#008 リアルと紐づくサービスは、GISで地図上にデータを可視化してみよう
こんにちは。OpenStreetデータサイエンスチームです。
当社では「データの民主化」を重視して、様々なデータをBIツールや地図・GISツールで社内共有し、意思決定に役立てています。
今回は、今年2月に行われたESRIジャパン様のウェビナーでの発表を再編集して、社内におけるGIS/地理情報活用の現状をお伝えします。
GISとは
GISという言葉に馴染み無い方も多いかもしれませんが、地理空間情報システム(GIS:Geographic Information System)のことです。マップ上に様々な地理情報・位置情報を持ったデータ(地理空間情報)を重ね加工・分析・可視化する技術群の総称です。
古くは日本マクドナルド社が人口分布などを出店戦略に活用したり、行政分野においても地域の基礎情報の整理・伝達手法として使われてきました。最近の例だと、スマホのマップ機能もGISの一種と言えます(地図をベースに雨雲分布や渋滞情報、混雑分布やナビゲーション…地図を起点にいろんな情報が見れますよね!)
最近は高校地理の必修科目でも扱われるようになるなど、実は身近にある欠かせない技術になってきました。もっと詳しく地図やGISについて知りたい方はこちらの本をどうぞ。
業務でのGIS活用
当社の中でもGISは業務上欠かせないツールとして活躍しています。
というのも、ECサイトなどウェブサイトやアプリで完結するサービスではなく、現実世界で実際に自転車が日々動き回るシェアサイクルという特質上、地図/GISでのデータを可視化し、現状を把握することが肝になってきます。
例えばステーション候補地を開拓する際には、GISによる地理空間情報分析により候補地の売上見込を事前に予測することで、設置妥当性の判断材料の一つとしています。
収益性予測は、以前こちらのnote記事でもご紹介しました。
一方で、単に収益性を分析するだけではなく、公共インフラ視点での分析にもGISは活躍しています。例えば下記の地図は、鉄道駅やバス停が近くにない交通空白地を可視化したものです。
部署を跨いでGISを活用する中で見えた課題
データチーム立ち上げ当初は、社員も少なく、データチームがそれぞれの案件に対して個々のPCで分析を行い、案件関係者にレポート共有し、意思決定に活用していました。しかし事業が拡大し社員数が増える中で、従来手法では限界が生じました。
データを元にした意思決定の文化が根付くほど「以前見たデータの最新版を見て会話したい」「レポートを定期的に出して欲しい」といった情報の鮮度要求が高まってきます。
また、案件関係者は手元にデータを持って無いため、都度データ分析チームに分析依頼を行う必要がありました(情報の非対称性)。そのため案件が増えるにつれてデータ分析チームのリソースがひっ迫してしまう事態が生じかけていました。
データ分析チームでは以前よりTableauを導入していましたが、弊社は事業上、地図空間情報を多く扱うため、それらに特化したBIツール・GIS環境が必要でした。
課題解決のための新たなGIS環境の導入
そのような課題の解決のために、データ分析チームでは地理空間情報を使いやすい環境の整備を進めています。昨年度、ArcGISOnlineを導入し、並行してMapboxやDeck.glなどの活用検討を進めています。前者は社内での部署間横断BIツールとして、後者はデータチーム内での業務効率化・より良い可視化表現追求の観点での活用です。
例えば昨年導入したArcGISOnlineは部署間横断の地図特化BIツールとして、地理空間情報の社内共有に役立てています。業務端末の中にアプリを1つ入れるだけで、いつでもどこでもデータ見ることができるため情報の非対称性の解消に繋がっています。
簡単な分析であれば誰でも出来てしまうのがBIツールの強みです
社内共有しているデータは下記のようなものです。様々なデータを部署の枠を超えて共有することで、誰でも気軽にデータアクセスし、データに基づいた意思決定を出来る環境を整えています。
また、Python実行環境(ノートブック機能)が標準で用意されているため、特定の時間に特定のデータ更新・処理を行うことができます(データ鮮度向上)。誰でも簡単に環境構築できるのも、BIツールならではの強みといえます。
導入によって他部署からも「気軽にデータを見られるのは助かる!」といった声や「もっとこんなデータも見たい!」「こんな可視化表現は出来ないか?」といった提案をいただく機会が増えました。
更により良いGIS活用環境を目指して…
前章でお伝えした地図特化型のBIツールを導入することで、部署を跨いだ地図データの共有が容易になり業務効率も向上しました。一方で実現したいことの全てがBIツールで解決する訳ではありません。例えば同じGISであっても、可視化表現に関しては地図デザインのカスタマイズが容易なMapbox Studioは非常に面白いサービスです。データチームでもMapboxには日頃からお世話になっています。
シェアサイクルポートマップ © Mapbox, © OpenStreetMap contributors
また、移動軌跡を動的に表現する場合はDeck.glやKepler.glを活用しています。こちらはUber社により開発されたオープンソースのWebGISで、移動軌跡の可視化と非常に相性が良いです。#003の記事では Kepler.gl を使って地震発生後のシェアサイクルでの移動を可視化しました。
さらに、ローカルPC上ではQGISを活用して地理空間情報分析を行うことも多いです。プラグインを独自開発したり共有することが出来る点が魅力的です。当社が先日公開したGBFSデータも、既に閲覧用プラグインが用意されています(詳しくはFacebook QGISコミュニティの下記投稿をご覧ください)
データを活用するための環境整備もデータチームの役割です!
データチームではこのように、社内でデータをより扱いやすくする環境整備・構築を主体的に行っています。OpenStreetのデータ分析チームで地理空間情報を触り倒したい!といった方は、ぜひ一度カジュアル面談でお話しましょう。
◆HELLO CYCLINGのアプリはこちらから!一度登録しておけば、いざという時にスグ自転車を借りることが出来ます。