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自己紹介と手術記録(オペレコ)について

自己紹介

オペ中です。おぺなかと読みます。おぺちゅうではありません。

地方の病院で外科医として働く医師です。

手術が大好きで外科医になりました。

専門は消化器(胃、腸、肝臓など)です。

担当する疾患は、消化器のがん、腹部救急疾患(虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞、消化管穿孔など)、ヘルニア(いわゆる脱腸)などが中心です。

つまりお腹の手術全般を担当しています

病気になって不安でいっぱいの患者さんが、安心して手術を受けて、そして元気に帰ってもらえるように日々励んでいます。

手術記録(オペレコ)とは

外科医は、手術後に公文書として必ず手術記録(以下オペレコ:ope-record)を残すことが義務付けられています。

オペレコには患者名、日時、手術時、術前・術後診断、予定術式、実施術式、そして手術内容の詳細を主に文章で記録しますが、文章のみでは表現しきれない部分はイラストにして残すことが外科医のお作法となっています。

外科医となってからの5年間、執刀した手術全て、文章のみではなくイラストを書き続けてきました。

5年間書き続けたことでそこそこのオペレコが描けるようになってきたと思っています。

なぜオペレコを一生懸命描くのか

「オペレコが上手いヤツは手術も上手い!」

と、かつての恩師が言ってました。

実際のところ、新米の外科医にとってオペレコを描くことは手術の上達につながると思います。

理由はいくつか挙げると

①イラスト化で手術内容や解剖がさらに記憶に定着する。

②手術の反省・振り返り、次回への改善点の発見・着想などといったフィードバックとなる。

③執刀した症例の特異な点や手術の工夫をイラストで他の医師と正確に共有し意見交換ができる。

などが思いつきます。

実際に手術がうまくなれたかどうかはさておき、少なくとも手術の上達の一助となっていることは確実です。

オペレコのデジタル化の恩恵

現在オペレコは完全にデジタル化(iPadのProcreateを使用)しています。

デジタル化の恩恵は凄まじく、紙とペンで描いていたものとは雲泥の差です。

上:手術記録書き始め アナログ

下:外科医5年目 デジタル (一部匿名化)

ざっと思いつくメリットだけでも、

①iPadとApple pencilさえあればいつでもどこでも描ける

②レイヤー機能により安定してきれいな着色が可能

③過去の記録の引用が可能

④参考となるイラストの模写も容易

など挙げればキリがありません。

外科医は全員iPadでオペレコを描くべき

と提唱したいくらいです。

オペレコを載せる目的

オペレコを描くことの大切さを語りましたが、実はオペレコを一生懸命描く外科医はわりと少数派です。

日常業務が忙しく、手術記録のために多くの時間を割けないからです。

通常、長時間の手術が終わった後もやることがたくさんあります。まずは摘出した検体(がんなど)を標本としてきれいに整えホルマリンに漬け病理検査(顕微鏡で診断するやつです)に提出、その後患者さんを診察してカルテを書いて点滴や検査などを準備し、残された業務(入院患者さんの回診や記録など)を一通り終え、ようやく手術記録の作成を始めます。

映画より長い手術です。その詳細をひとつひとつを思い出しながら文章化するだけでも、それなりの労力を要します。(似ている手術は過去の記録を一部引用することも多いですが。)

そして文章を書き上げた後、ようやくイラストを描き始めるわけです。

しかし苦労して描き上げたオペレコはカルテに保存されるだけ、患者さんが退院したあとはカルテ保管庫の中で大切にしまわれるのみです。多くの場合、二度と日の目を見ることはありません。(紙カルテの場合)

こういった背景もあり、実際のところ周りにオペレコに力を入れている外科医仲間はほとんどいません。正直とても寂しいです。

オペレコを一生懸命描くことが手術の上達の一助になることを信じてこれまで描き続けてきましたが、オペレコの良し悪しを評価する、オペレコ作成のテクニックを共有する場が少なくとも私の身近にはありません。

正直なところ、一人で黙々とオペレコを描き続けるのも少し疲れてきました。

今はまだデジタルでオペレコを描くことが楽しいと思えていますが、段々と作業感が強くなってきました。頭打ちといいますか。

そこで、noteに記録を残すことで、少しでも世の外科医はもちろん、イラストレーターなど非医療職の方々の目にも触れてもらい、オペレコへの意見やテクニックを共有したくさん刺激を貰えたらと思っています。

noteがオペレコ、メディカルイラストレーションに携わる皆さんと繋がる場になれば嬉しいです。

注意している点

オペレコは公文書ですので、そのままの形つまり個人名と疾患が特定できる形では公表できません。

ですので、オペレコは必ず匿名化し脚色を加えて載せていきます。

あくまで手術イラストとしてのオペレコの共有を目的としており、手術内容の公開や術式選択の検討などを目的とはしておりません。それは医学論文や雑誌で事足りています。

最後に

「イラストの素人が外科医として執刀した手術を全力で表現する場」

として暖かく見守っていただければ幸いです。

よろしくおねがいします。

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