その20分間は禍々しさと浄らかさとの奇跡的均衡だ:短編映画YORIKO感想
奇跡の20分間
禍々しい映像とノイズとの重苦しい幕開け。だが思いがけぬ展開(ここは割愛)。クリスマスソングの浄らかな調べとツリーのほの明かりに登場人物たちが優しく包まれて幕。
すべてやり切り、丁寧に編集した結果だろう。
現し身の禍々しさと魂の浄らかさとの奇跡の均衡をなす作品として結実した。
作品の予告編閲覧は、下記にアクセス願いたい。
https://www.yoriko2022.com
2022年7月27日 短編映画「YORIKO」上映会に行った
2022年7月27日。仙台は曇り。
畏友Nさんの母君が短編映画「YORIKO」にご出演とのこと。拙稿はその上映会の感想だ。
会場はせんだいメデイアテーク(https://www.smt.jp)7階のホール。
BA.5感染急上昇のさなかだが、万全の感染対策を講じており、安心して作品に向かうことができた。
オール東北の作品制作
ポストトークは2部構成。
第1部は監督・脚本・撮影・編集のモアンドロン マチュ氏とキャスト。小野寺ずる氏 福島和代氏 伊藤美果氏。続いて第2部。やはりモアンドロン マチュ氏とスタッフ。音楽の斎藤めぐむ氏 岡本優子氏 熊谷育美氏 助監督・照明の佐々木明博氏と豪華だった。
特記すべきは関係者全員が東北在住のクリエイターたちということだ。
東北発の作品で、作り手がオール東北ということ。
その時は「ご当地発」くらいの意味でしか、ボクは捉えていなかった。
忘れがたいコメント:「赦し」と「スピリチュアル・ペイン」
映画の最後に非常に印象的なセリフ(これも割愛)がある。でも、場面の展開上いかにも不自然なセリフなのである。
じつはその不自然さがポイントだった。
作品は高齢化する現代日本社会を扱っている(これも詳細は割愛)。この点について、ある俳優が以下のようにコメントした。
高齢者との関わりで自分を長い間「許せなかった」。だが、この作品制作を通じて自分を「赦す」糸口をつかんだ。こういう趣旨だった。
さらに、作品を監修した医師(清山会医療福祉グループの方)のコメントが滲みた。「人の剝き出しの感情」「スピリチュアル・ペイン」(生きる意味や価値を見失うことによる苦痛*)がそのセリフに込められているとの趣旨だった。
「YORIKO」は、30-50-80代の、三世代の東北在住女性キャスト3人が演じた作品だ。
皆さんが、ボクには想像も及ばぬ、この苦難の10数年間を含む、それぞれの痛みを苦しみを心に閉じ込めてきたのではなかろうか。
誰かに語るでもなく、また誰か聞いてもらうわけでもなく。
だから、
本作品の制作を通して「ペイン」(ここではあえて、閉じ込められた心の痛みという意味)から解き放たれ、
フィクションとはいえ「もうひとつの可能性を生き」て、
作品作りを通して自分の人生を「生き直した」(=自分を赦した)ということではないか。
生き直すことは可能なのだ。すばらしい。
ちょっと説教臭くなってきた。このへんでお開き。
おしまいに、「短編映画」YORIKOを再び見たい!
「短編映画」YORIKOは今回の上映会をもって、一応終了とのこと。
だが「見たい!」のリクエストが多数あれば、状況は変わるとのことであった。
じつは、これが本稿執筆の最も肝要な目的だった。
URLは再び、下記の通り。
https://www.yoriko2022.com
*スピリチュアル・ペインについて。下記HP記事「スピリチュアルペイン(こんな状態で生きていたくない)について」(ホームケアクリニック札幌 / 緩和ケア訪問看護ステーション札幌 院長・前野 宏氏著)を参照しました。
https://homecare-sapporo.com/seminar/第28回%E3%80%80スピリチュアルペイン(こんな状態で生き/ 2022/07/30
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