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ショートショート_不動像

夜、フランスのある美術館、
そこは、閑散とした空気を纏っていた。
そんな空間で場違いに銅像たちが光り輝き出した。
銅像たちは戸惑いと歓喜で満ち溢れた。
「動ける?」
「ああ、動けるぞー!」
銅像たちは自由になり、美術館から出ようとする者までいた。
そんな中、動かない銅像がいた。
「こいつはなぜ動かないのだ?」
銅像が訝しんで言った。
「おい、動けないのか?」
それは、ピクリとも動かず、黙ったままだった。
銅像たちが疑問に思っていると、カツン、カツンと
足音がした。
「警備員だ!ここから出るぞ!」
銅像たちは一目散に逃げ出した。
カツン、カツンと数回繰り返した後、警備員は暗闇を照らした。
「あれ?ここにもっと銅像があったはずだぞ!なんてこった!」
そう言ってまた、カツン、カツンとさっきとは違った焦りを混じえた音を立て嵐のように過ぎ去って行った。


美術館は、再び威厳ある空気を取り戻した。
そこには銅像がいた。
座って、左ひじと右ひじを左ひざに、右の拳をあごにつけていた。
深刻そうな顔をしている自分を観ているような様子だった。
その銅像は動けなかった。










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