市民オペラに参加するということ 5
欅の会では通常、公演のパンフレットに翌年の演目の予告が載る。それが今年のパンフレットには載っていなかったので、どうしたの? と思った。来年は公演をやらないのだろうか。
もう一つ私にとって衝撃的なことがあった。ワクチンが行き渡り、コロナも収まってきたので、やるのではないかと期待していた、地元の第九が中止されたのだ。
私の地元では、2年にいちど、市民合唱団を結成してベートーヴェンの第九の公演をやる。コロナ禍の昨年は、もともと第九のない年だった。今年は本来なら第九をやる年なので、私は参加しようと意気込んでいたのだ。毎年9月になると自治体の広報に団員を募集する案内が載る。
市民第九も毎回参加するのは億劫なので、気が向いた時しか参加しない。前回参加したのは4年前だか6年前だかで、しばらく間が空いていた。私が以前、個人レッスンを受けていた歌の先生は、現在出産でお休みに入られていたので、私は今では歌う機会を全く失っていた。だから今回の第九には久しぶりに参加しようと思っていたのだ。それなのに待てど暮らせど、団員の募集はなかった。私はがっかりした。まあこの状況下ならやむを得ないという気もするが、密かに楽しみにしていたのに。
そんな時に、欅の会のメンバーからお誘いを受けたのだった。次回の演目が決まったので、練習に参加されませんか? その人とはずっと連絡を取り続けていたわけではないが、たまにやりとりはしていた。次回の演目は「愛の妙薬」だという。市民オペラでもよく取り上げられる演目だったが、私は見たことがなかった。やりたくて仕方がなくて参加した前回の「カルメン」とはわけが違う。私は検討してみる、と回答し、「愛の妙薬」を動画検索して見てみた。
オペラにありがちな単純なストーリーで、合唱の登場場面も多い。これならやってみて楽しいに違いない。私の気持ちは参加に大きく傾いた。ただ一つ気になる点があった。この状況なので、おそらく練習はマスク着用の上だろう。マスクはただでさえ嫌いだし、果たしてマスクをして歌なんか歌えるのだろうか。心配だったので、いきなり参加するとは回答せず、一度見学させてもらうことにした。もともと居た団体に見学を申し込むというのもおかしな話だとは思ったが、もしどうしてもマスクで歌うのが辛いなら、それを口実に参加を取りやめればよい。