制限、寝る前の食事を控えるよう指導が行われた。さらに、就寝時に頭部を高くするような寝具の工夫も提案された。
治療開始から2週間後、患者の胸焼けと逆流感は著しく改善し、夜間の症状も軽減した。6週間後のフォローアップでは、食事の内容に注意を払うことで症状の制御ができていたが、時折症状が現れることがあったため、PPIの継続とさらに食習慣の徹底が勧められた。治療を続けることで、患者さんは日常生活を快適に過ごせるようになり、休息も十分にとれるようになった。
OPQRST Inc.ではVignettesHubサービスとして疾患のDialogue (会話例)、Vignette (病歴例) を公開しています。