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大阪視察❶-1——2024年7月5日(金)


視察の目的

大阪のレトロ建築を体感(見て触れる)することで、現代のデザインとの違い/デザインの変化を学ぶため。

視察の背景

大阪には数多くのレトロ建築が残されていますが、その中でも保存だけでなく、賃貸ビルとして今もきちんと活用されている建築を視察先としました。歴史を残しながら、新しい視点を入れて使い続けられている空間を体感し、自身の仕事であるインテリアデザインという視点から、長く愛され続けている理由を何か見つけたいなと考えています。

視察先-1 大阪農林会館

竣工:1930年/設計:三菱地所
1930年に三菱商事大阪支店として三菱地所が設計、建築されたビル。昭和47年~現在のような賃貸ビルとしての運用が始まったそうです。2021年に国の登録有形文化財として認定。現在は、感度の高いショップ(アパレルやジュエリー等)が集まっています。今までのデザインをそのまま引き継ぎながら、色を変えたり、一部カスタマイズをしたり。長く使うための工夫が見られました。

当時の雰囲気をもっとも感じられた1Fエントランス
(左)2Fに続く階段。階段を象徴的に配置するのは、この時代ならではの構成 (中)手すりと床タイルの拡大 (右)扉のガラス部分にはゴールドカラーのサイン

タイルの市松模様や手すりのくり抜き(動物のようにも見える)など、細部に対するこだわりが感じられました。

歴史が刻まれている階段室

上下に塗り分けられた壁が特徴的。カラーが当時のものを引き継いでいるのかは分かりませんが、淡いピンクと扉のグリーンの組み合わせが現代的にも見えます。扉右上のサインは、木板で製作されています。

新旧のつぎはぎ

左右には様々なテナントが入居しています。通路は壁と天井が塗装されていますが、床はレトロなまま。廊下を進むと、急に金庫の扉が現れ、不思議な感覚になります。以前はどのように使われていたのか、建物がたどってきた歴史が感じられる場所。

視察先-2 船場ビルディング

外観

竣工:1925年/設計:村上徹一
1925年に職住一体型のビルとして竣工。当時は日本発ともいえる斬新な形態だったそうです。現在はテナントオフィスビルとして運用。国の登録有形文化財に指定されています。

エントランスから中庭につづく通路の木レンガ

すり減っている木レンガから長く使われてきた歴史が感じられます。凸凹や跡がたくさんあり、歩くのが楽しくなるような味わいのある床材。

曲線が多用されている細部のデザイン
(左)階段室の手すり。曲面のある支柱 (中)1Fから中庭を見上げる。手前にはアールデコ調のフェンス (右)内部通路。個室の窓の形にも曲線が用いられている。

外観の重厚な雰囲気とは異なり、内部には曲線を用いたデザインが見られました。優しさが感じられる曲線を取り入れていること、中庭をぐるりと囲む建築の構成が、働くだけでなく、ここで暮らす人を考えてのデザインに感じました。

視察全体を通して

大阪のレトロ建築に関しては、現代ではできない(コストがかかりすぎる、工法として適さないとされる)デザインに触れることができ、そのままでは難しくとも、現代版に変換して仕事であるインテリアデザインに活かせそうな要素を学ぶことができました。
今回は、オフィスの内装設計が仕事だとすると、一見、関連がなさそうな施設をあえて視察先としてめぐりました。普段の仕事の思考とは少し軸をずらして、心地の良い空間やインテリアデザインを考えるきっかけになり、刺激をもらいました。[片岡]

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