泣き虫は嫌いだった話。#3

道端で転んで泣いている同級生を見ても、冷めた目で「お前が悪い」と心の中で見下していた自分。

自業自得、効率が悪い、媚びを売るやつ。
全て、嫌い。

そして性格なんてそうそう変わるものではなくて、三つ子の魂百までと言われるように、ずっとついてまわるものである。と、信じてきた。

些細なことで人の感情は変わり、見方も変わり、心も変わる。そのうち性格までもが緩やかに穏やかに変わっていくのだろうか。

「最近何か楽しそうですね」

何も知らずにいつものように話しかけてくるこの子は、いつ、俺のこの気持ちを知るのだろうか。また、俺はこの子に知らせるのだろうか。

『そうかな。まぁ……いい事はあった』

昔なら考えられない返し方。会話を続けることすら面倒くさかったのに。

「へぇ珍しい。なんか先輩変わりました?」
『さぁな』
「彼女が出来たとか?あ、告白されたとか!それとも好きな人が出来た?そんな雰囲気がする」

キャッキャ楽しむ彼女をよそに、意識、という壁がどんどん差し迫ってきて、そのうち潰されてしまうのだろう。それももう時間の問題だ。
貴方が例え転んで泣いていたとしても、見下すこともなければ冷たい言葉を放つ事もない。むしろ、自ら手を差し伸べて助けに行く程のものだ。

『………なぁ、よかったら今度、』

ほら、既に。

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