米国大手が採用するAltair FlowTracerが注目される理由とは?
半導体業界は、経済安全保障の観点からも注目が高まっています。素材や製造技術開発への投資に加えて、顧客のニーズに合ったPPA(Power、Performance、Area)の最適化や高品質な製品を迅速に設計(短TAT)することも非常に重要です。半導体設計フローは複雑で、管理も煩雑です。設計に関わるチームやメンバーが増えると、部門横断会議や設計者間での調整も増えてきます。
そんな中、米国や台湾を含む海外の主要な半導体メーカーにおいて、アルテアの設計手法がなくてはならないソリューションとして採用されています。多様な設計ニーズに応え、短い納期を実現するには、個人やチームの気づきや修正といった努力も重要ですが、設計管理全体を根本から見直し、さらなる効率化、コスト削減や設計時間短縮への取組みが重要になってきます。
ここでは、半導体設計に特化したフロー管理をチームで共有できるAltair FlowTracerを紹介します。FlowTracerは、デジタルかアナログ設計かに関わらず、半導体設計のフロントエンドからバックエンドまで適用可能であり、EDA(Electronic Design Automation)、フロー、解析、検証のジョブ投入、デバッグ、データなど、あらゆる手順を単一のビューアーで表示し、リアルタイムの進捗管理を可能にします。
以下の、半導体設計において設計者が抱える3つの課題を、FlowTracerがどのように解決できるのかをご説明します。
1. 開発時間の短縮
開発時間の短縮は最も重要な課題です。プロジェクトマネージャーは複数の開発者にタスクを分配して、一つのチップの開発を進めます。しかし、設計者たちは自分のペースで設計を始めるため、進捗状況が見えにくくなり、報告や打合せなどの情報共有に時間がかかってしまいます。
FlowTracerを使用すると、各開発者が担当する業務の範囲が明確になり、どのようなフローを構築し、どこまで検証が進んでいるかが一目で分かります。開発メンバー間で共有されるフローは、いわば地図のような役割を果たし、設計業務を効率的に行えます。
さらに、開発者はFlowTracerの画面内で解析や検証のジョブを実行し、上流のフローから結果ファイルを受け取り、コンパイル、テスト実行までを自動化することができます。デバックするときもファイルを探し回ったり、アプリケーションを切り替えたりする必要がありません。
FlowTracerはフローに従って自動的にジョブを実行してくれます。計算エラーが検出された場合は、次のジョブの実行を停止し、無駄な計算を停止します。設計者はどのフローをデバックすればよいのかを視覚的に確認できます。また、結果ファイルのキーワードを検出して、後に続くジョブの実行可否を判断したり、アナログ設計では閾値を設けて実行可否を判断する仕組みなどもFlowTracerに備わっています。
このように、開発メンバーが開発業務の全体像と進捗を共有し、各設計者がFlowTracer内で業務を完結させることで、検索や情報共有、進捗会議などの無駄な時間を削減し、設計業務に集中することができるようになります。
2. 品質の向上
個々の設計者による半導体開発では、設計の品質にばらつきが生じる可能性があります。ある設計者は必要な手順を抜かし、別の設計者は異なるプロセスを経てしまうかもしれません。設計が進んだ後に問題が発見された場合、どの段階で問題が起こったのかを特定するためには、記憶をたどるしか方法がありません。
FlowTracerを使用すると、標準の設計環境に統一されるので、すべての設計者の手順の抜け漏れが防止されます。さらに、過去の設計からのベストプラクティスも共有されるため、全体的な品質が向上します。もし問題が発生した場合でも、どのフローに問題があったかを客観的に特定し、検証できます。
FlowTracerは複数のEDAツールとの統合に対応しているため、各EDAツールの利点を組み合わせることができます。EDAツール内でフローを構築し、検証を実行するものは存在しますが、他のツールを含めたフローの構築をしてくれる商用アプリケーションはなかなか見つかりません。また、EDAツールごとに機能や性能、コストが異なり、得意・不得意があります。必要に応じて自社のプログラムを組み合わせて包括的な検証を行うことも可能です。
もちろん、品質チェック(QC)のフローをカスタマイズで追加し自動的に実行できるため、自社の検証手順を遵守できます。QCフローやその値自体が半導体メーカーにとって貴重な知識として蓄積されていきます。
3. ナレッジ管理
半導体設計を個人のスキルに依存させることは避けるべきです。過去の設計データは残っていますが、転職や退職、設計者の異動によってその貴重なナレッジが失われる可能性があります。どのような思考プロセスや検証を経て特定の設計に至ったのか、新人設計者にはわかりませんし、同じ過ちを繰り返す可能性もあります。しかし、FlowTracerを使用すれば、失敗したフローとプロセス、その結果までが記録されており、後任の設計者が同じ問題につまずくことなく作業できます。時間の無駄を避けることができるのです。
同様に、派生製品開発でも同じことが言えます。FlowTracerの過去のフローを修正して利用すれば、以前の設計者と同じ試行錯誤を繰り返してしまう無駄を避けることができ、開発スピードが飛躍的に向上します。
FlowTracerには「枝分かれ(Branching)」をカスタマイズで追加する柔軟性もあります。フロントエンドのデザインエクスプロレーションの過程では、さまざまな選択肢でフローを作成したい場合があります。FlowTracerなら、一つのビュー内にバリエーションのフローを作成できるため、バージョン管理の手間が省けます。
枝分かれしたフローのジョブを帰宅前に実行し、翌朝に結果を比較して最適なフローを採用することも可能です。ある設計では今回の方法を採用し、別の設計では以前のフローを修正して使用するなども、簡単に変更できます。設計が完成しただけでなく、試行錯誤の中で最良の設計を見つけることもできます。
ECO(Engineering Change Order)は、設計の微調整や変更が必要な場合に行われる手続きやプロセスです。通常、特定の設計部分を修正する場合、関連するドキュメントや設計データを更新し、再設計や再検証を行う必要がありますが、FlowTracerはECOのフローを組み込むことができます。これにより、自動化されたプロセスを使用してECOを実行し、設計の微調整や変更にかかる時間や手間を大幅に削減できます。
多くの半導体設計会社では、設計のビッグデータを使い、AIに設計をさせる取り組みがされています。FlowTracerは設計メンバーのすべてのデータを一元的に管理していて、設計活動の履歴や関連する情報を出力するインタフェースを装備しています。こうして出力した情報をAIに学習させることも可能です。ひとつのベンダに依存しない独自のロジックを開発したい設計者にとって、最適なツールとなっています。
これらの機能により、FlowTracerは製品の設計フロー全体を包括し、個人に依存せずに複雑な作業を簡素化し、ナレッジとして共有できるようにします。
4. まとめ
FlowTracerは、半導体設計業務を劇的に変革する便利なツールです。一度FlowTracerを使い始めると、それ以前の設計業務のやり方を思い出すことが難しくなります。このソフトウェアは、小さな努力で大きな効果を得ることができる、てこの原理のようなものです。
FlowTracerを試してみたい方は、まずNDAを締結し、弊社のエンジニアと共にクライテリアを定め、一つのフローを共同で作り上げることから始めます。この段階まではライセンス費用に含まれており、安心して導入を開始できます。
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