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都市と地方を結ぶ――そもそも「大交流 」とはなんだろう?を考え続けた半年間
大交流プロジェクト 2024年度上半期活動報告
第0章:「大交流って何?」という挑戦とともに
「大交流プロジェクトって何ですか?」
この質問は、私たちが半年間ずっと見続けてきた問いでした。 4月、プロジェクトが始まった時、この問いに対して私たちは明確な答えはありませんでした。 最初は、ただ単に安直に「港を盛り上げる」という思いだけを持って活動していました。
第1章:見えない道を進む
最初の一歩:手探りの活動
4月から5月にかけて、私たちは「港を盛り上げる」という目標を掲げ、セントラル亭を拠点に活動を始めました。プロジェクトと連携し、「流しそうめんイベント」や「島まるごと野菜市」を開催したりもしました。地域の方々との交流を大切に、少しずつですが活動の手応えを感じていました。
しかし、その活動の中で、ある大きな課題に直面しました。
転機:痛烈な気づき
「今の大交流は何かを言っているようで何も言っていない。抽象度が高すぎる。」
町長さんやアンバサダーの方々を前にしたプロジェクト共有の場で、私たちが受けた言葉でした。その時の衝撃は今でも忘れません。「具体性がまるでない。」この指摘に私たちはハッとさせられ、言葉が出ませんでした。
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確かに考えてみれば、この当初は、「楽しいこと」「わくわくすること」だけをやっていればいいという思いだけで「なんのためにやるのか?」や「誰のためなのか?」ということは一切考えられていませんでした。
このままでは、自分たちの活動は一時的なもので終わってしまう。
私たちは、島からいなくなってもこの島に何かを残したいという思いがある一方で、まるで学生のレクレーションのような活動になってしまっていた点に悔しさが込み上げました。
第2章:チームの絆が生まれた夏
新たな仲間との出会い
7月、4人の新しいメンバーを迎え入れました。その時の戸惑いや期待、そして新しい仲間との出会いが、チームに新たな風を吹き込むことになりました。
<新メンバーの声>(なゆみ)
大交流プロジェクトは人とのつながりを通して、いろんなプロジェクトを巻き込んでなにかを企画をしているイメージがあり、最初は純粋に楽しそうだなという気持ちで入りました。
でも、実際に入ってみると採用・広報・受け入れとバラバラで動いていて、プロジェクトのことではなく、業務で精一杯な印象を受けました。
「自分がやりたかったことはこれじゃなかったのでは?」
自由にやっていいよと言われるも、そもそもなにがあるのか知らない状態で、ずっとパソコンと向き合い続ける日々。
「この3か月どう過ごしていこう」と不安でした。
夏から一緒に過ごしてきた同じ受け入れチームのメンバーをはじめ、大交流プロジェクトのみんながたのしそうに本気でいろんなことに向き合っている姿を見て、「私も自分と向き合いたい、自分が選んだ選択を正解にしたい。」という思いが芽生えました。
隠岐にきて4カ月が経ったいま、受け入れチームとして執筆している「私たちの足跡」など、仕事をすることがとても楽しいです。
ビアガーデンという試練
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8月、事務局から「ビアガーデンの主催を大交流プロジェクトでやってくれないか」という依頼を受けました。 正直なところ、どうすればいいのか、どう進めばいいのか、まったく見当もつきませんでした。
時には日をまたいでの会議を重ね、他のプロジェクトの関係者にも多大な協力をいただきながら、手探りで準備を進めました。この経験は私たちにとってかけがえのないものとなりました。
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一つの目標に向かって一緒に活動する中で、私たち10人の間に特別な絆が生まれていきました。楽しい時も、大変な時も、誰かが落ち込んでいる時も、大交流プロジェクトのメンバーがいつもそばにいてくれた気がします。
<プロジェクトリーダーの声>(ちひろ)
最初は、「自分がビアガーデンのことを全部理解して、きちんと整理して伝えなければ」と思い込んでいました。でも、周りのみんなが私の様子に気づいて、「もっと頼ってほしい」と怒ってくれました。その言葉が今でも心に残っています。それまで「頼っているつもり」だったのですが、実は逆にみんなに負担をかけてしまっていたことに気づきました。
<メンバーの声>(nn)
私自身こんなに大きなイベントの企画運営に携わるのは初めてで、得体のしれない焦燥感に駆られそうなこともありました。でも、まわりの先輩留学生たちの『なぜか、なんでも楽しくやれちゃう』エネルギーのおかげで自然と自分の気持ちがビアガーデンに集中し、夢中で取り組むことができました。久しぶりに何かにこんなにも没頭できた瞬間でした。また、自分の足で事業所を回ってビラを配り、そのビラを見て来てくれたお客さんや、他のプロジェクトと協力して作り上げた会場を目の当たりにしたときには言葉にできないほどの達成感を感じました。
達成後の虚脱感と迷い
しかしその後、ビアガーデンという大きなプロジェクトを終え、次の一歩が見えない日々が続きました。その時期感じていたリアルな想いを綴ります。
<メンバーの想い>(りん)
いろんなところから「大交流って」という声が聞こえてくるたびに、本当に今のままでいいのだろうか?もっとチームとしての成果を残さなければいけないんじゃないか?と焦ることもありました。
そんなとき、「自分は今の大交流のままでもいいと思っている」という一人のメンバーの言葉をきっかけに、私自身、少しずつ考えが変わっていきました。確かに、メンバー1人ひとりには通常業務があるため、普段は個々で動くことが多いけれど、困ったときはお互い気楽に話せて相談し合えるぐらい、メンバー同士の絆が強いのが大交流の良さのひとつ。採用・受け入れ・広報それぞれの持ち場で、メンバー1人ひとりが自分の強みを発揮している今の状態を維持しながら、これからもまずは自分たちに任されている役割に専念していきたい。そして、日ごろからコミュニケーションをとりながら、なにか困ったときや力が必要になったときには、今後もメンバー同士でお互いに協力し合っていきたいし、それでいいのだと思うようになりました。
第3章:見えてきた私たちの使命
迷いから生まれた気づき
一人一人が感じていた迷いや不安が、むしろチームの強みを発見するきっかけとなりました。
<チームメンバーの気づき>(おつ)
正直、10月に入った頃は「このプロジェクトって必要なのかな」って思いが頭から離れませんでした。みんなバラバラのことをやってて、大交流プロジェクトは何のために活動してるんだろうって思ってました。
その時、自分たちの弱音を出すのは怖かったんですけど、思い切って山口さんと青山さんに相談してみました。
でも、話してみて気づいたことがあります。僕たちのように事務局のメンバーでもあり島留学生でもあるって立場が、すごく特別なのかもしれないということに。最初は中途半端だなって思ってたこの状況が、実は強みとして生かせるかもしれない。事務局がやりたくてもできないこと、私たちだからこそ見つけられて、実現もできる可能性が広がりました。
当初は、何か大きなことをしなきゃって思い込んでたけど、僕たちにできる小さなことを積み重ねていけばいいんだって思えるようになりました。
迷いの中での発見
9月、10月と進む中で、私たちは「プロジェクトの存在意義」という根本的な挑戦に立ち返りました。
「事務局がやりたくてもできないことを発見・解決していく」
この気づきは、事務局に所属しながら島留学生でもある私たちだからこそ見据えた視点でした。 両方の立場を理解できる存在として、私たちにしかできない価値があるのではないかと思っています。
まとめ:これからの道
今、私たちの目標は明確です。「事務局がやりたくてもできないこと」を積極的に発見し、その問題に取り組んでいきます。
そのために、これからは足を動かし、一人一人へのインタビューや事業所訪問、実際の課題を探していきます。大切なのは「足を動かし、直接の声を聴く」こと。
プロジェクトとは、全員が同じことをする必要はないと思います。同じ方向を向いていれば、それぞれが自分にできることで貢献できる。だからこそ「チームメンバー全員が同じ方向を向いていること」は大切にしたいです。そしてそれは、かなり大きな成果を挙げることだけが目的ではないと感じています。
下半期も大交流プロジェクトは事務局に所属しながら島留学生でもある私たちだからこそできる役割を全うし、海士町にとってなにかを「残せる」よう歩み続けます。
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