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おひとりさまの年金生活


おひとりさまで65歳を迎える

 37年勤務した前職(IT業界)でいっしょに働いた仲間とは、退職後も年に1、2回の食事会をしている。その仲間の一人が今年65歳を迎える。
 彼は60歳の定年後も再雇用で働き続けていたが、今年65歳で退職することにしたそうである。ちなみに、再雇用事情は厳しいそうで、つい1、2年前は働く意欲のある人は無条件で再雇用していたが、今は再雇用を断られるケースもあるということだった。現役世代の給与をアップするには、再雇用のシニア世代の雇用が負担になってきたということなのだと思う。
 彼は独身で、彼の田舎は東北地方の某市、現在は神奈川県で賃貸住宅に住んでいる。彼が65歳で再雇用の終了を向かえるにあたって心配していることは3つあった。1つ目はどこで暮らすか。2つ目は現在の金融資産と年金だけで暮らしていけるのか。3つ目は仕事をしなくなった後の社会とのつながりである。彼の3つの悩みを考えてみることは、5年後の自分を考えることでもある。

どこで暮らすのか

 彼の故郷は東北地方の某市で、実家には兄家族と母親がいて、実家は兄家族が継いでいる。兄家族の家は、実家である母親の家とは別にあり、彼が実家に戻って母親といっしょの家に住む分にはあまり気を使う必要は無いそうだが、実家は相続上は兄のものであり、母親が亡くなったときのことを考えると、住み続けるには気が引けるのであった。
 では神奈川県に住み続けるのかと考えると、再雇用終了後は定期的な収入がなくなり、年金だけで暮らすことを考えた場合、家賃を払い続けるのは負担が大きいと思っていた。また会社内での親しい仲間は、神奈川県よりも宮城県の方が多いということもあり、移住するのであれば、実家あるいは宮城県と考えており、神奈川県に住み続ける理由は薄かった。しかし実家でなければ、宮城県に移住したとしても家賃を払い続けるということはいっしょだった。
 彼は旅行が趣味で、時間があれば、車や鉄道で日本全国をフラフラ旅していた。車でも鉄道でも移動の拠点として神奈川県は非常に便利である。東北の実家に帰ったことを想像すると、新幹線に乗るにしても一苦労であり、その点については、神奈川に住み続けるのはメリットが大きいと思っていた。
 様々に考えることはあるが、どこに住むかの判断材料として、「現在の金融資産と年金で暮らしていけるのか」と「社会とのつながり」について考えてみることにした。

現在の金融資産と年金で暮らしていけるのか

 彼は65歳の今年までの約40年、現在の会社一筋で過ごしたことや65歳という年齢から、新しい職に就くことへの不安を抱えていた。またこれまで蓄えた金融資産と基礎年金+厚生年金で何とかなるのではないかと、漠然と考えていた。
 基礎年金+厚生年金は繰り下げすることなく、65歳から受け取る予定で、年金による年収は280万円ほどを見込んでいる。また現在ある金融資産を年利3%で運用でき、90歳までの25年間で取り崩す場合、年間約80万円を受け取ることができる。年金と合わせると、年収は約360万円である。年収360万円から差し引かれる所得税や社会保障費などを15%とすると、年額306万円となる。所得が月約25万円だと考えると、趣味である旅行を続けていくには、神奈川県、宮城県問わず、賃貸住宅に家賃を払い続けることは難しいと思えてきた。

社会とのつながり

 再雇用が終わり、仕事という日常生活が無くなると、社会とのつながりが急激に無くなると思えてきた。「おひとりさま」の場合、仕事がなくなってしまうと誰かと話す機会もなくなってしまう。かといって、これからも週5日フルタイムで仕事をするかと言われると、それはもういいかなとも思う。実家に帰れば母親や兄家族と話す機会はあるが、40年近く離ればなれで暮らしてきたことを考えると、うまくやっていけるのかという不安もある。
 社会とのつながり、そして日々のお小遣いとして、少しでも収入を得ようと考えた場合、何らかの仕事に就くという選択になる。その場合は都会にいるほうが、時給の高い仕事はたくさんあるような気がした。
 自分とって「社会とのつながり」を維持するには何が必要なのか、自分は何ができるのかを考えさせられることになった。

彼の結論

 再雇用の期間はまだ終わっていないので、再雇用終了後にどこで暮らすかの結論は出ていない。たぶん再雇用の終了後に考えるのだと思う。再雇用の終了後に、いつもの仲間で集まって、また食事会をしようということになっている。その時、彼の「どこで暮らすのか」の結論と、その結論に至った理由や背景を聞きたいと思っている。

追記(ファイナンシャル・プラニングの役割)

 ファイナンシャル・プランニングはその名の通り、お金面での計画を示してあげる役割を果たすことだと思います。でもその数字の意味をどのように捉え、その計画の中で、どんな価値を見出すかは、人それぞれなんだと思います。少なくとも、その計画が、その人の行動を狭めるものになってはいけないなと思う。

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