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パイロットのどんちゃん騒ぎ
航空大学校では、訓練課程ごとに訓練場所が変わる。宮崎のフライト課程が終わると、次は仙台分校で双発機の過程になる。厳しい航空大学校のフライト訓練の中でも、宮崎のフライト課程は特に厳しい。僕らの頃は航空大学校は宮崎本校の他に帯広と仙台に分校があったが、宮崎本校が一番厳しいと言われていた。教官に怒られて、怒鳴られて、自分の不甲斐なさに落胆して、フライト学生はストレスの塊である。週末毎に宮崎の繁華街でどんちゃん騒ぎをするが、それでは足りない。
そんな溜まった鬱憤を晴らすのが、「フェアウェルパーティー」と言われる送別パーティーだ。ぐちゃぐちゃに乱れる、どんちゃん騒ぎだ。
このパーティーは宮崎から仙台に行く先輩を送る送別会として開催される。普通の大学では学年は一年ごとに上がるが、航空大学校は3ヶ月毎に新入生が入学してくるので、この送別パーティは3ヶ月に一度発生する。意外と高頻度である。
航空大学校には「系列」という先輩後輩のシステムがある。入学当初に「試験の過去問を流す」という名目で「君は◯番系列」と強制的に入れられる。実際に過去問なんてものは試験前にはいくらでも寮内で回ってくるので、別に系列の過去問が特別必要なわけではないのだが、そんなことは新入生には分からないので、仕方なしに系列に入る。
実際に、このよく分からない「系列」というシステムが一番活躍するのは、この送別パーティーでの宴会芸である。
宴会では、各系列毎に順番に壇上に上がって宴会芸をする。系列によっては、代々伝わる伝統の「系列芸」がある。この下品極まりない「系列芸」を下級生に無理やりやらせる為に、「系列」というシステムが存在するのだ。
宴会では、系列毎に壇上で宴会芸を披露する。とりあえず裸になるのが定番のスタイルである。学生の裸は毎日大浴場で見ているので、今更なんの目新しさもないのだけど、とりあえずどんちゃん騒ぎを盛り上げるためにデフォルトで裸、という感じだ。たまに裸にならない芸をしてくる系列があると「紳士ー!紳士系列ーっ!」とヤジが飛ぶ。この場合の「紳士」は悪い意味で使っている。巨人軍と違って僕らの世界に「パイロットは紳士たれ」という教えはない。
だから芸は、基本的には下品であればあるほど面白がられる傾向があった。
今回、一般の人もお読みになる高潔なNoteでどこまで書くか、妻と熟慮を重ねたが、この時代に相応しくないということで、芸の内容の記述の大半は削除した。航空大学校の受験生を減らしたくないので、純真な若者が見られないように後半を課金にする。
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