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東の果てで気づいたこと~根室→釧路②
羽田空港07:40発のAIR DO 71便で釧路空港に到着したのが09:20ごろ。
釧路空港09:40発の阿寒バス・釧路市役所前行で釧路駅前に到着したのは10:16だった。
そこから釧路駅11:15発のJR快速ノサップで根室駅(13:26着)に向かう。
さらに根室駅前13:35発の根室交通・納沙布線に乗り、終点の納沙布岬にたどり着いたのは14:19。
もっというと自宅の最寄り駅から羽田空港行きのリムジンバスに乗ったのは05:59なので、実に8時間超えの長旅となった。
しかし、すべてはここからはじまるのだ。
■日本の本土最東端の地、納沙布(のさっぷ)岬■
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そして
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いや、そう書いてあったし(汗
最東端か、気分いいなあ。
人が立ち入れるぎりぎりまで寄ってみよう。
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もちろん本土最東端の灯台
この裏側まで行けそう
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3.7km先に歯舞(はぼまい)群島が見えるはずだけど、天気いいのに今ひとつガスってる
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なんかいいなあ
それにしても、この場所。
いたるところに北方領土返還を祈念する碑が建てられている。
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および
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2つの施設は内部でつながっている
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■北方領土問題に思う■
ちょっと長くなるよ。
俺の学問ベースは大学と大学院で学んだ心理学だ。
記者をつとめていたのは武道および格闘技の専門誌。これらが得意分野となる。
国際政治だとか経済だとかはとんと疎い。
数学は苦手で赤点以外取ったことはないが、心理学で統計数学を学んだおかげで数字は印象操作できることがわかった。
だから、説得の材料として数字でしか物事を語れない奴を俺は信用しない。
大切なのはハートだ。人間の心なんだ。
国家百年の計という言葉がある。
本来の意味を離れてひとり歩きしている感もあるけど、おおむね国というものは、為政者が無能であろうとも百年先の存続を考えて、いろいろと準備している。
百年先の権益を考えるから、領土問題は早急には解決し得ない。これが結論。
共同声明を遵守して1997年に香港を中国に返還したイギリスの態度は公正だ。同じく1999年にマカオの主権を委譲したポルトガルもしかり。その後のことはまあ。
領土問題を早急に解決する手段がある。戦争だ。今、ロシアとウクライナがやり合ってる。
しかしながら、戦争が愚かで悲劇的な結末しか生まないということは、被爆国でもある俺たち日本の民は知っている。
そんなカードは切らせないし、切らせてはいけない。
だとするならば、国際法にもとづいて粘り強く交渉し続けるしかない。
どんなに無法でならず者であっても、法には勝てない。いつだって、人を裁くのは法律だ。
どこぞの国が日本の領土を99%実効支配しようとも、100%奪えるわけではない。
なぜか。国際法があるからだ。
北方領土資料館で、北方領土問題に関する資料が何点か配布されていた。
荷物が重くなるけど持ち帰って読ませてもらった。
返還のチャンスは1956年、日ソ共同宣言署名の際にあった。
旧ソ連との外交関係回復と平和条約の締結に向けての署名であり、歯舞群島および色丹島の返還(引き渡しに関する条件付きの同意)なども盛り込まれていたようだ。
これは、その後の旧ソ連の態度硬化により反故にされてしまう。
個人的には、旧ソ連崩壊によるロシア誕生時にもチャンスはあったのではないかと思っていた。
1991年10月当時、中山外相がモスクワを訪問し、エリツィン大統領に北方領土問題の解決および平和条約の締結の必要性を改めて求めた。
その後、同大統領によるロシア国民への手紙において指摘されていたのは、日本との関係における最終的な戦後処理の達成の必要性だった。
これが本質だと思う。
ロシアにとっては、日本との戦後処理はいまだ片づいてはいない。いまだに日本は敵性国家なのだ。
四半世紀近い時が過ぎたにも関わらず、この状況はなんら変わってはいない。
この問題が解決されるには途方もなく時間がかかるということが、これでおわかりいただけるかと思う。
俺が生きている間には、ちょっと無理そう。
■色丹(しこたん)神社■
俺は俺が生きている間に、自分の仕事をやり遂げよう。
四島における庶民の信仰の痕跡は残ってないのかな。
ん? なんだ、これは。
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(4分の1サイズのレプリカ)
北方領土資料館の展示より
説明文を引用する。
色丹神社には、戦前1038人の島民がおり、9の神社が存在していたことが確認されています。
色丹神社には、シロナガスクジラと思われる顎骨と肩甲骨を使用した鳥居が築かれていました。
捕鯨が行われていた地域では、鳥居の門をはじめ様々な建築物にクジラの骨を活用しており、当時の暮らし・文化をうかがい知ることができます。
鳥居は神域の目印であり、外界との間に設けられた結界を意味する。
そこにクジラの骨が用いられるということは、クジラが神の使いであるというよりも、人以上の存在(≒神)としてあがめられているということでもある。
考えられるのは、アイヌの思想だ。
動物を神として大切にしている、アイヌの影響が見受けられる。
別の理由だったりするかもしれないので、そういう可能性もあるとしておこう。
もう一つの説明文には北方領土の神社について記されていた。
要約すると、
・北海道と北方領土を結ぶ基点でもある根室に金刀比羅神社が創建されたのは文化3(1806)年
・北方領土の神職は国後島に1名のみ。歯舞群島の例祭には根室から神職が出向いた
・ソ連の不法占拠後、四島の島民が必死に守った11社の神体は根室金刀比羅神社に預けられ、各例祭日には祭典が営まれている
すごい情報じゃないか。
ご神体は原則として非公開だろうし、今日は例祭とは関係ない。
でも、島民が命がけで守り抜いたご神体を祀る神社だ。何があっても根室金刀比羅神社に挨拶しに行くぞ。
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本土最東端の神社である
へえ、そうなんだ(笑)
■根室金刀比羅神社へ■
一つ、問題がある。
根室金刀比羅神社が鎮座するのは根室市琴平町。
根室駅に向かうバス通りからは最短でも約3km離れている。つまりは往復6km。
今回は輪行ではない。6kmの道のりをどう移動するか。
根室駅前観光案内所でレンタサイクルを借りることもできる。
だが、貸出時間は16:00まで。
納沙布岬15:10発のバスに乗って、駅前ターミナルに到着するのは15:54。アウトだ。
さらに釧路方面に向かう高速バス・ねむろ号の発車は17:40。
これに乗らなければ宿泊先への到着が大幅に遅れてしまう。
バスの車内で必死に検索して、レンタサイクルをやっている旅館があることがわかった。
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「すみませーん。自転車をお借りしたいのですが」
主人が出てきた。
「かまわないですけど、つい最近まで警察に止められてたんですよ。クマが出たから」
「クマ、ですか?」
「クマです」
どうする?
もちろん答えは一つだ。
「金刀比羅神社に行って戻ってくるだけです。お願いします」
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6段変速のグリップシフターながらシフトチェンジは軽快に決まるし、太いタイヤとあって走破性もいい
これならいける!
道道35号を爆走し、金刀比羅神社の鳥居をくぐったのは16:21。
早足で拝殿へと向かう。ところが……
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なんと間が悪い
こちらの姿を見た社員の一人が場所を譲ってくれた。
音を立てずに拝礼し、早々に立ち去る。
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神馬ちゃん。丸金マークはこんぴらさんの証
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爪や牙などの細かい彫像技巧が光る
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昭和10年に作られたものを改修しながら現在も使用
令和6年の例大祭は8月9日(金)~11日(日)
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宗像三女神の市杵島姫神は弁天さんと習合している
弁天さんといえば龍
金刀比羅神社の祭神でもある大物主神は蛇体の姿を持つ
案外この地に祀られているのは龍神なのかもしれない
自転車を返却して、徒歩で駅前ターミナルのバス乗り場まで行かなければならない。
時間はあまりなかったが、チケットを前もって購入しておいたおかげでスムーズに乗車できた。
17:40発の高速バス・ねむろ号で釧路駅前に着いたのは20:10。
駅前の定食屋で遅めの夕食を食べて、宿にたどり着くころには21:00を過ぎていた。
疲れた。
でも、予定外の移動にも臨機応変に対応できたことで達成感はあるぞ。
■読み手のみなさんに向けて■
北方領土問題がいかに解決困難であるかが、おわかりいただけたかと思う。
それでも声をあげ続けることは重要だ。
残念ながら関東に住んでいると、この地ほど北方領土問題を切実に訴える声は響いてこない。
心理学の話をさせてもらおう。
ある一定の刺激にさらされ続けると、人間はその刺激に慣れきってしまい、反応ができにくくなる傾向がある。これを馴化(じゅんか)と呼ぶ。
「北方領土はわが国固有の領土である」
よく聞く言葉だ。そして馴化してしまい、右の耳から左の耳へと聞き流してしまう。
日本の民の問題意識を高めるためには、刺激強度を変える必要がある。
竹島や尖閣諸島の領土問題が深刻化し、近年は「実効支配」なる言葉が一般化している。
こんな意味不明な用語を書き手として認めているわけではない。
それでも、周辺諸国に配慮して略奪行為という文言が使えないのであれば仕方がない。
先ほどの言葉を、刺激強度をいじって、こんなふうに変えてみた。
「現在ロシアが実効支配する北方領土は、わが国固有の領土である」
どうかな?
これは『2023年版 われらの北方領土』(外務省)を作成したスタッフさんに向けて書いてる。
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外務省HPからもダウンロードできるぞ
①でも書いたけど、俺がやるべき仕事は、いにしえの庶民の信仰の痕跡をたどることで、日本人の心を読み解くこと。
読み手のみんなに向けては、ソ連軍の侵攻により生命の危険が迫っていたにもかかわらず、神社のご神体を守り抜いて、いのちからがら脱出してきた人々がいたのだということを、記憶の片隅にでもとどめておいてほしい。
俺は、忘れない。
[2日目は観光バスの旅 ③につづく]