どうしても今年、作らねばと思ったんです。
『僕等のラストフェスティバル』というオンライン公演をやっています。舞台は、高校最後のオンライン文化祭。画面の向こうのあなたが、彼等を救う物語です。残すところ12月14、18、19、20の4公演になりました!
小さな選択と、ちょっとした勇気。チャット上のその一言に、救われた。
2020年になって『インサイドシアター』というものを作り始めました。自粛期間に、家にいながら、ドラマの中にいるような、舞台の内側にいるような物語体験を届けたい思ったことがきっかけです。第一弾は秘密のオンラインカジノを舞台にした『SECRET CASINO』。そして第二弾が『僕等のラストフェスティバル』(以下、ぼくフェス)です。
7月に開催した『SECRET CASINO』は、制作をしていたイマーシブシアターが全て中止になり、自分が抱えたその哀しみと、没入体験を待っていた人達に遊んでもらいたい!という気持ちで制作しました。はじめてのスタイル、はじめてのzoom、今まではリアルな現場で謎解きばかりを作っていたメンバーが集まっての、はじめてだらけの制作でまあ大変で、何度も心が折れそうになりました。
そんな時、心折れずに作り切れたのは、4月10日に開催したオンライン生配信『のぞきみzoom』で、チャットやSNSでもらった声があったからです。
たしかこの時、リアルタイム参加してくれていた人は1000人ぐらい。私がいつも作っていた『あなたが主人公の物語』よりは『あなたが登場人物を応援できる物語』でした。ひとりひとりの力がすごく大きい訳ではないです。けれど、ひとりひとりの声が集まって、参加してくれた方の「小さな選択と、ちょっとした勇気」が熱いうねりを生み出した様子に感動しました。ばらばらの場所から参加している、チャット上の名前しかわからない皆さん、だけど言葉は確実に熱を持って、誰かを突き動かしました。"オンラインで参加型公演を作る"難しさに直面した時は、あの時のチャットの言葉を思い出しています。
お祭りが意外と人生支えてた
そうして『SECRET CASINO』が無事落ち着き出した8月末頃、オンラインエンタメも増えて、リアルエンタメも復活してきて、がむしゃらにPCに向かっていた時、自分の生活に何かが足りないなと感じることがありました。その正体は"お祭り感"。ふらっと盆踊りや高校・大学の文化祭などを覗きに行くのが好きだったし、愛着のあるロックフェスが中止になったことにショックを受けました。誰がか頑張ってくれているから行けてたものなんですが、毎年無意識に救われていたんですね。
ちょうどその頃、インサイドシアターを一緒に作っているプロデューサーが「毎年フェスでガス抜きしてたんだなって気がついた」ということを、ぽろっと漏らしていたのも印象的で。
『SECRET CASINO』がミステリアスな、イマーシブシアター的な部分を重視して作ったので、次はどうしようかなと考えた時、底抜けに明るくて馬鹿馬鹿しい、最後はみんなで笑えて一緒に踊れるようなフェスティバルをオンライン上に作りたい!と思いました。
今年、勇気をくれたすべての人に感謝を込めて
こうした経験を元に、企画が立ち上がったのが8月末。そこからの制作期間は約90日。
普段は意図的に、何年後にやってもそのままの面白さを体験出来る公演にしたいと考えているので、あまり「今年中」とか時期に拘ることはしないのですが、今回はフェスだし、その一瞬の高まりが大事なものだし、普段毎日授業や部活を行っているリアルな高校をお借りする機会なんて今後訪れないかもしれないし、何より2020年を生きていなかったら生まれなかったものなので、どうしても今年中に届けたいと決めてからは、チーム一同人間としての機能を失うんじゃないかレベルにハードな文化祭準備の日々でした。(システムトラブルが発生してしまった回もあり、本当に申し訳ございませんでした)
今年、誰かが立ち上がる瞬間を沢山見ました。絶望の縁から立ち上がれる人間は強くてかっこいい。憧れましたし、鼓舞されました。身近にも沢山そういう人がいてくれたからこそ、自分も諦めない気持ちを持てたということに感謝しています。
一方、必ずしも立ち上がらなくちゃいけない、とも思いませんでした。自分のタイミングで、自由に、自分の大事にしたいものを大事にすればいいな、と思ったのもまた今年の変化でした。
ぼくフェスの7人の高校生達、そして1人の先生は、様々なスタンスで文化祭に参加しています。行動に共感出来る人もいれば、出来ない人もいるかもしれません。けれど、それぞれがチームに必要な人です。自分が応援したいなと思う相手を見つけて追いかける、そんな楽しみ方もオススメです。
(最高にキュートな役者陣があなたを迎えてくれます)
実際の高校から生配信
『高校最後の文化祭』をテーマに選んだ時、配信会場は作りものではダメだと思いました。実際の学校だけが持つあの空気、生徒達がそこにいるような空間、それを全国に届けたいという気持ちがあり、ダメ元でご相談して、生配信会場として借りさせてくださったのが、藤村女子中学・高等学校でした。いきなり「オンライン文化祭を舞台に、お客さん参加できるインタラクティブ演劇をやりたいんです」とご相談して「うちも今年文化祭はオンラインになったので、出来ることがあれば考えたい」って言っていただいたとき、こんな柔軟で、新しいこと受け入れてくださる先生方の元で学んだら、絶対素晴らしい学校生活になるでしょ、て思いました。水上先生というキャラクターが出てくるのですが、その先生は、藤村女子の先生をモデルにしています。
というわけで、校舎の息遣いごと感じていただけたらと思います。細かいところも是非見てみてください。
2021年は、また新たに挑戦します!
ぼくフェスは、本当に今しか出来ない、今体験してほしい演目です。ヒリヒリするような大きな事件が起こるわけじゃないけれど、ささやかな夢があります。そして『SECRET CASINO』『僕等のラストフェスティバル』とzoomを使って出来ることの限界に挑戦してきましたが、今後はまた違った新しいオンライン参加スタイルを提案していきたいと考えています。
新作も発表されています!1月16日、SCRAPとして大きな挑戦となる『オンライン脱出大パーティ』の中で開催する『オンライン・パパラッチ』。理不尽な記者会見とネットでの不確かな情報が同調圧力を生み個人の運命を握るような世界へのアンチテーゼから生まれた物語です。ぼくフェスとは180度変わったハラハラドキドキの世界観になります。
読んでいただきありがとうございます。新しい分野に挑戦する勇気をくれた2020年。集大成のぼくフェス、残り4公演です。なんとしても遊びにきてください!
おまけ:嬉しかった感想たち!この感想もまた、誰かの背中を押すきっかけになるから、素敵ですよね。
さらにおまけ