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❄️雪の温もりと小さな自信
今年の冬は、日本海側では大雪となりました。
雪国で育った自分は、冬が近づくと大好きなスキーがしたくて、早く雪が降らないかとしょっちゅう寒空を見上げていたことを思い出します。
元々スキーはそれほど得意ではありませんでしたが、父が30代後半でスキーを始めたのをきっかけに、一緒にゲレンデに行くようになりました。
確か小学校4年生のとき、それまで長靴スキーしか持っていなかった自分に、初めて本格的なスキーとスキーブーツを買ってくれたときは、あまりの嬉しさに感動したのと同時に、経済的にそれほど余裕がないと子ども心に思っていた自分は、こんなに高価なものを買ってもらって申し訳ないという気持ちになったことを憶えています。
そして、そのスキーを履いて初めてゲレンデの一番下の緩い斜面を滑ったとき、それまでの長靴スキーとは全く異なる感覚で、操縦不能で曲がることができず、目の前の方にぶつかって転んで泣いてしまいました。
それまでの自分なら、そこでくじけて逃げ出すタイプですが、なぜかその日の夕方にはリフトに乗って、ゲレンデの上から何とか転ばずに滑り切ることができるようになっていました。
どうやってそこから立ち直って、滑れるようになったのか記憶はありませんが、もしかしたら、高価なスキーを買ってもらった高揚感と責任感が、次の行動に導く原動力になったのかもしれません。
長い板に両足を固定して雪の斜面を滑走するという非日常的な状況で行うスキーは、難しいがゆえにコントロールできた時の達成感は、格別なものがありました。
何事にも自信を持てなかった自分が、スキーが滑れるようになったことで、人生で初めて何か自分の力で達成できた、自信のようなものをつかんだ瞬間だったのではないかと思います。
スキーがもたらしたもう一つの恩恵は、父との関係でした。時代のせいもあるかもしれませが、自分にとって父は怖い存在で、あまり会話もできない関係でした。
それが毎週末スキーに連れて行ってもらうようになり、お互い上達の喜びを共有し、技術的な会話をしながら一緒に過ごす時間が持てたことで、はじめて父との距離感が縮まり、以前よりも気軽に話せるようになりました。
人は誰しも、何かのきっかけで少し自信が持てたり、人生を積極的に前に進めてくれたり、後押ししてくれるものがあるのだとすれば、きっと自分にとってはそれがスキーだったのだと思います。
土曜日の夜は、翌日のスキーのことを考えると興奮してなかなか寝つけなかったものです。ベッドから見る外の景色は、雪あかりでぼんやり明るく、雪がしんしんと降っていました。
雪が全ての音を吸収して包み込むあの独特の静寂さは、不思議な温もり感があり、ワクワクした気持ちを抱きながら、いつしか眠りについていました。
だから、僕にとって雪は温かい存在なのです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。