成年後見制度利用促進専門家会議で最高裁が意見書を提出

厚生労働省の成年後見制度利用促進専門家会議において、第二期基本計画期間の中間検証が進められている。
これに対して各委員から意見書が提出されているのだが、第18回会議(令和6年12月13日開催)において、委員でもある最高裁判所事務総局家庭局長からも意見提出がなされた。

https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001350326.pdf

意見書の前半は、家庭裁判所や地域連携ネットワークの役割を確認するものである。総じて無難な内容ではあるが、家庭裁判所が担える役割の限界について改めて理解を求めたものともいえるかもしれない。

これに対して、福祉・行政等と家庭裁判所の関係では、それぞれの機関の性質上、福祉・行政等において「支援」機能を越えた役割を担うことはできないと考えられますし、家庭裁判所においても、成年後見制度の「運用・監督」機能の枠を越えた役割を担うことはできません。

 家庭裁判所は、司法機関としての性質上、チームの形成に取り組んだり、後見人等に「不適正・不適切な事務」の疑いがあるとはいえない事案において監督権限を行使する(これによりチームの課題を解決する)ことは困難です。一方で、福祉・行政等によるチームの形成・自立支援機能によって、支援体制の見直しが図られることで問題が解決する場合もあると思われます。

後半は、成年後見制度外で日常的な金銭管理を可能とするためのしくみの必要性について述べており、ここでは若干踏み込んだ記述も見られる。

 まず、金融機関に対して、判断能力が低下した者について成年後見制度を利用しない形での対応を求めている。

中間検証報告書(案)には、第三者の支援による御本人の預貯金の引き出しについて、顧客の利便性向上を図る金融機関の取組の一層の定着が図られるように連携して取り組む必要性に関する記載がありますが、金融機関において、判断能力が一定程度低下した御本人が成年後見制度の利用を続けなくても、自律的に日常生活を送ることを可能とすることなどの工夫がなされることが期待されるところです。

また、金銭管理に関する「インフォーマルな支援」(事実上の支援)に関して、法的根拠の付与を求めている。
これは、現在民法改正を議論している法制審議会に向けた主張であろう。

また、施設や事業所が、御本人の日常的な金銭管理を行っている実情があると思われますが、現状として施設や事業所の個別の運用によって行われているものであることからしますと、御本人らしい生活の継続を支援するという観点から、そのような事実上の支援に法的な根拠を与えることも十分に検討されることが望まれます。

個人的には、相当踏み込んできた印象を受ける。裁判所の立場として言及してよい部分なのかという疑問もあるが。

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