マントラでタバコをやめた話
正確にはマントラでタバコをやめたわけではない
執拗にマントラを唱えていたらタバコを吸いたいという欲求がなくなったのである
マントラはタバコをやめるために唱えていたわけではなかった
マントラは怒りを抑えるために唱えていた
今ではだいぶマシになったがかつては持続的憤怒症と呼んだらいいような一種、病的な怒りの情動に苦しんでいた
その頃、すでにアンガーマネジメントのようなものはあったが自分には無効であった
つまり心理学的方法は万策尽きていた
霊的な方法の一つとして怒りを鎮めるのに霊験のある寺に行ったこともあった
瞑想もやってみたがこれはむしろ怒りを増幅させることになった
何かで、ガヤトリーマントラが怒りを鎮めるのにいいという文章を読んだ
それから一日中、ガヤトリーマントラを唱える日々が始まった
人気がないところでは声に出して唱え、人気があるところでは心のなかで唱えた
これを何日続けたか憶えていないが、怒りはそれほど減らなかったが、タバコを吸いたいという強い欲求がなくなったことに気づいた
それまでの僕は渇煙家で世界中のタバコを個人輸入して吸ったり、キセルやぱっと見ヤバい喫煙具まで買い揃えて、タバコを愉しんでいた
タバコをやめようという気持ちはなかった
それなのにタバコを吸いたいという例のこらえがたい強い欲求があっさり消えてしまったのだった
不思議なことだったが、吸いたいという欲求がなくなったので自然、タバコをやめた
今ではそれでよかったのだと思っている
マントラの朗唱とタバコへの欲求が消えたことに何らかの因果関係はある、とは思っている
しかしそれを科学的に証明するのは無理な話である
他人にもすすめはしない
これは僕のなかでたまたま起こったことで他人にも起こることとは思えない
同じことをやって何か問題が起こっても僕は責任をとれない