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【声楽留学】入試合格しても落とされる?【ドイツ音大入試のいろは】

今回は、ドイツの公立音楽大学への留学を目指す方に向けて、愛と応援の意を込めてお届けします!公立音楽大学への入学は決して簡単ではありません。私も、普通に受験していたら落とされていたと思います。←あれ?と思った方、答えはのちほど…
後半には入試要項の日本語訳、選曲のコツなどについても書いてあります。必要項目だけ読みたい方は、目次から飛んでくださいね。

というわけで、まいりましょう!
まずは情報収集から。

音大留学に向けて情報収集

ドイツは全国各地に音楽大学があります。さて何をどうやって調べましょう?
あなたの現在師事する先生に質問してみるも良し、現在留学中のよく知る先輩や友人に聞くも良しですが… やっぱり自分の留学のことだから、自分で情報収集したいですよね!
今、この便利な時代、情報を調べるにはやはりインターネット。

まず、行きたい/気になる大学の名前+専攻名 で検索すれば先頭に該当するページが表れます。って、Googleの使い方はみんなわかるってな。笑。

気を取り直して…

大学の正式名称がわからなくても
Musikhochschule + 都市名 + 専攻名 で検索すれば大抵OK。

では試しに私の母校、ライプツィヒ音大の声楽=
Musikhochschule Leipzig Gesang で検索してみましょう…

じゃーん。ほらね!早速ページに飛んでみると…

ライプツィヒ音大声楽科のページが現れました。
大体どの大学のホームページ(以下HP)もこんな感じの目次が表示されます。
このライプツィヒ音大声楽/音楽演劇HP の場合、上から順に見ていくと、

  • Lehrende / 指導者

  • Studiengänge / 学位課程

  • Studiendokumente / 授業、研究に関する書類

  • Studienschwerpunkte / 主な分野、科目

  • Bewerbung / 応募、志願

  • Die Sängerakademie Hertenfels / 歌手アカデミー ハルテンフェルス

となっています。おおよその情報はHPで十分手に入ります。
皆さんも勇気を出して、ご自身の気になる大学のHPを、ちょっと開いてみましょう!大丈夫、ドイツ語怖くないよ!笑。

ところで、音大に留学するには、いつから渡独すればいいのでしょう?3月に日本の大学卒業して、4月からドイツ…?入試はいつ受けるの?そんなあなたへ。

ドイツの学期分け

ドイツは日本と同様2学期制。冬ゼメスター(10~2月)夏ゼメスター(3~7月)に分かれていて、日本風に言うなれば冬が前期、夏が後期です。どちらのゼメスターからでも入学可能な大学もありますが、大抵は冬ゼメスタート。ドイツでいう新学期は、秋なのです!なので、夏ゼメ入学のための入試は、ない学校や専攻もあるので、要注意。定員の空き具合に寄って変わってくることもあるので、ご自身でしっかり調べてください。
通常、冬ゼメの入試は5,6月頃、夏ゼメの入試は1,2月頃に行われます。ということは、3月に日本の学校を出て、すぐに準備渡独、5,6月に入試を受けて、秋入学というのが最短かな?

先ほど書いた、定員の空き具合といえば…とても重要な注意点をここで!
こちらの大学は、入試にさえ合格すれば入学は保証され、いずれかの先生に必ず師事できる、といった日本のシステムとは少し違います。それを知らずに日本から入試を受けに来て、試験には合格したにも関わらず入学の許可が下りなかった人もちらほら…
さて、なんでこんなことが起きるのでしょう?

合格者なのに不合格?

その理由は、教授がクラスに持つことのできる生徒数、または専攻ごとの所属生徒数に上限があるから。受験し、合格点を満たしたにも関わらず、定員数オーバーのため入学できないのです。
なので、師事する先生が明確であること、その先生の生徒数に余裕があって、合格した際確実に取ってもらえるよう話を付けておくことが大切です。先生によって『今回の入試は自分の生徒が多数受けるから実質空きはない。もしそのうちの誰かが落ちてあなたが合格していれば取ってあげることはできるかも』と言われることもあります。その時は、覚悟の上で賭けに出るか、確実に取ってもらえる年を待つか、別の先生を探すか…それはあなた自身が決めてください!

どうやって入学前から先生と連絡取るの?

  • 師事したい先生に連絡する。(上記のHPにLehrendeというページがありましたよね。)

  • 入試より以前に準備段階として渡独し、先生に時間を取ってもらってレッスン(オーディション)を受ける。

  • 生徒として受け入れ許可が出た場合(可能ならば)受入承諾書を書いてもらう。

  • その後入試の準備など、相談も含めて連絡を取り合う。

よく、どうやって先生を探しましたか?先生紹介してくださいませんか?と聞かれます。

答: 現地にいる、現役の学生にいい先生がいるかどうか聞いてみてもいいと思います。また、マスタークラスや、オープンキャンパス(Tag der offenen Tür)に参加してお目当ての先生を探す、交流する、といった方法もあります。各大学HPの指導者リストを見て、連絡してみるのもありです。
大学名よりも、あなたが何を学びたいのか、それを誰の下で学びたいのか、といった視点がとても大切です。

ここで私のときの話をしておきましょう。ひとつの例として。

私の留学の成り行き

2009年大学院1年の夏頃、ドイツ留学したいもののどこへ行けばいいのか、どうやって調べればいいのか完全に迷子だったとき。
大変ありがたいことに、私の師匠が、元同僚で現在先生をしている人をリストアップして下さり、師事したいと思う人に(師匠の名前をつかって)連絡してみるよう言われました。
私はそのひとりひとりを調べ、音源を聴き、レパートリーを見て、勤務大学のHPからメールアドレスを探し出して、3名ほどにメールをしました。返事を下さったのは1人だけでした。来年頭にVorsingen(オーディション)にドイツに来るように、と。
そんなときまた師匠が『信頼のおける元同僚で、友人でもある現教授に会いに渡独する機会があるので、今すぐスタジオをとって録音しなさい。その人なら留学してからも、あなたの学ぶべきことを正しく教えてくれると思う』と。私は言われるがままに急いで準備、師匠は私のCDを持って渡独。
お返事は『いくらあなたの生徒だとはいえ、必ず取るという約束はできないけれど、とりあえずこの音源は聞いてみる』とのこと… それが2009年の秋頃でした。
待てど暮らせど来ない連絡。数回メールしてみて、ようやく返事。『音源は気に入ったけれど、直接聞いてみないことには、なんとも言えないので、ドイツへ来て歌を聞かせてください』と。それが2010年の1月頭頃。2010年の2月末に渡独して、3月にVorsingen(オーディション)してもらい、即受け入れ許可をいただきました。私もとても良い相性だと感じました。翌日にはそれを文書にしてくださり、ポストで滞在先に送ってくださいました。それが、ライプツィヒ音大の先生です。
そこからDAAD申請の準備を始め、2010年9月に提出、2011年3月に大学院修了、それと同時にDAADの結果がわかり、合格通知の記載通り6月に渡独。4か月の語学研修を経て、10月入学という流れでした。

さてみなさん、気付いたことはありますか?

そう!入試の下りが抜けていますよね。実は私、入学試験は受けていません…
当時ライプツィヒ音大は、DAADの給費留学生として認められれば、入試は免除。すなわちDAADの合格が、大学の合格だったのです。今はどうなんだろう… (各大学にDAAD担当者がいるはずなので、連絡して確認するのも有。) 
DAADって何?という方へ。↓↓↓


それから、最初に返事をくださった先生とはどうなったのか、気になりますよね!
Vorsingenにも行きました。快く受け入れを承諾してくださいましたが、問題が。
『あなたの入学予定のゼメスターに私は退官するので、レッスンはプライベートで行います。大学では、私の後任の先生に話をつなげておくから、心配しなくていいわよ。』と。
なんと優しい先生なのだろう!路頭に迷う留学希望生は思うことでしょう。やっと光がみえた!拾ってくれる先生がいた!と。でも、よく考えてみてください。プライベートでレッスン = レッスン費は自己負担。プライベートレッスンに通えるような金銭的余裕、また外国で学校に通いながらさらに学外レッスンに通う肉体的、精神的余裕が、私にはあるとは思えませんでした… (その事に気付かせてくださったのも、私の師匠です。おんぶにだっこですね、私。) もっと書きたいことがあるけど…省略!!笑。

では、情報収集の仕方、先生へたどり着くためのヒントが少ーしわかったところで、入試の準備について話していきましょう。

大学入試の準備

準備しなければならないことはたくさんあります。落ち着いてひとつひとつやっていけば大丈夫ですよ!

出願方法

各大学のオンラインポータル(プラットフォーム)に登録して、そこに様々な書類をアップロードしてオンライン出願できるところと、ポータル登録後に必要書類を郵送しなければならない学校があります。また、オンライン登録型でない学校もあるので、志望校のHPをよく読むこと。
出願に関する情報は Bewerbung、BewerbenまたはAnmeldung等と表示されているページで見つけられます。
オンラインではない学校の場合、担当者のメールアドレスが記載されているのでそこに問い合わせましょう。

必要書類

オンライン出願の学校の場合、ポータルに登録しないと必要書類がわからない場合があります。
ここには例として、とある大学のマスターオペラ科出願のための必要書類を日本語で載せておきます。大学、過程、専攻によって違ってくるので要確認ですよ!

  • 全項目記入済みで証明写真付きの申請書

  • 表形式の履歴書

  • 出生証明、パスポート、または滞在許可証のコピー

  • 学部声楽専攻の卒業証明書。応募時点にまだ証明書が発行されていない場合、学校承認の卒業見込み証明書。
    この証明書は遅くとも冬ゼメスター頭の学籍登録までに提出すること。

  • これまでの成績証明書。

  • これまで歌った、実際に演じた、または完全に勉強済みのレパートリーのリスト。

  • 現在の音声学医の推薦書もしくは耳鼻科医による詳細な証明書(半年以内のもの)。

  • ドイツ語B2以上の語学証明書。遅くとも冬ゼメスター頭の学籍登録までに提出すること。

  • 受験料の支払い証明書(銀行口座のコピーもしくは、領収書、レシート)

学習課程

学校によって多少違いますので、ある大学の入試要項から、参考までに日本語でここに書いておきます。(留学を考えている方への大体の判断材料として。)
自分の志望大学の要項は、自分で責任をもって確認すること!!

Bachelor
標準学修期間: 8 ゼメスター(4年)
卒業資格: Bachelor of Musik
職業分野: 舞台歌手、コンサート歌手、音楽学校の先生、フリーランス活動
年齢制限: 1. ゼメ: 25 才 (研究開時点で) 5. ゼメ: 27 才 (研究開始時点で)
語学能力(外国人の志願者のみ):  ドイツ語 B2

Masterstudium
芸術関連の、学部、もしくはそれと同等の卒業資格があること。
標準学修期間:
a) コンサート声楽: 4 ゼメ(2年)
b) オペラ声楽: 4 ゼメ(2年)
c) 声楽教育学: 4 ゼメ(2年)
卒業: Master of Music
年齢制限: 30 才 (研究開始時点で)
語学能力 (外国人志願者のみ):
- a) と b): ドイツ語 B2
- c): ドイツ語 C1

Meisterschülerstudium
同じ専攻もしくは関連する専攻の、ディプロマもしくはマスター修了もしくはそれ同等の卒業資格があること。
標準学修期間: 4 ゼメ(2年)
卒業: Meisterklassenexamen
年齢制限: 32 才 (研究開始時点で)

入学試験要項

これも、とある大学の入試要項を日本語に訳したものです。
参考までにどうぞ!

Bachelorstudium  1. - 4. ゼメスター

I. 本試験
評価基準は、芸術的な想像力、演奏様式、技術的能力、および自分の発達レベルに対応する難易度の選曲です。 特に断りのない限り、本試験は通常10分から30分かかります。 審査委員会は、演奏を途中で止めることがあります。 彼らには音楽的事前知識を確認する権利があります。 伴奏者はこちらで準備できます。 伴奏者用の楽譜を持ってくること。

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