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東の果てで気づいたこと~根室→釧路④

13:00 阿寒湖温泉

最終目的地である阿寒湖に到着。ここでの滞在時間は2時間。

観光客向けに飲食店、みやげもの屋、日帰り温泉などが軒を連ねる。

いわゆる自由行動の時間でもある。

旅をするにあたって参考にしているのが谷川健一編『日本の神々 神社と聖地』シリーズ全13巻(白水社)だ。

関東編(11巻)の香取神宮の項では、本来の祭神をめぐって大和岩雄さんが菱沼勇『房総の古社』を名指しであげて「このような具体的比定を私は採らない」とか岩雄節を炸裂させていて笑う。

大和岩雄さんも亡くなっちゃったんだよなあ。

とても、どころじゃなく素晴らしい本をたくさんお書きになられている。

古事記の序文が偽書であると『古事記成立考』で世に問うたら各方面からやいのやいの言われたことを晩年まで気にされていた。気にすることないのに。

語る機会があれば、その業績についてもふれてみようと思う。

問題は12巻の東北・北海道編だ。

①でも指摘したように、北海道の面積は東北6県の合計面積よりもさらに広い。

にもかかわらず、北海道編で割かれた紙面は50ページ足らず。全386ページの7分の1にも満たない。

内容はというと、アイヌ文化の一側面としてとりあげたカムイエロキヒ(十勝郡池田町)についての小論と、北海道における神社信仰の概論の2点のみ。

これ読んで、北海道の聖地すげえとか、この神社に行ってみよう、とはならない。

依頼された執筆者にはまったく非はないが、編集意図に偏りがあるといわざるを得ない。

北海道における神社の創建は明治の開拓期以降が主で歴史も新しく、式内社なんて当然ない。

(※平安時代に編纂された『延喜式』によって官社と指定された神社。要するに古ーい神社)

そんなに式内社が大事ですかね。

北海道の神社や聖地の素晴らしさについては、地元のブロガー諸氏のほうがよくまとめてくれていると思う。

俺が何かを書いたところで屋上屋を架して地上波アンテナまでつけ加えることにもなりかねないが、せっかくなので庶民の信仰の痕跡をたどってみよう。

まずは阿寒湖。

名前の由来については釧路市HPの解説が一番詳しかったので引用する。

阿寒という言葉の由来はアイヌ語でも諸説あり、阿寒湖に島(チュウルイ島など)があることを、湖に穴が開いている様に見立て「アカム」と呼んだという説、「ラカン」(ウグイの産卵の意)に関係するという説、地震のとき雄阿寒岳が動かなかったことから、アイヌ語の「アカン」(不動の意)に由来するという説があります。

阿寒湖から雄阿寒岳を臨む
動かざること山の如し
スカイダイバー(スワンボートでは断じてない)がこんなところにも
遊覧船で周遊もできる。所要時間は85分
遊覧船の名前がなぜか「ましゅう丸」
遊覧船運航航路図より
マリモも観察できる(15分)らしいぞ

湖に浮かぶヤイタイ島には白龍神王を祀る祠があるという。

そりゃいるよな、龍神。

参拝した人のブログによれば漁船をチャーターして向かうのだそうだ。

2時間の自由行動ではちょっと無理だな。ぶー。

ふてくされて阿寒湖畔エコミュージアムセンターでマリモなど見る
まりもっこりをデザインした人物の品性について思いを馳せ
コロポックル像と猫ちゃん見てたら機嫌直った☆

この近くに阿寒岳神社があるらしい。行ってみよう。

13:20 阿寒岳神社

創建は明治38(1905)年
祭神は大山祇神、大国主之大神、少彦名之大神
山の神もいらっしゃると
拝殿
雪にも強い仕様とみた
神額

こんなふもとに山の神が祀られているってことは、雄阿寒岳の山頂辺りに奥之院があるのかな。

調べてみるとそうではなく、この近所にあるようだ。

当然、行く。

奥之院は先ほどマリモを見たエコミュージアムセンターの近所だった。

13:35 稲荷神社

あれ、稲荷神社だ。

そして昨日(根室金刀比羅神社)に引き続き、先客あり。

シカくんたちである

どうするかな。

もぐもぐタイムの最中にずけずけと入っていくほどデリカシーのない奴ではないぞ、俺は。

少し待っていたら、道を空けてくれた。

鳥居をくぐると
耐雪仕様の赤い社殿
中に小さな祠が鎮座する

その奥にも何かある。

白龍神王だって!?

13:45 阿寒岳神社奥之院(白龍神王)

どういうことだ?

由緒を記した案内板があった

尾ひれ背びれの要素もあるけれども、白龍神社(ヤイタイ島)の遙拝殿だったのか。

島には頻繁に参拝できるわけでもないため、遙拝所を設ける必要がある。

ヤイタイとはヤマナラシ(ヤナギ科の植物で冷温帯地域に自生する)の別名。

島に自生する植物からその名がついたと思われるが、それ以上のことはわからない。

地元の人々はふだんはこちらで遙拝し、5月28日の例大祭の日にヤイタイ島に赴くんだな。

摩周湖は湖自体がカムイ・トー、すなわち神だ。

阿寒湖には龍神が祀られ、今も人々の信仰を集めている。

屈斜路湖のクッシーも、湖に神の気配を感じた人々の声なき声が具現化した未確認生物だったのかもしれない。

道東三湖はまぎれもなく聖地だ。釧路には、聖地がある。

俺編集『日本の神々 神社と聖地』北海道編に加えておこう。

バスの発車までまだ1時間ある。他にもいろいろ見てみよう。

温泉の西側にやってきた。

みやげもの屋が立ち並ぶアイヌコタン
(アイヌ語で「集落」の意)
アイヌ語でフクロウを表す言葉はいくつもあるが、北海道にしか生息していないシマフクロウを指す名称はコタンコルカムイ
「村を護る神」という意味がある
アイヌ生活館
アイヌの生活用具などが展示されている
クマ神さまもいらっしゃるのか
俺も心がけよく暮らそうっと
ふくろう神社
あかん遊久の里(ホテル)内にある
これがご神体
縞ふくろうに祈る祝詞・礼拝の詞
泊まりもしないホテル内でめちゃ感激した俺(笑)

『聖徳太子はいなかった』を著した石渡信一郎氏は、アイヌ語を研究するために北海道に移住したという。

北海道および東北の古代史について考えるうえで、アイヌ文化やアイヌ語の知識が必須であると考えたからだろう。

たしかに、アイヌ語がわかれば地名の由来も含めていろいろなことが理解できる。

動物を神とあがめ、大切にするアイヌの文化。

他者を敬い、いのちを大切にする気持ちをみんながもっと持てば、差別はなくなる。戦争だってなくなるはずなんだ。

でも、差別すること、戦争することも含めての人間の本性(ほんせい)だ。

人間の本性を認めたうえで、よりよく生きるための道を、名もなき庶民の信仰から探っていこう。

北海道いいなあ。刺激に満ちている。

間を空けつつ、またピンポイントで別の場所にも行ってみよう。

16:30 たんちょう釧路空港

空港では想定外の事態が起こっていた。

ミスト(霧)に覆われた釧路空港
名状しがたいものが現れる展開だぞこりゃ
濃霧の影響で札幌行きの便は早々と欠航が決まり、羽田行きの便にも遅れが生じている

欠航が決まれば空港で夜明かしすることになるのだろうか。

毛布とパンが配られ、深夜のニュースで報じられたりするのだろうか。

それより闇より来たりし名状しがたきものをどうにかしなくちゃ。

武器はないかとリュックをがさごそ……ん、なんだこれは?

北方領土資料館(納沙布岬)でもらった四極到達証明書(最東端)である

スタッフさんに言われるままに質問に答えたら手渡された。すっかり忘れてた。

最東端ってことは最北端とか最西端、最南端なんかもあるんだろうな。

コンプしなければ気が済まない性格だから御朱印だのダムカードだのはもらわないでおいたのに。

ぐぬぬ……こうなったら!

【結論】最北端と最西端と最南端もめざします! どこか知らんけど。

おや、裏に何か書いてあるぞ。

裏面
四枚の証明書が合わさりしとき、伝説の大龍神が復活するであろう
そんなふうに読みとれる

……ぐふふ、かくなるうえは大龍神を復活させて、東京を火の海に変えてやるっ! 舞浜、お前もだっ!

そして世界を支配するのだーっ。うわはははのは!!!

……えーと、10(ten)Qくんは名状しがたい何かに意識を乗っ取られちゃったけど、不思議をめぐる旅はまだまだ続くんだクマ ←今度はクマ神さまなの?
(「くまきち」という。いずれ語る機会もあるだろう)

四門だって開いてやるからなーっ!

四神の恐ろしさ、思い知るがよいぞーっ!!

[2024年6月19~20日]

(※ちなみに羽田行のAIR DO74便は30分遅れで無事出発しましたとさ)

絶対だからなーっ!!!

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