
27歳の初心者サイクリスト、50代のおっちゃんたちに洗礼を受ける②
40km中の15km地点で両脚を攣った私に気づくことなく、先頭集団は進み続けます。遠ざかるテールライトに焦り、必死に追いつこうともがくも差は広がるばかり。
そこから先はひたすらに自分との戦いでした。
残り25km。どうやって走り切ろうか。
市街地から離れ、木々や湖の静けさに心休めるどころか、ここで走れなくなったらと思うとその暗闇の静けさに不安でしかなかったです。
後ろには店長さんと、私と同じMISTRALのおじさんがついていてくれました。
でもそれがなんだか居た堪れなくて、いっそ置いて行ってもらって、1人でのんびり帰ろうという気持ちも一瞬ちらつきます。
しかし、そこでスマホを持ってきていないことを思い出し、土地勘のない場所で1人になることを考えると、走り続けるしか道はないのでした。
そんな中、信号で止まり私と店長さんとMISTRALのおじさんの3人になった時、正直に「両足攣りました!」と告げると、MISTRALのおじさんが何やら秘薬があると、ポーチから2錠の錠剤を手渡してくれました。
後に判明するその錠剤の正体は、2RUNという足攣りの一因であるミネラル不足を補うミネラルのタブレット。

加えて、
「速く進むために重たいギアでペダルを踏むと、脚への負担が大きいから、軽いギアでその分、ペダルを多く回すといいよ。」
とアドバイスをもらいます。
早速タブレットを口に含み、ギアを数段軽くし再開すると、先ほどより脚が楽になった実感がありました。
そこから1kmほど進むと、先で待っていてくれた先頭集団と合流します。
待たせてしまった事情を説明すると、先頭集団の方達は
「はじめはそんなもんだよ!むしろ付いてきたらプロだよ」
と笑い飛ばしてくれたのでした。
ホッと一安心したのも束の間、
「ここからが本番だよ」
と、残り20kmの道をすぐさま再開すると、これまたすぐに引き離されます。
「こちらの状況を分かった上で置いていくなんて酷いじゃないか!!」
と先頭集団のおじさんたちの背中に声なき声をぶつけることしかできません笑
みかねた店長さんは後ろから私の前に出て、ペースを落とし先導。
MISTRALのおじさんを先に行かせると、そこからは真っ暗な夜道を店長さんのテールランプを頼りに進んでいくのでした。
秘薬のおかげで多少マシになったとはいえ、依然としてちょっと強い力をかけると走る痛みに、冷静さを失い、フォームが崩れそうになる。
それをどうにか保てるよう自身への意識も忘れないようにと必死に漕ぎ続けること1時間。
40kmという、途方もないと思っていた距離を走りきったのでした。
「どれだけ必死でカッコ悪くてもやり切った。」
苦しすぎて後半の記憶が定かではないですが、やり切った事実をこの上なく喜びに感じたのでした。
途中、あんなにキツくて、もう無理だと何回も思ったのに、ゴールして飛び出た第一声が、
「気持ちよかった!」
なのですから、なんとも不思議で衝撃的な体験です。
帰宅後にベッドで横たわって感じた全身筋肉痛の感覚は今でも忘れることができません。