見出し画像

iPadで描くオペレコ④

実は1週間ほど前から、主に手術イラスト関連の情報収集を目的にTwitterを始めてみたのですが、ある投稿(残念ながらオペレコとは関係なし笑)に想像以上の反響をいただき医療者・非医療者関係なく多くの方にfollowしていただけました。ある意味、手術のことや外科医のことを世に啓蒙出来たので、嬉しく思っています。暖かい応援も多数いただき本当にありがとうございました。

(一方で、同業からあっさり身バレしてしまい、好き勝手つぶやけなくなってしまったので少しがっかりしている次第です)

とにかく、noteから個人的な備忘録として始めたオペレコの投稿ですが、Twitterをきっかけに更に多くの人の目に触れるものになりました。オペレコのイラストに明らかな間違いがないか、個人情報が守られているかなど、今まで以上に細心の注意を払って今後も投稿を続けたいと思っています。今後とも宜しくお願いいたします。


さて、今回は先日よりTwitterで挙げていた「鼠径ヘルニア手術」のオペレコ作成手順についてまとめていきたいと思います。

症例:右外鼠径ヘルニア

術式:鼠径ヘルニア修復術(Lichtenstein法)

名称未設定のアートワーク

Twitterにも作成手順に沿ってある程度の解説を付けて投稿していましたが、具体的なところはなかったので図やテキストで解説を追加もしていきます。

あくまで私の自己流ですので、イラストレーターなど本職の方には全く参考にならないどころかツッコミどころ満載かと思います。絵の素人がいろいろ頑張ってやってるなーと温かい目で見守っていただければ幸いです。


作業環境と流れ

作成環境はiPad pro 11inch(2018年モデル)+Apple Pencil(第2世代)。本体にはペーパーライクフィルムを貼っています。

使用アプリはProcreateです。

作成手順の流れについて解説しておきます。

①下書き→②線画→③色塗り→④仕上げ

この手順で進めています。

自分としては②線画に一番時間がかかります。色塗りと仕上げは慣れればさらりと終わることが出来ます。


①下書き

名称未設定のアートワーク 2

私は下書きに「鉛筆」のブラシを使用しています。

いままでのアナログでの手術記録作成の頃と同じように鉛筆でザクザクと描きたい絵を描きます。

デジタルですので後でいくらでも修正は効きます。

細かいことは考えずに、

・「このあたりにこの絵を置こうかな」

・「この場面は少し強調して描きたいな」

みたいに思うがままに描いています。

だいたい描き終えたら、右上のレイヤーを開いて、下書きの上に新規レイヤー(線画)を乗せます。このレイヤーの機能はデジタルでのイラスト作成の最も特徴的かつ重要なところなので、よく慣れておいてください。

そして、下書きのレイヤーの「不透明度」をだいたい30%程度に落としておきます。

画像3

こんな感じです。そうすることで、次の線画の作業の際に下書きが邪魔しません。

線画」のレイヤーに作業スペースを移して次のステップに進みます。

②線画

名称未設定のアートワーク 3

個人的にはここが一番大事なステップと思っています。

使用しているブラシは「製図ペン」です。ブラシの太さは7-8%が好みです。描く場所によって線を太くしたり細くしたりしても面白いかもしれません。自分はまだそのあたりは研究中です。

下書きをもとに、納得の行く線画を仕上げていきます。

画像4

メッシュが挿入されている様子をレイヤーの機能を用いて表現していきます。

まずはメッシュを別のレイヤーで作成。メッシュの線は手書きはめんどくさいので、ブラシの選択→テクスチャー→「グリッド」を選択し、適当に目を調整して塗ると簡単です。

画像6

グリッドで塗ってメッシュを作成して、線画のレイヤーに重ねてメッシュの皮下に潜り込んでいる部分を軽く消します。

画像7

こんな感じ。

このあたりのレイヤーを駆使した層の表現は、例えば横行結腸にかぶせる大網の表現、肝臓の中の脈管の表現などいろいろと応用が効くと思います。このあたりもまだまだ研究中のところです。

次に線画をもとに色を塗っていくわけですが、塗りながら線画を付け足すことも消すことも簡単なので、完璧な線画の完成は目指さずにぼちぼちにところで色塗りに移っています。


③色塗り

画像8

線画で労力を使ったと思うので、色塗りは細かいことは気にせずざっくり塗っていきましょう。

新しいレイヤーを線画の下に作成して塗ります。

線画の上に塗ってしまうと、線画が色に隠れてしまいます。

画像9

使用するブラシは「ソフトエアーブラシ」を愛用しています。ブラシの太さは塗る場所に応じて適宜調整。

塗りのポイントは、

・細かく塗りすぎない

・色ごとにレイヤーを分ける

の2点です。

皮膚なら皮膚を一つのレイヤーに完結させておきます。

一つのレイヤーに皮膚も筋肉も血管も全て描いてしまうと、あとからの調整がなかなかめんどくさいです。

塗るときは、えいっ!っと勢いよくざっくりと色を乗せて

画像10

消しゴムできれいに消す。

画像11

これをざくざくと繰り返すだけです。昔、ボールペンと色鉛筆で作っていた頃に比べたら、労力もクオリティも段違いです本当に。

画像12

こんな風にレイヤーごとに名前をつけておくと整理ができていいかもしれません。自分は慣れてきて今では名前もつけずに進めてしまっています。

色ごとに臓器ごとにレイヤーをざくざく作って塗っていきましょう。最後に線画が一番上にあるようにしておくようご注意ください。

臓器の位置関係によって、レイヤーの位置を調整しても面白いですね。(腸管や腸間膜は上、後腹膜は下、などなど)

塗りが終わればいよいよ仕上げです。

④仕上げ

名称未設定のアートワーク

色塗りだけではただの手術イラストになってしまうので、手術記録らしさを出すために注や矢印を入れていきます。

これも別のレイヤーを「テキスト」や「矢印」などの名前で作成し、主に一番上に置いています。

画像14

こんな感じ。

「線画」とその他の色塗りのレイヤーをグループ化しておくと、いろいろと楽かもしれません。

テキストを描くときに「少しイラストをずらしたいなあ」とか思うことが出てくると思います。そんなときは、グループを選択した状態で、左上の「選択ツール」で動かしたい部分を選択し、隣の矢印をタップ。

画像15

画像16

こんな感じです。この部分を自由に拡大縮小や移動させることができるようになります。通常は一つのレイヤーしか動かせないのですが、グループ化のおかげでレイヤー全てを同時に動かせます。

臓器の名前、切離するライン、縫合に使用した糸、手術のポイントなどなど。必要なことをできるだけテキストで書き込んでいきます。

あ、手書きのテキストを描くときに、左上のスパナマークから「描画ガイド」を使用すると、文字の大きさや水平が安定しておすすめですよ。

画像17

書きたいことを好きなだけ書き込んだら、最終調整をしておしまいです。


おわりに

冒頭に述べたように、あくまでこれは自己流かつ絵の素人のやり方であって、もっともっといい方法が世の中にはたくさんあるかと思います。

もっと基礎的なところやもっと応用的なところは、youtubeにめちゃくちゃわかりやすい動画を挙げているyoutuberの方がたくさんいらっしゃるので、ぜひご参照ください。自分も描きはじめのころはyoutubeでちょこちょこ勉強していました。

procreateにはまだまだ知らない便利な機能がたくさんあるようです。それらがオペレコの作成にどのように役立つか、自分もまだまだ研究中ですので、今回紹介したこと以外に良い手法をご存じの方、見つけられた方はぜひコメントで教えて下さい!!

あと、今回の鼠径ヘルニアの手術記録は研修医の先生からのリクエストから描いたものです。最近、早くも少しネタ切れ感もあるので、描く手術のリクエストをいただけるとありがたいです!!作成過程をTwitterに挙げていきます!!!

ではまた!

いいなと思ったら応援しよう!