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東京オリンピック ボランティアドライバー体験記5

A駐車にはプレハブの小屋があって、平屋だが結構な広さがある。駐車場自体も C駐車場より若干広いのではないか。どうやらステークホルダーの車は、A、B、 Cのいずれかに泊めてあって、そこから目的地に向かって出発するので、ステークホルダーの車がAにあってA駐車場から出発するドライバーは、 シャトルに乗ってフリートボランティアの受付事務所のあるCからAに移動してきて、そこでステークホルダーがやってくるのを待つらしい。

ところが聞こえてきた話によると、どうやら話はそう簡単ではないようだ。私たちが乗せるのはさまざまな国のオリンピック委員会のステークホルダーだ。とはいえ、例えばアメリカなどの大国は、自分のところで車両や運転手を確保しているので、私たちが運転手を務めるフリートサービスは利用しないようだ。利用するのは選手団がそう大きくない国の方が多いらしい。そして国によっては、時間にルーズであったり、無断で予約をキャンセルしたりする場合も少なくないようだ。つまりせっかく乗車をアサインされても、すっぽかされることなども、しばしばある。

その一方で、当日予約というのもそれなりにあるようだ。車両の利用希望者は、原則として前日夕方5時までに、翌日の利用希望を出す。しかし世界はそんな律儀な人たちばかりではない。当日になって車を使いたいと考えて、申し込みに来る人たちも少なくない。そしてA駐車場は、選手の居住場所から一番近いので、ここに直接予約に来るステークホルダーも少なくないようだ。

私がこの日やることになった英語係の仕事は、次々とやって来る外国人に声をかけて、何を望んでいるのかを尋ねることだった。外国人はA駐車場で待機しているドライバーと落ち合うために小屋に来ている場合もあるし、前述のように当日予約をしに来ているケースもある。窓口には英語がペラペラの女性が陣取っていて、何が起きても対処できそうな雰囲気を醸し出していた。ところがいかんせん、その女性1人しか窓口スタッフがいないため、外国人が大挙して押し寄せると、その対応をする人が居なくなってしまうのだ。

A駐車場には英語のヘルプとしてもう一人、私と一緒に C駐車券からやってきた男性もいた。その人はもう何度かボランティアに入っているようで、いろいろ勝手を知っていた。その人が外国人にも積極的に声を掛けていたので、私は横でそれを見ていたが、それでも人手が足りない時に、私が外国人に声を掛けた。

私は特に英語に自信があるわけでもないのだが、海外に行っても日常会話程度なら困ることもないので、なんとかなるだろうと思って英語係に手を挙げた。そして実際、私の英語で十分対処できたし、一緒に手を挙げた男性の英語力も、私と同程度だった。しかし、ボランティアの中には英語がほとんどできない人も居た。この日の私は通訳として、そういう人のヘルプをすることもあった。

私は、ステークホルダーの待機をしているドライバーに、「ここでは仕事は待ってても来ないのよ。自分で仕事を見つけるなり、当日来た予約に対応するドライバーが求められた時に、積極的に手を挙げたりしないと、仕事はもらえないの」とのアドバイスをもらった。今後の教訓として心に留めておこうと思った。英語係として対応しているうちに、ドライバーとしての仕事の様子もなんとなくわかったので、ただ漫然とC駐車場で待ち続けるより、A駐車場のスタッフに、勇気を出して手を挙げてよかったな、と思った。自分で探さないと仕事は見つからない。

昨晩メールで来ていた私の今日の仕事予定は、朝7時から夕方の5時までだった。でも今日は乗車の予定もないし、お昼にもう2人英語スタッフがA駐車場にやって来たので、私は彼らと交代して帰ることにした。どっちにしろ昼休みを取らないといけない頃合いだったし、もう一人の英語スタッフも一度交代して、午後どうするか考えると言っていたからだ。私は今日の仕事はもうこれで十分だと思ったし、英語スタッフも4人は必要ないだろう。とはいえ、今日の仕事にはそれなりに満足した。運転は別に得意じゃないし、これから先ずっと英語スタッフでもいいかな、とさえ思ったが、組んでいた男性スタッフに、乗車も経験した方がいいと勧められたので、そんなものかな、と思った。慣れないことも多く、お昼で仕事を上がったわりには、結構疲れた。

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