懐かしの鮭のホイル焼きと豚バラ大根
そう言った、夫は少しだけ微笑んだ。
夫が料理のことに言及するのは珍しい。
作ったものは何でも食べてくれるけど、基本的に「いただきます」と「ごちそうさまでした」しか言わない人だから。
けれど、この日は違った。
なぜだろうと考えると、新婚当時によく作っていたレシピだったからだった。
結婚するまで、私は実家暮らしだった。
そのため、料理をすることは皆無。
いや、正確に言うと作ろうと思えば作れたけど、気乗りしなくていつも母の慣れ親しんだ味を頬張ったもんだ。はい。言い訳ですね。
だが、結婚したら家事が必須になるわけで。
共働きだから分担していたけれど、料理は私が主に作っていた。
私は大学の4年間、家から出ていてため一通り家事ができたけど、結婚したときは不安だった。
ちゃんと家事ができるのかと。
しかし、家を出ると意外と家事力が衰えていないことに自分が一番驚いた。
昔取った杵柄は本当なんだな。けっこう嬉しかったっけ。
そんな新婚時代によく作っていたのが、豚バラ大根であった。
理由は母の豚バラ大根が、それはそれは美味しかったのでマネしたかったのだ。
母の豚バラ大根は甘辛で、口にいれると煮汁が染み出た。生姜が多めに入っていて、ほんの少しだけピリっとするのが絶妙なのだ。
結婚してからは、母の味を求めて煮物などの和食を作ることが多かった。実家にいたときは文句を言っていたのに、少しホームシックだったのかもしれない。
その他に、実家の庭では家庭菜園の野菜が季節を問わずつくられていたので、採りたての野菜をよく食べたもんだ。その名残で、新婚当時も野菜たっぷりのおかずを作った。
その代表的な料理が、鮭のホイル焼きであった。
ホイルを広げて、鮭をのせる。
そして、玉ねぎやニンジン、きのこをありったけ乗せて、ホイルの口を閉じる。
フライパンにお湯を沸かし、その中にホイルを放り込む。
その後は、特に作業もないからラクチン。タンパク質もミネラルも摂れる最高の一品だ。
しかし、フリーランスになって一転。
とにかく時短で作る料理ばかりで、一手間を惜しむようになった。
たとえば、鮭だったらただ焼くだけ。
娘は焼き鮭しか食べないので、わざわざ大人と子供でレシピを変えるのが面倒だったのもある。
だから、たまたま流れてきたSNSでホイル焼きを見かけとき、どうしても食べたくなった。
だって、いつも楽なレシピか、子どもが食べられる料理に寄せていたから。
自分のために、食べたい料理を作るって贅沢じゃない?!
それに、私はポン酢が好きなのだ。
酸味の味つけが好みだから、鮭のホイル焼きはどストライク!
そしたら、意外にも夫に喜ばれたというわけ。
本当は、手の込んだ料理や新婚当初に頑張って作っていた一品が好きなのかな?
品数が多いと、
と言われるし(笑)
なんだかんだ言って、私たち夫婦は食いしん坊なのだ。そして、こうした当たり前の食卓を8年間積み重ねてきたのだ。
夫婦にしか分からない一品。
これからも当たり前で、ありがたい食卓を楽しく囲んでいこうと思う。
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