体験型イベント制作者的、壮絶出産レポート
10月31日に出産をしました。可愛い我が子を見ていると出産の痛みなんて"喉元を過ぎれば熱さを忘れる"だわ…なんてことはなく
いま振り返ってもどえらい壮絶だったな
と思うので、我が歴史としてここに刻みます!
前日準備
計画無痛分娩を希望していたたため、前日から入院。子宮口を広げる処置が苦手で怖くて痛すぎて震え泣く。無痛分娩って名前、いますぐ変えてくれ。
イベント当日 AM6:00
早朝からさらに子宮を広げる処置。この時点で心が折れて早々に夫を召喚。
「たまごクラブ」とかを読んでいると"一生に一度かもしれない体験!出産時は理想のバースプランを助産師さんや産科医さんと相談して〜"とありますが、私が出産をしたのは巨大総合病院だからかそういう情緒は一切無し。前日に夫が「出産応援プレイリスト」(産みの苦しみを乗り越えられるよう、今まで作った公演のテーマソングを集めたもの)を作ってくれていたものの、流せる空気じゃない。すべてがシステマチックに進み、当日出会う人も全員はじめまして。
いきなり「大丈夫かな」という不安が芽生えたのは、点滴の注射を6回程失敗された時。おそらく新人の助産師さん、震え声で「別の者を呼んできます…」と言い、姿を消してしまいます。その後来たベテランぽい助産師さんが一瞬にして注射に成功。その後新人さんは一切姿を見せることはありませんでした。切ない。
そして徐々に「この日のチームなのかな?」思われる座組が結成されていきます。私からは誰がどの役の人かわからないので、分娩台の上から人間観察をして、役職とパワーバランスを推測していきます。
こうして子宮口を広げるバルーンと陣痛促進剤を入れられながら、陣痛を起こすためにいろんな格好をさせられます。足湯に入って助産師さんと夫にお産のツボのマッサージをしてもらったり。思えば、この時が一番穏やかな時間でした。
AM9:00
そこから約3時間。いよいよ陣痛がはじまります。普通に痛い。無痛分娩って名前変えてくれ(2回目)
「ちょっと我慢ならねえ」ってレベルまで痛みを感じるようになったその瞬間、お腹の中で戦いのゴングが鳴らされた感覚が!そして突然の破水!パニックになって「ごめんなさい何か色々出ちゃいました!」と叫ぶ私。
「ゲームスタート!」の合図とともに、さらにひどくなる陣痛。ここまでくると夫がスタッフとして成長をしはじめます。私の顔色を読んで、水を口元に持ってきたり、ツボを押したり。助産師さん達にとってはいつも通りの光景だからか誰も一緒に一喜一憂してくれないので、メンタル面では夫だけが頼りで、朦朧とした意識の中フィッシュマンズの「頼りない天使」が脳内に流れていました。
ところで、あのう、無痛とは…?(3回目)
PM13:00
もはや自分が無痛分娩を希望したことは忘れられてるんじゃないかというぐらい痛みと格闘しているところにやっと麻酔の先生登場!待ってましたああああ!背中に針を入れいよいよ管だらけになりましたが、今までの痛みに比べたら蚊に刺された程度。
すうっと麻酔が効き始め、ここは天国?ってぐらい痛みが引いていく。その様子を見て安心されたのか、今日の戦いを共にすると思っていたチームが勤務時間終了とのことで、あっさり解散。シフト制やったんかい。
夫にも「ご主人!ランチに行くなら今ですよ」との声がけがされ、私は分娩台の上でしばらく1人で放っておかれます。手持ち無沙汰なので仕事のLINEを返信したり。
その後はLINEの主(無痛分娩経験者)が言うように、数時間まったく動きなし。チームはまたはじめましての人達(きっと遅番)により再結成。早く赤ちゃんを下に降ろすためににまた色々なポーズを指示され、がんばる。
PM15:30
赤ちゃんが下がってきたからか、ここで麻酔がまったく効かなくなってきます。痛い。とてつもなく痛い。そして麻酔の先生の退勤時間17:00が近づいてきている。今までの動きを見ていると、この病院は大変ホワイト企業で時間になるとどんな役割の人でもぴたっと退勤してしまう。企業としては素晴らしいがこっちは困る。どうしよう、このまま麻酔が効かないまま夜を迎えるのだろうか。
そんな心配をよそに、ずこんずこんと痛みは続く。麻酔は痛かったら自分でボタンを押して注入する式なので、押しまくるが効果なし。
そこに、突然の吐き気!
意識が朦朧としてきたので体温をはかると39度以上の高熱を出していることが判明。
ここらへんで、さっきまでまったりムードだった助産師さん達が慌て出して誰かを呼びに行く。
PM16:00
ちょっと意識を失いかけて、はっと目を開くと知らない2人組が登場。
「落ち着いて聞いてください。いま母体も赤ちゃんもすごく弱っていて、このまま時間が経過すると危険なので、一刻も早く出すために私たちがやってきました」と言われます。
ぎゅん!と「残り時間あとわずか」のBGMが脳内で鳴り響き、全力でいきみます。痛みがきたら、陣痛の数値を確認し力を入れ、早く出産するために2人がかりでお腹をおされ、込み上げる気持ち悪さと熱っ気と闘う。陣痛促進剤はMAX、筋肉注射も打たれ、妊娠糖尿病だったのでインスリン注射も打たれ、全身に何か針が刺さっている。とてつもなくがんばってるのに、進捗が出る気配がない。これは辛い。
PM16:50
目の前で繰り広げられる、先生達の作戦会議。意識朦朧中ですが、恐々しい言葉が途切れ途切れに聞こえ、麻酔の先生から問いかけられます。
👩⚕️
「きださんは麻酔が効かない体質かもしれません」
「でも母体が衰弱していいるので、この先耐えられないかも」
「追加で違う場所に麻酔を打つことはできます」
「ですが、痛い思いをして針をさしたところで、効く保証はないです」
「追加の麻酔を打つか、ご決断をお願いします」
もうこんな感じ
あと10分で麻酔の先生の退勤時間じゃん…と一瞬脳裏に浮かび
「打ちましょう」
と即決していました。
最善の結果を目指して出来ることは全部やろう!少しでも事態が改善する可能性があるならそっちに賭けよう!の気持ちで。
こうして追加麻酔が打たれ、麻酔の先生は去っていかれました。
その後、麻酔が効き出します。さっきの自分 GJ!!!!!!!!!!
PM18:00
痛みが緩和され元気も取り戻し、第二ラウンドスタート!
これでいけるはず…と思ってから数時間経っても、まだ生まれず。一度はひいた痛みも、またずこずこ痛み出します。どうやら医師的にも「もう待てる限界だ」というところまできたらしく、また決断を迫られます。
「あと1時間やってみてダメだったら吸引をトライして」
「その後、緊急帝王切開に切り替えます」
「今すぐ切り替えも可能ですが、どうしますか?」
「時間いっぱいやります」
直感でそう答えていました。今後は、帝王切開の可能性があるので水を飲むことが禁止に。さらに赤ちゃんの酸素がうすくなっているので酸素マスクをつけて酸素を送ることに。コロナ対策か不織布マスクの上から酸素マスクをするのでたいっへんに息苦しい。
表情から「これはやばいぞ」と感じた夫が、緊迫した空気の中
「あの…音楽かけていいですか…!?」
と問いかけます。医師のみなさんも
「お、音楽?!ノリノリになって出てきてくれるかもしれませんね!」
「音楽かけるなんてはじめてですけど、楽しくなりそうでいいですね!」
と、戸惑いながらも受け入れてくれたようでした。さあビートに合わせて加速するか?!と思いきや、よりによって一曲目にかかったのが…
超しんみりソングきた!!!明らかに戸惑われている空気を感じ、死ぬほど辛いのに
(私)「すみません重めのバラードで…」
と何故か謝ってしまいました。医師のみなさんも気を遣ってか
👩⚕️「あ…◯◯さん、この曲知ってます?」
👨⚕️「いえ…はじめて聴きました!何の曲なんですか?」(夫に向かって)
(テンパってる夫)「えと、この人が作ったやつの曲で…」
👩⚕️「え!作曲家さんとかなんですか?」
(私)「ゼエハアゲエゲエ」
(この辛さで「リアル脱出ゲームとか…体験型イベントのディレクターで」って説明できる自信がない)
てなかんじで会話は続き、職業について誤解されたまま進んでいきます。
↑↑プレイリスト、よければどうぞ↑↑
PM19:00
この辺りから、偉いっぽい先生が入れ替わり立ち替わり来るように。どうやら会議を抜けてきているようで「この感じならまだですね…あと議題2つ片付けてきます!」などと聞こえる。通常の仕事こなしながら現場回してる人じゃん。
そして、当日初参加スタッフで右も左もわからなかった夫が、すさまじい空気読み力で自ら仕事を見つけていき、酸素マスクをなおしたり麻酔のボタンを押せるようになるまでに。現場で指示待ちじゃなくて自ら足りない部分に気がついて仕事を見つけていける人は成長早いんだよね〜!と朧げに現場っぽい感動を覚えつつ、辛さに比例して現場のバタバタも最高潮に。トラブル対応の緊急対応チームが結成されている雰囲気を感じます。
👩⚕️「先生!危険な状態なんですが抜けて来れますか?」
👨⚕️「小児科にも連絡して!」
👩⚕️「◯◯さん積もれた!ラッキー!」
👨⚕️「最高っすね!」
👩⚕️「じゃあ切る準備もしましょう」
(私の心の中)
この土壇場でキャスティングが決まるのか…どこか切られるのか…
でもまあラッキーでよかった
PM20:30
タイムリミットが迫り、いよいよカウントダウンがはじまります。
40%あれば…この勝負勝てる!!勝ちたい!!!!!!
ぜってえ勝つ!!!!!!!!
−−−−−−−−−−−−−−−−この間記憶が途切れる−−−−−−−−−−−−−−−−
👨⚕️ほら、目をあけて!
👶あんぎゃ…おぎゃあ…!
(私)
成功した…のか?!?!?!?!!
成功を確信したのち、号泣
取り上げてくれたのは、はじめて顔を見るえらいキリっとしたベテラン風の男性のお医者さんでした。夫曰く「残り1回」のタイミングでさっと現れて、赤ちゃんを取り上げたら「じゃ、会議に戻ります」とすっといなくなったらしい。でもこの人が現れて明らかに場の空気が変わったと。滞在時間数分の謎のゴットハンド、我が家ではブラックジャックと呼んでいます。しかし最初からいてくれブラックジャック〜!
ようやく自体が把握できるようになると、はじめて見る大勢の緊急対応チームの皆さんが目に入ってきます。決断に対してすぐ対応できるよう待機してくれていたようです。ありがたい。ありがたい。
赤ちゃんもすぐ治療が必要ということで、一瞬の写真撮影タイム。よく「産まれたての赤ちゃんを小脇によせての記念撮影」の絵を見るけれど、思いっきり下半身縫われながら上半身だけ写す撮影でびっくり。みんなこんな感じなのか…?!と思いつつ出血を見ないようにして必死で笑顔を作りました。とても人様には見せれない写真。
PM22:00
その後は医師のみなさんもほっとしたのか「イベントが終わって帰ればいいのになんか長居しちゃってる人たち」感が出ていて面白かったです。
帰宅したと思ってた先生が「難産で心配だったので」と戻ってきて、ついでに下半身を縫い、他の新人の先生たちが「きださん◯◯先生が芸術的に美しく縫ってくださってます。ハロウィンぽくて素敵ですよ!」と言ってきたり(そんなハロウィンぽさあるかい、と突っ込む元気はまだない)
すっかり打ち解けた夫に対して「本当はご主人は出産後すぐ帰っていただかないといけないんですが、もう夜遅くて人もいないしいていいですよ。奥さんにコンビニで何か買ってきてあげて」と指示出していたり
あああこの全員がやりきった感のある空気ね、見たことある!出血多量で輸血の検討さえされてなければノンアルコールビール片手にみんなで乾杯したかったぜ。という状況でした。
後にサッカー好きの夫はこう振り返ります
おまけ
よく「妊娠出産は奇跡だ」と言われていますが、自分ひとりの身に起こったことだけでも、人生で一番ドラマチックで、不安で、痛くて、奇跡と決断の連続でした。
「無事に終わったら、制作過程が大変だったイベントをお客さんが楽しんでくれている瞬間を見て、大変だったことを忘れちゃうようなあの感覚になるのかな」とは思っていましたが、それに近いものはありつつも、冒頭に書いたように絶対に忘れられない恐怖の瞬間。
それでも隣にいる子供を見ると、毎日の注射も、辛かった日々も、君に出会うためなら幸せなものに変わったと思えてしまう。
自力で立ち上がることが出来なくて、寝ながら病室まで運ばれている間、天井を眺めながら「これがエモいってやつかもしれない」と変に納得をしました。感情が溢れすぎてこんな言葉でしか纏められなかったので、いつかこの経験を体験制作に活かしてやるぞと固く誓いながら。この後さらに壮絶な入院生活が待っているとも知らずに。
長いレポート、読んでくださりありがとうございました!
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ありがとうございます。面白い体験を作ることに還元していきたいと思います。