スカンジナヴィア・デザインを追う(3) アスプルンドの森の墓地、ローゼンダール・ガーデン (Stockholm, 2016.9)
□Day1(Thu.) Tokyo(NRT)→Helsinki Airport→Stockholm
□Day2(Fri.) Stockholm
■Day3(Sat.) Stockholm(本記事)
□Day4(Sun.) Stockholm→Helsinki
□Day5(Mon.) Helsinki
□Day6(Tue.) Helsinki
□Day7(Wed.) Helsinki→
□Day8(Thu.) Tokyo
この旅の動画はこちらからご覧ください。
ローゼンダール・ガーデンまでの道のり
よく晴れた朝、早起きしてローゼンダール・ガーデンを目指す。
鉄道でもアクセスができるが、せっかくなのでフェリーに乗ろう、行ってない島にいこう、ということでシェップスホルメン島経由で行くことに。
このシェップスホルメン島、のどかな雰囲気だった。ホテル シェップスホルメンというリゾートっぽい雰囲気のホテルがある。前を歩くのは60代とおぼしき男性三人組。ライダースジャケットがよく似合う。
こういう作風のものはみんなニキ・ド・サンファル作品に見える。
フェリーターミナルからローゼンダールのあるユールゴーデン島(動物の庭、の意)へ。
ユールゴーデン島のフェリー乗り場を降りると、遊園地が。グレーナ・ルンドという子供に人気の施設らしく、あたりは子供たちで溢れかえっている。
この遊園地やスカンセン(野外博物館。工業化以前のスウェーデンの様々な地区の暮らしを見せる場所であり、メジャーな観光スポット)を横目に、のんびりと散歩する。時間にして30分弱。
動物の庭、という由来どおり、鳥もリスもたくさん見かけた。
スウェーデンではこうした遊具をよく見かけた。
近づいてきた。
ローゼンダール・ガーデン
ローゼンダール・ガーデンに到着。
このりんごの木が茂る美しい庭園、ローゼンダール・ガーデンは、森の墓地と並んでどうしても訪れたかった場所だった。
詳しい説明は北欧フィーカさんのブログを読んでいただくとして、とにかく素晴らしい場所だった。スウェーデンで最も印象深かった場所、再訪したい場所は?と問われたら迷いなくローゼンダール・ガーデンを挙げるだろう。
数々の"北欧本"に取り上げられていたこのガーデン。素晴らしい空間のあまり、「これが地上の楽園・・」などとつい陳腐な言葉が口をついてしまう。
ランチとしてパンとサラダをいただくことにした。かなり高い。シビアな現実に引き戻されつつも、ここは楽園、夢の国。
小鳥がこぼしたパンくずを食べにきた。
思い思いにくつろぐ人々に加え、ウェディング前撮りと思われるカップルがいた。
撮り終えた瞬間真顔になっているのが面白かった(主に男性)。彼女の希望に付き合ってあげてるんだろうなという印象。
人の背中、特に家族の背中を眺めるのは良いものだ。
ローゼンダールから森の墓地までの道のり
帰り道、時間短縮のために水色のトラムに乗車。ローゼンダール・ガーデンから徒歩10分のところにバス停があった。15分ほど揺られ、T-Centralen駅(ストックホルム中央駅)で乗り換える。
走る人。車窓から撮影。トラムはのんびりと走行するので景色を楽しむことができる。
駅のホーム、滞在中に何度も見た広告。すごい顔で寝ている人々の写真。どうやらselectaというコーヒーチェーンの広告らしい。・・おそらくコーヒー飲んですっきりすれば、車内で寝てこんなおブスな顔を晒さなくて済むよ!という意図か。(わからない)
アスプルンドの"森の墓地"を目指し、ストックホルムの中心から南へ5km。最寄り駅「Skogskyrkogården(森の墓地)」駅で下車。
森の墓地
1994年に世界遺産にも指定されたこの森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン、Skogskyrkogården)は、約10万もの人が眠る共同墓地だ。グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェンツによって設計された"スウェーデンの近代建築史に残る傑作"とされている。
この墓地には、アスプルンド自身やスウェーデン出身のハリウッド女優グレタ・ガルボが眠っている。
20世紀初頭、墓不足で悩むストックホルム。1915年に新墓地建設のため行われた国際コンペで、当時まだ無名であった若き2名の協同応募案が選出された。アスプルンドとレヴェンツは同い年の友人であり、ともに建築家であった。
この墓地は、2人にとって、特に1940年に55歳で没するまで生涯をかけて取り組んだアスプルンドにとっての代表作となったという。
森の墓地の入口を入るとすぐに目に飛び込んでくる、この十字架は、花崗岩でできている。生命の循環のシンボルとして、1939年にアスプルンドによって造られたもの。
この十字架の裏手には、「森の火葬場」と3つの礼拝堂がある。年間2000件ほどの葬儀が行われているという。
実際に訪問をしてみて、102ヘクタール(東京ドーム約22個分)の広大な針葉樹の森の中に10万基以上が整然と並ぶこの場所は、スウェーデン人独特の死生観 - 「死者は森へ帰る」をよく表しているなとしみじみ感じた。
森を故郷、もしくは心の拠り所としているスウェーデン人にとって、死後に森に眠る・森に包まれて一体となるというイメージが安らぎをもたらしてくれるのだろう。
楡の木が植えられた、「瞑想の丘」。レーヴェレンツの設計だ。丘の上からは墓地全体を見渡すことができる。
個人的に、森の墓地で特に印象深かったのは、この「瞑想の丘」から「復活の礼拝堂」を結ぶ小道だ。この888メートルにもおよぶ小道は針葉樹の原生林を切り開いてつくられたもので、死者を弔う人々が故人との最後のお別れに向かう悲しみを癒すために設計されたものだという。
復活の礼拝堂は残念ながら閉鎖されており見学は叶わなかったのだが、悼む人の心を癒すための小道の存在に胸を打たれた記憶が鮮明に残っている。
後日、888メートルという長さはいかにして設計されたのか?と不思議に思って調べてみたところ、この墓地において8という数字はインフィニティループを意味しており、礼拝堂のランプの数など墓地のいたるところで8にまつわる数字が隠されているとのことだ。
森の礼拝堂。森の墓地で最初にできた礼拝堂。とても穏やかな佇まいだった。
暮石が映り込む場所の撮影は控えようと思ったが、1枚だけ。暮石は低く、花は花瓶ではなく土に植えられており、森に溶け込むように配置されていた。
ここは地元の人たちが足繁く訪れる場所でもあるようで、子供達が丘を駆け巡っていた。その光景をみると、涙がこみ上げてきたのだった。
夕暮れから日没のガムラスタン
夕方、海岸で日没までの時間を楽しむ。
夜のガムラスタンをそぞろ歩き。
ガムラスタンの食事は観光地価格で高いと聞いてはいたが、一度は食べたいよねということでカジュアルなレストランに入った。
バーの軒先では、即興での陽気な演奏会が繰り広げられていた。