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発症様式から分かること OPQRST法・O編

基本の問診ポイントのOPQRST法のうち、O (発症様式) について解説します。

  • O (Onset) : 発症様式

  • P (Provocative/Palliative factor) : 増悪・寛解因子

  • Q (Quality) : 性質

  • R (Related symptom) : 随伴症状

  • S (Severity) : 重症度

  • T (Time course) : 経過


発症様式の分類

発症様式の把握は、緊急性の判断だけでなく病態の推測や診断にも有用です。

症状がピークになるまでの時間・早さによって分けることが多いです。

  • 突然 sudden : 数 - 数

  • 急性 acute : 数時間 - 数

  • 亜急性 subacute : 数日 - 数

  • 緩徐 gradually : 数週- 数か

突然発症

症状が秒単位で完成した場合、緊急の病態を想定します。

  • 破れる (破裂)

  • 詰まる (閉塞)

  • 捻れる (捻転, 絞扼)

こういった炎症を待たずに発生するような重大な障害が疑わしいです。
脳出血 (脳動脈瘤破裂)、脳梗塞・心筋梗塞腸閉塞などが代表的です。

いずれも生命予後に直結するため、迅速な診断・治療が必要です。

運動中に突然、胸が締めつけられるような痛みがきました。」
「いつも通りテレビをみていたら、いきなり強い頭痛と吐き気があって、吐いてしまいました。」

発症した瞬間が明確なので、その瞬間に何をしていたか答えられることが、突然発症だったことの裏付けになるかもしれません。

症状の部位との組み合わせで、警戒すべき疾患がある程度決まってきます。

「破れる」,「詰まる」,「捻れる」といった病態の他に、反応が極めて早いアレルギー反応や、膵液による化学物質的障害をふくむ急性膵炎も突然発症になりえます。

急性発症

一般的な急性炎症をふくむため、幅広い疾患が候補になります。

時間単位で進行する場合は、感染症を検討しましょう。とくに細菌感染では治療 (抗菌薬) を早期に開始するメリットが大きいです。

急性発症する疾患は、感染症以外にも多岐にわたります。
糖尿病や甲状腺機能亢進症などの慢性疾患であっても、糖尿病性ケトアシドーシスや甲状腺クリーゼといった急性合併症をきたすことがあります。

昨日からお腹が痛くなってきて、今朝からは下痢も出てきました。」
数時間前から熱、動悸と息苦しさがあります。」

亜急性発症

数週間かけて発症してきた場合、つまり急性疾患にしてはスピードが遅い場合に、亜急性として鑑別診断を検討することがあります。

先に挙げた慢性疾患の発症/増悪や合併症がこのパターンをとることがあります。

先月から妙に喉がかわいて頻繁に水分をとっていたようです。今朝から何だか様子がおかしくて、連れてきました。」
半月前から指を曲げにくく痛みます。」

緩徐発症

数か月かけて徐々に発症してきている場合は、今まで挙げてきたような急性疾患の可能性は低くなります。

数か月経過しているにも関わらず、病院を受診するほどの重大な症状がなかった、あるいは診断がつくほどの特徴的な所見がなかったとも言えます。そのため、診断に時間を要する場合があります。

膠原病や神経変性疾患、悪性腫瘍といった、詳細な精査のうえで診断すべき疾患を考慮します。

半年前から体重が減ってきました。咳も続いていて最近は痰に血が混じります。」
1年くらい前から歩きがぎこちなくなり、手が震えることがあります。」

実践例

患者: 「急に頭がものすごく痛くなって…。」
医師: 「その痛みはいつ始まりましたか?
患者: 「今日の午前中、数時間前からです。」
→ 急性発症としてもかなり早い。突然発症か確認する必要がある。

医師: 「だんだん強くなりましたか?それとも一瞬で強い痛みが出ましたか?」
患者: 「一瞬でバーンときました。本当に突然でした。」
医師: 「その時、何をしていましたか?
患者: 「とくに何もしてなかったです。ソファでテレビを見ていました。」
医師: 「何の番組を見ていたか思い出せますか?」
患者: 「バラエティ番組を見ていました。確か料理のコーナーで…。」
突然発症した瞬間が明確

頭痛を急性発症することは多いですが、この例のように突然発症している場合には注意が必要です。脳血管疾患群発頭痛などの突然/発作的に頭痛を起こすような疾患が鑑別診断になるため、早急な対応を考えましょう。

まとめ

導入として聞くことの多い「いつから始まったか?」という問診ですが、実は重要な情報が含まれていることがあります。

発症様式を緊急性の判断病態の推測に役立てましょう。

その判断・推測により、続けるべき問診 (PQRST) の聞きかたも変わってきます。どれほど時間がかけられるか、どの部分に焦点をあてるか、考えながら問診してみましょう。

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