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学年ビリでもパイロットになれました

 パイロットには、さも優秀な人がなるのだろう、と思う方もいるかもしれませんが、実はそうでもありません。もちろん、優秀な人もいますが。
 僕は高校の時の成績は下から数えたほうが早く、一番ひどい時は500人中495番くらいだった時があった。500人もいれば体調不良などで万全の状態で受けていない人もいるだろうし、そんな人は全科目受験していなかったかもしれないので(実際はよくわからないけど)、多分その時の試験は実質的にはほとんどビリだったと自覚している。でも、大人になって働くようになれば、高校の成績がどんなに悪い成績だろうが関係ない。今となっては笑い話なので、昔の武勇伝のつもりで「すげーだろパパ、500人中ビリだったんだぜ」と子供に話すと「パパ、よくそこまで勉強しなかったね」と逆に引かれる。毎回ここまでひどくわけでは無いが、高校の時の僕の成績は全くもって良いとは言えない。
 なぜかどんなに悪い点数を取っても平気な僕は、できないテストを「こんなの取っちったよ」とよく周りに見せびらかしていました。どの科目も平均して悪いが、かと言って赤点を取るほどでもない(もうちょっとで赤点の『赤座布団』はありましたが)。こういった、全般的に成績の悪い奴は目安になりやすいようで、ラグビー部などの運動部系の、本当はやればできるけど部活で忙しくて勉強に手が回らない人たちが、僕のテストの点数を気にするようになりました。次第に「おっさん機長ライン」という、いずれかの科目が、この点数より下回ったら本気を出さなくてはいけないラインが自然発生していきました。周りの運動部員に「おっさん、何点?」と聞かれ、教えると「やったー、上だったー」とか、「おっさん機長より悪い?やべ、本気出さなきゃ」となるようになりました。そんなクラスの底辺でしたから、パイロットの「パ」の字もありません。
 そんな悪い点数を取っても、全く気にしないで勉強をしない、まるで危機感の無い僕も、夏休みになってやっとやる気を出した。一念発起して勉強して、底辺の成績ではおよそいけない大学に行って、周りの友人には「奇跡」と言われながらの入学でした。が、なぜかそれでも僕は納得してませんでした。「大学受験に失敗した。俺はこんなもんじゃない」そう思ってました。
 入学後の春、絶対這い上がってやる、そう思いながら書店の資格就職コーナーをあさっていると、航空大学校の入試案内の本がありました。本によれば、航空大学校とは国立のパイロット養成機関で、戦後民間航空会社のパイロットの養成し続けて、当時の日本のパイロットの4割を占めると書いてありました。なるほど。パイロットも悪くないな。とりあえず飛行機は好きだし。
 航空大学校に行くような人は、子供の頃からパイロットになりたくて、ずっと目指して勉学に勤しんできたと思われるかもしれませんが、全くそんなことはなく、子供の頃から飛行機は好きだけど、それはむしろF15とかの自衛隊の戦闘機とかで、旅客機に魅力は感じませんでした。しかもパイロットにはまるで興味なく、むしろ飛行機を機械的にかっこいいなと思ってました。機械に触れる整備士の方が近かったかもしれない。では自衛隊の戦闘機が熱烈に好きだったかというとそうでもなく、小学生の時に作ったプラモデルのほとんどはガンダムでした。
 だから、パイロット養成機関である航空大学校の本を見ても、そういうのもあるのね、とあまたある選択の一つという感じで、すぐに飛びつくほどの熱意はありませんでした。もしかしたら、飛行機も好きだったかもしれない。そう思って、いろんな選択肢の一つぐらいにしか考えていませんでした。
 だいたい、ちょっと胡散臭いと感じました。本の表紙の訓練生たちは、訓練機をバックに腕組みをして、かっこいい訓練生をとして写っています。俺の人生いけてますみたいな?ちょっとダサくない?そういうど真ん中の人たちって苦手なんだよね、とちょっと斜めから見てました。
 それでもとりあえずその入試案内を買って帰りました。その本は航空関係の入試予備校の出版で、巻末には予備校生の合格体験記がのっていて、この予備校のおかげで入学できました、みたいなキラキラした文章が載ってました。気持ち悪い。俺、絶対、その予備校行かない。
 巻末には試験の過去問が載っていて、数学、英語があったような。それほど難しいものではありません。予備校なんて行かなくて良いんじゃね、金かかるし。いつの間にか受ける気持ちになってます。とりあえず大学2年間は在籍して一般教養の科目を取らないといけないみたいなので、2年生で授業をバンバン入れて単位を取れるだけとって、3年生からはほとんど学校に行かなくても良い状況を作りました。4月から3ヶ月勉強すれば十分8月の一時試験には間に合うかなと算段して、単位習得に勤しみました。
 3年から勉強するにしても、2年間は思いっきり遊んで良いわけです。3つのサークルを掛け持ちして、よく遊び、勉強はせず、バイト少なめで貧乏だけどそれなりに充実した大学生活を送りました。

 次回は航空大学校の受験記録です。

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