遠き日のこと
亡くなったばーちゃんが言ってた。
若い頃は、何一ついい事がなかったとそれが、口癖だった。今が一番幸せだと。
大正時代に生まれたばーちゃん。
結婚も一度も会った事のない写真だけの人を両親が決めた。勿論ばーちゃんの意見なんかとうらない。
昭和に入り戦争が始まった。
誰が望んだわけでもない。
国民は、従うしかなかった。
誰を恨めばいい。誰を信じればいい。
ひもじい思いをして…。
天皇万歳!!と亡くなっていった人は、何を思う。
今の時代を見て何を思う??
自分の命を投げ出してまで、国に仕えた方々には、頭が上がらない。
御国の為なら。天皇の為なら。
自分の命なんか惜しくない。
そんな考えを小学生から、叩きこまれた。
戦争がダメだと、口にするだけで非国民と呼ばれた。
なにが、正しい。
なにが、悪い。
なぜ、命まで、犠牲にさせられないといけなかったのだろう?
ばーちゃんも、公園に皆で集まり 竹槍の練習をした。
あたしに言った。ばーちゃん あんな竹槍で勝てるわけがないと思ってたよ。
でも、一切口には出せないからね。
夏の暑い日 防空壕に長男と皆で入っていた。
暑いから、防空壕の蓋は開けていた。
お母ちゃん 怖いよ。閉めてよ。
大丈夫だよ。
やだ、閉めて!! お願い閉めて!!
閉めた瞬間 ドカーン。ドカーン。
凄まじい音が鳴り響いた。
長男の一言で、皆命を救われたのだった。
生き残る厳しさ。毎日のように亡くなってゆく儚さ。
毎日が、生き残る事で、頭がいっぱいいっぱいだっただろう。
安らかに眠れた日なんかなかったんではないか?
じーちゃんは、潜水艦の海軍だった。
赤札。
皆 一斉におめでとうございます。
亡くなっても、おめでとうございます。
皆のこころのうちは、どんなに苦しかったか計り知れない。
沢山の犠牲者を生んだ。
本当は、皆 誰の為に闘ってるのか?
本当にこれが正しいのか?
自問自答していたんではないだろうか?
でも、ばーちゃんに聞いてみた。
いやねぇ。それが当たり前だと思ってたんだよ。
疑問もなにも…。
怖い。戦争が国民が当たり前だと思ってる世界。
あたしは、ばーちゃんからも、じーちゃんからも戦争の事を聞いた。口数は少なけれど…。
どれだけの人が自分の人生を生きれなかったか。
どれだけの人が、亡くなっていったか。
今 あたしは、怖い事がある。
あたしの母親が昭和21年生まれだ。
戦後生まれだ。
80近い。
戦争を経験した方々が、この世の中から、亡くなり 経験談もなにもなくなり、ただ、戦争があったと教科書に載るだけだ。
そんな事しちゃいけない。
語り続けないと、きっと又何処かで、同じ事が起きる。
もう こんなのごめんだ。
第二次世界大戦で亡くなった方々に、敬服と心からの冥福を祈って…。
貴方方が、闘ってくれたから、戦争のない日本があります。
貴方方が、戦争のない日本を築いてくれました。
あたしは、貴方方の事をわすれません。
いつか、教科書だけに載る事になっても…。
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