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これからIT業界に入る方が抑えておきたい基礎知識


こんな方におすすめ

  • IT業界の仕事が具体的にどのようなものかイメージしきれていない

  • IT知識を身に着け社会人としてレベルアップしたい

  • ITの専門知識を持つことで市場価値を高めたい

IT業界の市場規模

ガートナー(Gartner)やIDCなどのリサーチ会社の2023年のレポートによると、世界のIT支出は約5.3兆ドルに達するとの予測が示されています。
また、IDCの市場予測レポートも同様の数値を示しています。
世界のIT市場規模5.3兆ドルは、非常に大きな経済規模です。
例えば、2022年の日本の名目GDPは約4.9兆ドルであり、IT市場はこれを上回る規模です。
世界第3位の経済大国である日本よりも大きい規模であることから、IT市場の巨大さが理解できると思います。

日本のSIer業界の市場規模

  • 総市場規模
    日本のIT市場は約10兆円規模で、そのうちSIer業界は約3兆円を占めています。
    多くの企業がデジタル化や業務効率化のためにシステムインテグレーションサービスを利用しています。
    日本国内のIT市場およびSIer業界の市場規模については、MM総研や矢野経済研究所のリサーチレポート が主な根拠です。

  • 主要プレイヤー
    NTTデータ、富士通、日立製作所、NECなどの大手SIerが市場をリードしています。

  • 成⻑分野
    DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、クラウドソリューション、AI、IoT、ビッグデータ解析などの分野が急成⻑しています。

日本のWebサービス業界の市場規模

  • 総市場規模
    日本のWebサービス市場は約2兆円規模とされています。特にEC、SNS、オンライン広告が主要な成⻑ドライバーとなっています。

  • 主要プレイヤー
    楽天、Yahoo、LINE、メルカリなどの企業が市場をリードしています。

  • 成⻑分野
    モバイルアプリケーション、フィンテック、エンターテインメント(動画配信サービスなど)、クラウドサービスが成⻑を牽引しています。

業界セクターとトレンド

IT業界は非常に多様で、以下の5つの主要なセクターに分類されます。

業界セクター

  • ソフトウェア業界
    アプリやシステムの開発、提供、保守を行う業界です。この分野では、プログラマーやシステムエンジニアが、要件定義から設計、開発、テスト、運用まで幅広い工程に携わっています。
    また、ソフトウェア業界はクラウドサービス、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーンなどの最先端技術を活用し、多くの分野でイノベーションを促進しています。IT業界の中でも特に成長が著しい領域であり、社会のあらゆる分野で必要とされるソリューションを提供する重要な業界です。

  • ハードウェア業界
    コンピューターや電子機器、通信機器、家電製品などの設計・製造・販売を担う業界です。この分野では、半導体やチップ、ストレージ、ネットワーク機器など、デジタル社会を支える物理的な基盤となる製品を提供しています。
    ハードウェア業界は、IT業界全体の基礎を支える重要な役割を果たしており、特にクラウドやAI、IoT(モノのインターネット)の普及に伴い、高性能で省エネルギーな機器への需要が高まっています。
    また、製品の小型化や高速化、持続可能性への対応など、技術革新を続けることで幅広い分野に貢献しています。

  • 情報処理サービス業界
    企業や組織の情報を効率的に管理・活用するためのサービスを提供する業界です。この分野では、データの収集・分析、システム運用・保守、業務プロセスの最適化支援など、多岐にわたる業務が行われています。
    特にクラウドやビッグデータ解析、AIを活用したサービスが増加しており、顧客の業務効率化や意思決定の迅速化をサポートしています。この業界は、あらゆる業種のデジタルトランスフォーメーションを支える重要な役割を果たしており、情報化社会の進展に伴ってその需要が拡大し続けています。

  • インフラ業界
    固定電話や携帯電話、インターネット、無線通信といったインフラを取り扱う分野です。この業界では、ネットワークエンジニアがネットワークの設計や構築、運用、監視といった業務に従事しています。 通信は現代社会において欠かせない存在であり、通信業界はIT業界全体の発展を支える重要な役割を担っています。

  • Web/インターネット業界
    Webサイトやアプリの開発・運営、インターネットを活用したサービス提供を主な業務とする業界です。この分野には、eコマース、SNS、検索エンジン、オンライン広告、ストリーミングサービスなど、幅広い事業領域が含まれています。
    また、インターネット業界も、クラウドやAI、モバイル技術の進化に支えられ、急速な成長を遂げています。この業界の企業は、ユーザーにとって利便性の高いデジタル体験を提供することで、日常生活やビジネスプロセスにおける不可欠な存在となっています。今後もデジタル化が進む中で、さらなる革新と成長が期待される分野です。

トレンド

IT業界で現在注目されているトレンドには以下のようなものがあります。

  • AI
    医療、自動運転、金融、製造業、エンターテインメントなど、さまざまな分野での課題解決や効率化を可能にし、イノベーションの原動力となっています。
    また、生成AIや強化学習の発展により、人間と協調して作業を進めるシステムや、新しい価値を生み出すツールの需要が急増しています。

  • IoT(モノのインターネット)
    センサーやデバイスをインターネットに接続し、データの収集・分析・活用を行う技術やサービスを提供する業界です。この分野では、スマート家電、ウェアラブルデバイス、産業用IoT(IIoT)など、多岐にわたるデバイスがネットワークを通じて連携し、新たな価値を生み出しています。

  • 移動通信システム(5G,6G)
    5G通信は超高速データ転送、低遅延、大量接続が特徴であり、スマートフォンだけでなく産業分野やIoTデバイスにも利用が拡大しています。
    6Gは、テラヘルツ帯域の利用や通信速度の飛躍的向上、より高度な低遅延技術が注目されています。現在、2020年代後半から2030年頃の実用化を目指し、国内外で研究開発が進行中です。

  • RPA
    ソフトウェアロボットを活用して、人間が行う定型的な業務を自動化する技術です。データ入力や集計、メール対応など、繰り返し行われる業務を効率化することにより、作業ミスを減らし、業務のスピードを向上させることが可能です。特に、経理やカスタマーサポート、データベース管理といった分野での利用が広がっています。

  • ローコード・ノーコード
    プログラミングに関する専門知識がなくても、簡単な操作でアプリケーションを作成できる仕組みです。ローコードは一部コードを書く必要があるものを指し、ノーコードは完全にビジュアルベースで開発が可能です。これにより、エンジニア以外の人でも効率的に業務用アプリケーションを構築できるようになり、業務プロセスのデジタル化や迅速なプロトタイプ開発が促進されています。

  • デジタル・トランスフォーメーション(DX)
    デジタル技術を活用して、業務プロセスや製品、サービス、ビジネスモデルそのものを革新する取り組みです。たとえば、オンラインプラットフォームを活用した販売モデルへの転換や、AIを用いた需要予測が挙げられます。これにより、効率性向上や新たな収益源の開拓が期待されます。

  • 分散クラウド
    複数のクラウド環境(パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジクラウドなど)を統合的に利用する手法です。これにより、データを効率的に管理し、地域ごとの法規制やセキュリティ要件に対応しながら、ネットワークの遅延を最小限に抑えることができます。グローバル展開する企業やリアルタイム処理が求められるシステムで利用されています。

  • メタバース、NFT、Web3
    メタバースは、仮想空間を基盤とした新しいデジタル体験を提供する概念で、ゲームやバーチャルイベント、デジタルショッピングなど、さまざまな活動が行われています。
    NFTは、デジタルコンテンツに唯一無二の価値を付与する技術で、アートやゲームアイテムの所有権を証明する用途で活用されています。
    Web3は、ブロックチェーン技術に基づき、中央集権型の管理を排除した分散型インターネットを目指す概念で、分散型アプリケーション(DApps)や分散型金融(DeFi)の実現に注力されています。

IT業界の構造

SESとは?SIerと事業会社の違い

  • SES(システムエンジニアリングサービス)
    ITエンジニアが準委任契約や業務委託契約の形態でクライアント企業のプロジェクトに参画し、開発や運用、保守業務を支援するサービスです。エンジニアの指揮命令権はSES企業にあり、クライアントの直接指揮は法的に認められません。柔軟な人材提供が可能で、特定のスキルを持つエンジニアを必要に応じて活用できる点が特徴です。

  • SIer(システムインテグレーター)
    企業や団体のIT課題を解決するために、システムの設計、開発、導入、運用、保守までを一貫して行う企業を指します。顧客の要件に応じたカスタマイズが主で、プロジェクト単位で業務を請け負います。主に一括請負契約を採用し、幅広い業種(金融、製造、流通、官公庁など)を対象とします。ITを活用したソリューションを提供することで、顧客の業務効率化や競争力向上を支援する役割を担います。

  • 事業会社
    IT業界における事業会社とは、自社で企画・開発したWebサービスやアプリを運営し、直接ユーザーに提供する企業を指します。例えば、ECサイトを運営する企業やSNSアプリを提供する企業などが該当します。これらの企業は、システムやアプリを自社内で開発・管理しながら、ユーザーのニーズに応じてサービスを改善していくことを主な業務としています。収益源は広告や課金モデル、EC売上など、サービスそのものから得られるのが特徴です。

代表的なSIer

  • 富士通: 大規模なシステム開発プロジェクトを手掛け、国内外で多くの実績を持つ。

  • 日立製作所: 多様な産業分野でシステムソリューションを提供。

  • NEC: 公共、通信、金融などの分野で強力なシステムインテグレーションサービスを展開。

  • NTTデータ: 大規模プロジェクトのマネジメントと技術提供で実績を持つ。

有名な業界

  • 金融業:銀行、保険会社、証券会社、投資会社などの金融機関

  • 製造業:自動車、電子機器、消費財、重工業など

  • 通信:インターネットサービスプロバイダ、携帯電話会社、ケーブルテレビ会社など

  • 医療:病院、クリニック、製薬会社、医療機器メーカーなど

  • 公共:政府機関、地方自治体、公共サービス提供者など

エンドユーザーとは

システムを実際に使用する企業や組織。
銀行、保険会社、自動車メーカー、通信キャリア、病院、政府機関などが含まれる。
自社でWEBサービスを企画運営する会社もエンドユーザーに含まれ、これらの企業は自社のサービスを最適化し、競争力を高めるために高度なITシステムを導入。

代表的な事業会社

  • SmartHR
    業務効率化のためのクラウド型労務管理サービスを提供。
    従業員情報の一元管理や電子申請など、人事労務を効率化するプロダクトを開発・運営しています。
    日本のユニコーン企業としても注目されています。

  • メルカリ(Mercari)
    フリマアプリ「メルカリ」を運営。
    個人間で簡単に売買ができるプラットフォームを提供しており、日本を代表するユニコーン企業としてグローバル展開も進めています。

  • ビズリーチ
    転職プラットフォーム「ビズリーチ」や、法人向けサービス「HRMOS」などを運営。自社開発のHRテクノロジーサービスで、企業の採用効率化を支援しています。

プログラミング言語について

SIer系に多く見られるプログラミング言語

SIerが行うシステムの受託開発やシステム構築では、業界やシステムの種類に応じて使用されるプログラミング言語が異なってきます。

物流業界の配送管理システム:Java、Ruby
物流業界では、配送管理や在庫管理のためのシステムにJavaが使用されることが多いです。
また、WebベースのシステムではRubyが使用されることもあります。

小売業界のPOSシステム:C#、JavaScript
小売業界では、店舗のレジや在庫管理システムにPOSシステムが使用されます。これらのシステムでは、Windowsベースのアプリケーションが多いため、C#がよく使われます。
また、WebベースのインターフェースにはJavaScriptが使用されます。

金融業界の基幹システム:COBOL、Java
金融業界では、古くから使用されているメインフレームを利用した基幹システムが多く、現在もCOBOLが広く使用されています。一方で、Javaを使用したモダンなシステムへのリプレイスも進んでいます。

製造業界の生産管理システム:Java、Python
製造業界では、生産ラインの管理や品質管理を行うためのステムにJavaが使用されることが多いです。
また、データ分析や機械学習を活用したシステムではPythonも使用されます。

事業会社系案件に多く見られるプログラミング言語

Webサービスの企画・運営をしている会社では、多様なプログラミング言語が使用されます。
一般的なWebサービスでよく使用されるプログラミング言語を紹介します。

EC系のサービス:PHP、JavaScript
eコマースプラットフォームでは、バックエンドでPHP(主にLaravel)、フロントエンドでJavaScript(React、Vue.js)がよく使われます。

ニュース系のサービス:Ruby、JavaScript
ニュースサイトでは、バックエンドでRuby(主にRuby on Rails)、フロントエンドでJavaScript(React、Vue.js)がよく使われます。

Fintech系のサービス:Java、JavaScript
Fintechサービス(ネットバンキング、暗号資産など)では、バックエンドでJava(SpringBoot)、フロントエンドでJavaScript(React、Vue.js)がよく使われます。

SNS系のサービス:Python、JavaScript
SNSサービスでは、バックエンドでPython(Django)、フロントエンドで
JavaScript(React、Angular)がよく使われます。

その他プログラミング言語

ロボティクスシステム:C++、Python
家庭用ロボット、産業用ロボットアーム、研究用ロボットプラットフォームなどのシステムはいわゆるC言語や、派生系のC++がよく使われます。Pythonが使用されるケースも多いので、覚えておくとよいでしょう。

IoTデバイス:Python、JavaScript(Node.js)
ホームオートメーションデバイス、環境モニタリングシステム、スマートシティ関連などにおいては、PythonやNode.jsがよく使われます。

モバイルアプリ開発
・Swift:iOSアプリ開発に使用されます。
・Kotlin:Androidアプリ開発に使用されます。
・Dart:Flutterフレームワークで使用される言語で、iOSとAndroidのクロスプラットフォーム開発に使われます。

モダン開発

シングルページアプリケーション(SPA)
ReactやAngular、Vue.jsといったフレームワークで構築されたSPAの開発において、TypeScriptが使われることが多いです。バックエンドではNode.jsがAPIサーバとして使われることが多いです。

エンタープライズアプリケーション
大規模な業務システムや企業向けのWebサービスで、信頼性と保守性のためにTypeScriptが採用され、バックエンドはNode.jsで実装されることが多いです。
Node.jsとTypeScriptは、現代のWeb開発において非常に強力な組み合わせであり、さまざまなシーンで利用されています。

DevOpsおよびインフラ
・Bash:Linux環境でのスクリプト作成に使用されます。
・Python:インフラの自動化スクリプトやDevOpsツールで使用されることが多いです。
・Terraform、Ansible:インフラのコード管理に使用されるツールで、
 独自の記述言語(HCL、YAMLなど)が使われます。

最後に

今回はIT業界における基本的な知識や仕組みについて学びました。
最初は難しく感じることもあるかもしれませんが、こうした知識が少しずつ積み重なれば、業界への理解が深まり、自分の選択肢を広げることにつながります。
今回の学びが、新しい一歩を踏み出すきっかけにしてもらえますと幸いです。
引き続き、新しい業界トレンドや技術にアンテナを張り、学習を続けていきましょう。


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