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第97話 さらばS字結腸①

S字結腸とは大腸(結腸)の一部である。

左下腹部にある。腰骨から体の中心に横に伸びている。真っ直ぐ伸びているのではなく、Sの字を斜めに傾けたような型をしている。
長さは40センチくらい。長いと50センチの人もいるそうだ。
大腸(結腸)の1番下の部位で直腸の上。機能は他の結腸で水分を吸収された雲子を一時溜めておく。
他の大腸はヒモがあり固定されているが、こいつはヒモが無いので丸まってトグロ巻いたり、捻れたりするらしい。

このS字結腸を切除する。

自分のS字結腸は数十年にわたり下降結腸から送られてくる雲子を千本ノックのように

「ドンと来いや〜」とか「バッチ来〜い」

と受け止め続けた挙句、遂に経年劣化により病魔に冒されてしまった。
内容物の圧力に耐え切れずに小さな風船のような出っ張りが無数に出来てしまい(憩室)、炎症から問題を起こすようになってしまったのだ。
(大腸憩室炎と言う)

数ヶ月前に人工肛門をつくりS字結腸にはお休み頂き、炎症を治療した。炎症起こしている状態で手術すると予後が悪いためだ。

今回炎症の治ったS字結腸を文字通り切り捨てることにしたのである。

人工肛門を閉鎖して肛門から雲子を出すに際し憩室があるS字結腸を残しておくと憩室炎を再発する恐れがあるからだ。
腐ったミカンを放置しておくと、他のミカンまでダメになってしまう。(酷い言い方である)

今まで文句の一つも言わずに頑張って来た者を弊履の如く捨て去ってしまうのだ。

冷酷もここに極まれり。

役に立たなくなったと判断した佐久間信盛や林通勝を放逐する信長のごとくである。

切り取られたS字結腸は医療廃棄物としておそらく焼却の運命である。本体なら葬式をあげてもらえるが、S字は経のひとつもあげて貰えず一輪の花を手向けてもらうことも無い。

自分の身体の一部である。かつまた長年の功労に報い、一掬の涙を注いでもバチは当たらんだろう。


と思っている。


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