WBPCとの契約は随意契約として合法?
令和4年度の東京都若年被害女性支援事業のWBPC4団体との契約は「公法上の契約に類する契約」として、東京都の規則で定める随意契約の手続きに則っていないことが明らかとなっている。この聞き慣れない契約について5月1
日に棄却とする住民監査請求結果が公表された。
暇空氏は住民訴訟すると思われるが、一番問題の多い令和4年度の東京都被害女性支援事業の契約を主体に監査結果について私なりに整理してみる。
Ⅰ 地方自治法に規定される入札契約方式
地方自治法に定める入札・契約方式は、大きく「参加者の決定方法」と「契約相手方の決定方法」の2つの組み合わせで構成される。
20年くらい前までは「指名で価格競争」がほぼ100%であり、公益法人との契約や特許使用等の特殊な調達には随意契約(以下、「随契」という)が用いられてきたが、日米構造協議や政府調達協定等の外圧を背景に画一的な価格競争の見直しが必要となった。このため企画内容や技術提案を競う企画競争(プロポーザル含む)が平成5年位、技術と価格の両方を競う総合評価が平成10年位に試行されはじめ、あわせて談合の温床となっていた指名競争に変わり一般競争を採用することが多くなった。
また、企画競争(プロポーザル含む)は地方自治法上は随契として整理されている。近年、「価格提案を評価するプロポーザル」が見受けられるが価格を評価できる場合は本来は価格競争か総合評価で行わなければならず、随契との整理と矛盾している。
なお、以降の検討において「企画競争」はプロポーザル及び団体特定後の随契手続きの意味を含めることとし、「随契(随意契約)」は企画競争等もなく発注者が契約相手を指定する従前の随契を指すものとする。
Ⅱ 随意契約に関する法規則の整理
地方自治法では入札による競争が原則であり、随契は競争ができない場合に限定されている。随契は「癒着」や「契約価格の高止まり」の原因にもなることからオンブズマン等が問題視すると共に基準の明確化や公表による透明性確保が図られてきた。
(1)地方自治法
随契の条件は地方自治法施行令に定められているが、令和4年度東京都若年被害女性支援事業では第167条の2第二号によると都議会で答弁がされている。
予定価格は少額随契の基準としての使用が定められているだけである。
(2)東京都規則
東京都では契約事務規則によって随契の手続きが定められている。随契であっても予定価格の算定が求められている。
第33条で引用している予定価格の決定方法(第13 条)は以下のとおりである。
また、随契手続きについては財務局の通知も存在する。
Ⅲ 令和4年度の団体選定過程
(1)福祉保健局及び監査が表明する随意契約理由
5月1日に公表された「東京都若年被害女性等支援事業の各委託契約等は地方自治法等に違反しているとして、各委託料の返還を求める住民監査請求監査結果」(以下、「WBPC契約監査結果」という)では令和4年度の契約は「随契」によるものとされた。
「WBPC4団体しかできない」として令和4年度事業で随契を行った理由を整理すると以下の2つに集約される。
受託事業者評価委員会にてWBPCのR3事業履行状況が適格と判断
アウトリーチから対象者の自立につなげていく必要があり継続性が必要
(2)東京都若年被害女性等支援事業受託事業者評価委員会
東京都が随契理由と主張する令和3年度事業の評価委員会の評価内容は以下のとおりである。外部有識者は非開示(堀 千鶴子 城西国際大学教授説と弁護士説あり)となっているが、このような委員会の委員は透明性確保のため本来は開示請求するまでもなく公開されるべき情報である。
なお、開示された評価委員会資料は第3四半期の実施状況報告書と定量的数値の一覧のみであり事業目的との整合性、団体の特徴や体制、個人情報保護の状況等をどのように評価したのか謎である。
設置要綱の第1条(目的)のとおり、この評価委員会はR3事業の履行状況を評価するものであり、評価項目もR3事業の履行状況に関するものしかなく、R4事業において随契の必要性等の評価はなされていない。第2条に「適格性」との文言があるが定義や適格性に関する評価項目もないことから、「R3事業の受託者として適格であった」という意味だと解される。この委員会では随契以前に令和4年度事業の契約に関する評価、議論さえなされてないように思われる。
なお、この委員会における随意契約に関する議論の有無を確認するため以下の開示請求をしている(5月18日までに開示予定)。
(3)契約締結手続き
契約締結に関する文書は以下のとおりであり、随意契約を意図する文言はなく「公法上の契約に類する契約」と書かれているのみである。また、都の内規で随契に要求される見積経過調書、見積書の徴収、随契の必要性や基準適合性の吟味の結果は付されておらず、随契として処理した痕跡さえない。
Ⅳ 随意契約の成立性
(1)裁判例による随意契約理由
随意契約の成立性に関する裁判例を如何に示す。なお、福江市の判例は監査でも引用されているものであるが、最高裁の考え方が総合評価そのものである。
1)福江市ごみ処理プラントの設計施工の随意契約(最高裁昭和57(行ツ)74)
ごみ処理プラントの設置の契約にあたり、後日1社と随意契約をすることを知らせた上で4社から見積もりをとった上で、仕様比較で優れた会社(見積もりは2番目に高い価格)と随契を行った。各社プラントの炉体の揺動装置等に実用新案権を有しており、資力、信用、技術、経験等を踏まえて随契を行ったことは首肯するに足りる。
2)富士吉田市民病院の基本設計随意契約(名古屋高裁平成12(行コ)23)
新病院の基本設計についてプロポーザルで日建設計に委託していたが、建設予定地が変更となり再度の基本設計について日建設計と随意契約を行った。控訴審において病院の建設場所は変更となったが病院の要求仕様は同じであり設計者を引き継ぐことが便宜があること、価格が有利(最初の基本設計より24%減)であることから随意契約に合理性があるとした。
3)石川県津藩町の学習施設建築の実施設計随意契約(名古屋高裁平成16(行コ)5)
学習施設建築のプロポーザルで選定・契約した基本設計の受注者に続く実施設計業務を随意契約したものである。控訴審において実施設計は発注者の意図を理解する必要があり基本設計の受注者はその作業を省略でき、設計思想の理解の齟齬も防止できること、公共建築協会発行のプロポーザルの資料において「プロポの「設計行為の一貫性の確保、著作権の保護の観点から同一の設計者が一貫して担当することが望ましい」とされていること等から基本設計の受注者に詳細設計を随意契約することは合理性があるとした。
4)京都市の溶融設備工事の随意契約(大阪高裁平成17(行コ)91等)
ごみ処理設備に付随する溶解設備工事についてごみ処理設備の請負業者に随契を行った。後日、ごみ処理設備工事の契約が談合によるものと認定された。溶解設備は焼却炉等の基幹部分に付加するものであり、設備稼働後の保守点検体制等を考慮して随契を首肯するに足りる理由がある。
5)太田市優良工事の恩賞に基づく塗装改修工事等の随意契約(東京高裁平成20(行コ)275)
太田市は優良工事表彰の恩賞として51件の随意契約を行った。1件の工事を除き監査請求期間が過ぎている等として棄却された。残り1件の工事について随契理由である「優良工事表彰」は政策達成手段でしかないこと、「雨漏りによる工事の緊急性」は工事伺書に記載がないことから違法とした。ただし、工事が少額であることから統計処理による損害額算定は不適切であり不調の可能性もあることから損害は発生してないとした。
6)粗大ゴミの破砕設備更新工事の随意契約(大阪高裁令和3(行コ)68)
粗大ごみの粉砕設備の故障に際しその更新工事をクリーンセンターの運転管理業務や修繕を実施していた共同企業体に随意契約を行った。控訴審では、町民生活への影響があることから緊急性が高く入札に比べて随契では3ヶ月ほど短縮できること、共同企業体は設備に精通しており、確実性、迅速姓が期待できることから、随契に合理性があるとした。
7)犬山市の駅西再開発基本計画検討業務の随意契約(名古屋高裁令和3(行コ)68)
駅西の再開発事業の基本計画を都市基盤整備公団に随意契約を行った。都市基盤整備公団は都市基盤整備公団法で市街地の整備改善を目的として設置されたものであり、111地区の再開発事業の実績は他の追従を許さないものであること等から随契をしたのは裁量の範囲である。
(2)随意契約手続きの瑕疵
令和4年度WBPC契約に関する東京都の随契の事務手続き上の問題について、粗大ごみ破砕施設更新の裁判例と比較して以下に整理する。
R4年度WBPC契約にあたって福祉保健局は随契に必要となる一切の事務処理をしていないと共に裁判例にあるような代替可能な措置もとっておらず、重大な瑕疵がある。福祉保健局が随契と認識していたことを示す書類も存在せず、この瑕疵は過失ではなく故意であったと考えるのが自然であろう。
福祉保健局においてこの瑕疵しかない手続きは「公法上の契約に類する契約」として正当化されていたのではなかろうか。現在、R4の公法上の契約に類する契約とされた9契約について開示請求中であり、この聞き慣れない契約の輪郭が明らかになることを期待している。
(3)「前年度契約の履行状況」の随契理由
東京都が随契理由とする「東京都若年被害女性等支援事業受託事業者評価委員会」は前述のとおり、平成3年度契約の履行状況を評価しただけである。前年度の契約の評価を次年度以降の契約に反映する方法としては総合評価や企画競争の評価項目の一つとすることや不良成績の場合には欠格として入札に参加させないということは多数の行政機関でなされている。過年度契約の履行状況を随契理由とした裁判として、太田市の優良工事表彰の恩賞裁判がある。
優れた検査成績でも随契理由とはならず、大半の契約になされる評価である「適切に履行された」をもって随契理由とはならない。大学入試で「センター試験で足切りをされなかったから合格」と主張するようなものである。
なお、9件の委託契約の資料開示を待たなければならないが、「公法上の契約に類する契約」には「過年度履行状況に問題ないなら契約ヨシ」とするルールがある気がする。
(4)「WBPC支援対象者との継続性」の随契理由
東京都は、若年被害女性への支援を行っているのはWBPCだけではないことを忘れているのであろうか。少なくとも令和3年度の企画競争において3ヶ月のアウトリーチ実績を有する団体がWBPC以外に2団体存在することが判明している。この企画競争では公募から応募締め切りが1週間程度と極めて短期間であり、十分な期間を与えれば要件を満たす団体はもっと増えていた可能性がある。R4の事業委託では契約額が2600万から4500万に増額したことも踏まえ、被害女性の立場で考えれば「WBPCと繋がった被害女性の支援を厚くし、WBPC以外と繋がった被害女性は切り捨てられても構わない」となってしまう。団体そのものでなく被害女性が随契理由になるのは、「WBPC以外が受注した場合、WBPCと繋がった女性は新たな受注団体に引継がなければならない」ようなケースだけではなかろうか。
colaboと繋がった被害女性だけが高額な食事や宿泊が提供され、BONDと繋がった被害女性だけが資産性・換金性のある引っ越し費用(敷金は不明)や家財道具が事業費から手当されている(監査では問題ないとされたが、被害女性に直接金品を与えるような行為は不当だと考える)。被害女性に着目した継続支援は、随契理由にならないと共に被害女性間の支援の公平性・透明性・公正性さえ毀損するものである。
更に、東京都は令和2年度までモデル事業としてcolabo及びBONDに支援業務を発注している。「支援対象者との継続性」が喫緊の課題であるならば、令和3年度事業の調達ではcolabo及びBONDを随契とし、残り2団体のみを新規団体として企画競争としないといけない。東京都自らの過去と矛盾した随契理由である。
(5)随契理由の後出しジャンケン
「WBPC支援対象者との継続性」との契約理由はR4事業の契約書類に記載はなく、暇空氏がcolabo不正会計疑惑を提起後に後出しで取り繕った随契理由の可能性がある。太田市優良工事の恩賞による随契裁判では「工事施工伺い」に太田市が主張する随契理由が記載されているか否かが判決に影響を与えている。特に原審は多数の工事契約について「工事施工伺い」に基づく随契の成立性が判断されている(控訴審では住民監査期限を超えたとして1件を除き棄却)。
「WBPC支援対象者との継続性」に随契とする合理性が見いだせないと共に「後出しジャンケン」による法的治癒も疑義がある。
(6)同一の要綱・仕様書等での複数団体契約
令和4年度だけでなく東京都の若年被害女性支援事業は、同一の要綱・仕様書等で複数の団体と契約するスキームである。企画競争を行った平成30年度及び令和3年度事業でも「東京都の若年被害女性支援事業は⚫⚫しかできない」ではなく「企画競争の評価点上位⚫団体」という選定を行っている。
このような複数の団体との契約を前提とするスキーム自体が「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」と論理的な矛盾をはらんでいる。令和3年度の企画競争において1週間程度の短い期間で参加資格を満足する6団体からの応募があったことを考えると、企画競争もなく継続4団体と随契することに合理性を見いだせない。
なお、同一の要綱・仕様書等で複数の団体と契約するスキームは私も初見であり、このような調達方法は極めて珍しいと思われる。
Ⅴ 令和4年度委託費用について
(1)令和4年度支援事業費用(4500万)の決定方法
支援事業は令和3年度の1団体2600万から令和4年度は4500万と大幅に増額しているが、その予算根拠資料は以下の1枚ペラであり、積算や見積等による価格の妥当性の検証や予定価格の算定は一切行われていない。
また、東京都契約事務規則第33条で規定する予定価格が存在しないことを監査も確認しており明確な規則違反である。
何の検証もせず4500万の価格で契約したことについて、監査は以下のとおり問題無しとした。
前段落は「福祉保健局の説明によれば・・・とのことであった」としている。監査は福祉保健局のメッセンジャーであり福祉保健局の主張が妥当であるか検証する能力も意思もないと言いたいのであろう。
「また」以降の、後段落の文書は「契約が無効だから全額返還」との指摘の回答であり、「2600万でできたはず」との監査請求の回答になっていない。
(2)随意契約における予定価格の扱い
国の調達では随意契約においても予定価格を定めることが義務付けられている(予算決算及び会計令第九十九条の五)。しかしながら、地方自治法では少額随契の判断基準として予定価格を用いることが定められているだけで、随意契約による予定価格設定は規定されていない。しかし、東京都のように随契での予定価格の設定を規則として定めている自治体が多い。
大阪高裁では原審を引用する形で自治体規定における随契の予定価格設定について、公正・妥当な価格とすることが目的であり上限拘束性を有しないものとした。
(3)随意契約の予定価格に関する裁判例
自治体規定に反する随契の予定価格未設定に関する裁判例は以下のとおりである。何れも積算なり見積審査なりで事前に契約価格の妥当性を確保している。なお、監査が引用している福江市ごみ処理プラントの設計施工の随意契約の判例(最高裁昭和57(行ツ)74)でも他自治体の実績から処理能力や離島経費等を勘案して予定価格を設定している。
1)予定価格調書の未作成(大阪高等裁判所平成28(行ウ)244)
予定価格を設定してないが、コンサルタントに見積審査業務を発注し、当該業務の審査結果をもって交渉しているので実質的に予定価格を設定したものとされた。
2)2人以上の見積書未徴収(名古屋高等裁判所平成15(行コ)27)
犬山市の規則に反して2人以上の見積書を徴収することなく予定価格を設定した。しかしながら、積算に基づいた予定価格が設定されており裁量権の範囲内とされた。
(4)1団体当たりの委託料上限額と事業計画書の効果
福祉保健局は予定価格に変わるものとして①委託料上限額と②事業計画を挙げており、監査もそれを追認している。ここではこの2つが「公正・妥当な契約価格」を担保するものか検討してみる。
1)1団体あたりの委託上限額
R3事業の契約にあたっては企画競争を実施している。企画競争は「発注者が提示する参考規模に見合った実施内容を提案し競争するもの」であり、若年被害女性支援事業の要綱や仕様書は積算や見積もりが可能な事業内容となってないことを意味する。「公正・妥当な契約価格」とは事業内容見合いであることが前提であり、事業内容が不明朗では判断は不可能である。R4事業の要綱及び仕様書はR3事業と同じであり1団体あたりの委託上限額をもって「公正・妥当な契約価格」とすることはできない。
2)事業計画書
前述の裁判例のとおり、予定価格は「契約相手方が一部の者に偏り,不利な価格で契約を締結される恐れ」を排除するため、契約前に価格の妥当性を確保するものである。4500万での契約後に提出する事業計画書では原理的に妥当な価格を担保することはできない。契約後の後出しの事業計画書が妥当な価格の証拠となるのは「発注者による厳密な計画履行管理、支出の検証」が付随した場合のみである。計画書に違えたアウトリーチ等の活動や費用の流用を協議もなく受注団体に好き放題にさせて事後に変更を追認してる事業計画書に価格の妥当性に関する証拠能力は微塵もない。
なお、計算ミスだらけのcolaboの事業計画書、事業収益がBONDにロンダリングされる構図となるカフェへの1000万近い支出の事業計画書を承認している福祉保健局に計画書を審査する能力も意思もないと思われる。
(5)令和4年度契約額の増額(1900万)の妥当性
令和3年度の2600万から令和4年度には4500万と契約額が1900万円増額されている。本来は4500万全体の妥当性の検証が必要だがR3の支出の詳細等が明らかにされていないことから不可能である。このため、この増額分に限って検証を勧めたい。福祉保健局はこの増額について以下のように見解を述べている。
1)相談者や困難ケースの増加
予算要求資料において相談者や困難ケースの増加を示す経年データを表したものは以下のものしかない。
団体ごとではなくR2は3団体、R3は4団体の合計値での比較となっている。吹き出しで団体ごとのR2,R3の数値を追加したが、大幅に増加したのはBONDのアウトリーチ声掛け人数だけである。BONDのアウトリーチ声掛け人数の増加は、1回あたりの声掛け人数の増加(R2:3人/回→R3:8人/回)が最大の要因である。8人/回でも少なすぎ、福祉保健局が厳しく指導すべき内容である。
1団体あたりの委託費増額の根拠となるのは被害女性支援事業全体の相談数でなく1団体あたりの相談者であり、増額するほどの増加の実態はない。2)研修機会確保の代替職員経費
本来は、R2の各団体の研修実績を提出させて積算すべき事項である。しかし、そのような作業をしてないことから、R4の3Qまでの研修参加実績から概算費用を算定してみると110万円程度である。ぱっぷすは1回あたり大人数が参加する研修を複数回実施しており趣旨を逸脱してる可能性がある。
なお、令和4年度で支援事業の対象となったのは「代替職員経費」である。研修に参加している職員の代わりに留守番で支援事業を担う人の人件費であり、研修の参加費、受講料や研修参加者の人件費は対象外と考えられる。3)警備体制の確保
平成4年度の国交省の警備員の労務単価は17,200円/日である。各団体のアウトリーチは年間50回程度であり、2名を1日配置したとすると180万程度である。
4)居場所での生活支援者増員
R2からR3にかけて団体別の居場所支援の対象者は横ばいである。R4に特段の増加要因を把握していなかったのであれば増員・増額する根拠がない。
以上、福祉保健局のいう1600万の増額要因を積み上げても300万程度(合計2900万)にしかならないず、4500万の契約価格は不適切というほかない。また、予定価格の未算定という東京都契約事務規則違反について謝罪や指摘をしない福祉保健局及び監査は不誠実である。
Ⅵ まとめ
福祉保健局が説明する随契理由は「後付」の可能性が高く合理性があるとも思えない。4600万の令和4年度の委託費についても根拠もなく妥当ではなく地方自治法第2条「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」を満足しない。随契理由の吟味や予定価格の算定等、地方自治法の随契の規定を履行するために定められた都の規定を一切無視した手続きは異様である。
若年被害女性支援事業のWBPCとの契約や履行状況、潜在的な参加団体の状況及び予算総額を踏まえると、令和4年度は3000万*×6団体の企画競争とすべきであったと考える。
※令和3年度の2600万が妥当であった場合
Ⅶ その他
(1)最高裁判例の陳腐化(総合評価、企画競争)
監査でも引用している最高裁の判例(最高裁昭和57(行ツ)74)は、昭和時代のものである。
昭和の時代には「多少価格の有利性を犠牲にしても信頼性のある相手と契約する」には随契しかなかったが、現在は信頼等と価格双方を評価し契約の相手方を選定できる総合評価方式がある。また、各団体で実施方法が全く異なる場合に価格要素を一切除外し事業内容提案や技術提案だけで選定する企画競争というツールもある。この判例を金科玉条のごとく引用し「価格競争が不適切=随意契約」という論理展開は現在では成立しないのではなかろうか。昭和時代よりも「随意契約が適切な案件の範囲」はかなり狭くなっている。
(2)監査結果の意見について
監査結果の最後に位置付けが不明な意見が記載されている。このような言い訳じみた意見を付すなら、誠実な監査をすべきであろう。
規程類の整備が不十分というのは失当。福祉保健局は整備されていた規定類を尽く無視し、違反したのが事実。
記録を残しておくべきというのは失当。記録以前に規程類に則った検討が必要。検討もしてないのに記録はできない。
(3)R5の補助事業化に伴う支払条件見直し
R5の補助金化に伴い支払いの基準が変更された。東京都は「改善」と嘯いているが公金を用いた契約では当たり前の事項ばかりである。例えば調査業務ではヒアリング先の選定が見込み違いで期待していた成果が得られない場合がある。しかし、これは瑕疵ではなく調査を継続する場合はヒアリング対象の選定方法の改善が必要となる。しかし、この「改善」は実費精算の支払いに直結する事項である。改善ではなく「東京都の怠る事実」によって本来支払うべきできない費用が支払われたと見るべきである。なお、「備品購入費は10万未満ならOK」は恣意的な運用が危惧される。
(4)R4事業の「研修費」に関する監査結果
R4事業の監査結果が公表されている。この中で研修費について以下に述べている。
R4年度に認められたのは「研修機会確保の代替職員経費」であり、研修費自体は認められていない。もし、受講費等研修費そのものへの支出が見つかったら高額とか定額とか関係なく一発アウトである。
(5)監査結果に関する開示請求
WBPC契約監査結果に関する以下の開示請求を行った。監査での福祉保健所の見解が「後出しジャンケン」であることの確認及びWBPC以外に若年被害女性の支援団体が存在することの確認を目的としたものである。
(6)使用した裁判例
本記事で使用した裁判例のファイル。
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