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第34話 露腸亭日乗 INTERVIEW WITH OSTOMATE 山岳篇2


身の程知らずの露腸亭が山について蘊蓄を傾ける 続き

露腸が「大変ですね」という言葉に激昂してしまい、一時中断した。今回はその続き。

【露腸】
興奮してしまって申し訳ありませんでした。
「大変」という言葉につい、カッとなってしまって。

普段から
「ストーマは大変じゃない」

と言い続けていて、先程の自分の言動の中に矛盾があるのを気がついていたんですね。
それでつい過剰に反応してしまいました。

なぜ山に登るのか

ーー大丈夫です。

では続けましょう。
山に登るスタンスというか、目的ですね。
ピークハントや純粋にプロセスをたのしむ、あるいは体力増強など色々あると思いますが、露腸さんの場合はいかがですか?

【露腸】
登る理由は人それぞれです。

1番多いのは自己実現というか、自己肯定ではないかと自分は思ってます。

頑張った自分を褒めてあげたい。
これじゃないでしょうか?

自分の場合、単純にただ楽しいからでいいと思います。
天気悪ければ絶対行かないし、今日はもういいやと思ったら計画変更して途中で引き返す。

石段登ってトレーニングしてるのも、本番で辛かったら楽しくないから。

疲れて行動不能になったり、転倒して怪我したら本末転倒です。

だから山に行くのは9月から11月にかけてが多いですね。6月は雪残ってるし、真夏はクソ暑い中登山口までの移動がウンザリだし、雷怖い。
秋は天気読みやすいですから。

「物見遊山」という言葉がありますが、スタンスはこれですね。

ピークハントはあまり関心ありません。

栃木の那須岳には何回か行ってるのですが、百名山の対象になっている茶臼岳には登ってないです。
理由は一番近い登山口のロープウェイ駅への道路と駐車場が混んでそうだから。それが大きいです。

ーー百名山踏破とかは考えない?

【露腸】
体力的、技術的に無理だと思います。
年齢も。
健康寿命はあと10年ないと思ってジタバタしている状況ですから。

オストメイトになって登ったのは二座なので、残り98座。これはさすがに道のり遠過ぎです。

諦めたらそこで試合終了ですよ

という声が聞こえますが勘弁してください。

カネ、時間、体力それに1番必要なのは強い意志だと思います。最初の三つは何とかなるにしても、最後のやつが問題。
意思が弱い人間なのは、よーくわかってます。

普通の方でも百名山完登したら偉業、スゴイことなんです。
北海道の最北端から鹿児島の屋久島まで、ほぼ日本全国にある。
旅費を考えても一体いくらかかるか。

登頂に失敗する事もあるはずだし。

山を趣味にしてる人達からは尊敬してもらえますが、関心がない人に言っても

「あーそうですか」で終わってしまうかもです。

さっき自己実現、自己肯定と言ったのはそういうことです。

百名山完登したら、もしかすると初めての人工肛門造設者での完登になるかもしれませんがやる気ありません。

第一、富士山には行きたいとは全然思いません。遠くから見るのは好きです。

タイトルの写真は伊豆の金冠山から。
この時も本当は達磨山に行く予定だったのですが、登山道がグチャグチャの情報があり富士山のキレイな写真が撮れたのでここで試合終了となりました。

片脚で百名山完登を目指している方もいらっしゃいます。
それに引き換え自分は‥という忸怩たる思いはあります。

NHKのBSとか、山と渓谷社から、「オストメイト 百名山へ挑戦」という企画のオファーがあったら考えてやらないでもない。

萩原さん同じ栃木県出身のよしみで、ご一考のほど。

でも、やらないだろうな。


根性無しとかヘタレと言われようが、

一向にかまわんっっ

ーー勝手に締めないで下さい。

百名山に対する複雑な想いはよ〜くわかりました。レポートでは奥様とご一緒に行かれているのが多いようですが、大事にされてるんですね。

【露腸】
最後の質問に関してはノーコメントです。

山登ったあとは、温泉入ってビール飲みたいので、車で3時間くらいのところだと温泉泊まります。そうなると2人ですよね。

それにストーマなので、普通の山小屋とか避難小屋はハードルが高い気がします。

尾瀬なら水洗トイレあるし、入浴できるので、今後も行くと思う。

日本人と山の関わりとして、山は信仰の対象だった。
修験は山中を駆けるのが修行だし、叡山の千日回峰行も有名ですね。

江戸時代の庶民は富士講とか大山講といってガイド付きの団体登山をするんです。
無事登頂して、下山すなわち御参りが終わると精進落としと称して宴会をする。風俗行ったりすることもあったようです。
さらに帰って来ると「山祝い」と称してまた宴会する。

自分はこのDNAを強く受け継いでいるのではないかと思ってます。

サイのツノのごとく1人歩め

ーーサークルとかグループ、山岳ツァーなどは利用しないのですか?
バスでの移動等、いろいろお膳建てしてあるので、楽なんじゃないですか?

【露腸】
ゴンドラの料金が含まれていたり、宿泊と運賃だけで自由行動が多いようなパック旅行はよく利用します。

何かのグループや登山サークルに入いるのは考えてないです。
自分くらいの年になると新しい人間関係を構築するのは少々億劫。

既存のグループに入り込むのは正直しんどい。

グループ内の相関関係を理解するのにエネルギー使いそうですし。

「年寄りの特権じゃあ」とか言って訳のわからんこと言って他の方に迷惑かけるのもカッコ悪い。

それに体調悪くなったり、ペースが合わなくて他のメンバーに迷惑かけるのは嫌だ。

1番大きいのは理由は自分のペースで歩きたい。計画段階から全部自身でやらないと気が済まない、というか。

グループの登山になると、全部おんぶに抱っこという方がいらっしゃる。
酷い人だと今日登る山の名前を知らない、なんて方に会ったことあります。

生死に関わることもあるスポーツなのに、それこそ「生殺与奪の権」を他人に委ねといて平気というか、その意識もないかもしれない。

はぐれて道に迷ったらどうするんでしょうね。

ご一緒したいとは思わない。

こんなこと考えると無理に同行者と行くより、1人の方が楽なんじゃないか。

高齢の男性の単独行が多いのはこういったことではないかと想像してます。

高齢の男性は自己を恃む意識が強い、というより、他人との関わりに不器用、消極的ではないか?と思うわけです。

60代以上の山に登る男性は新田次郎の「孤高の人」を読んでいる確率が高いと思います。もしかしたらその影響があるのかも知れません。

加藤文太郎については谷甲州が「単独行者」で取り上げています。読み比べてみると面白いですよ。



ーー露腸亭主人の話が長くなりそうなので、この辺で終わりにします。

以下オマケ 素材に使ってください

尾瀬
八幡平
黒岳ロープウェイから








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