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忌み嫌っていた公務員としての過去を捉え直せた話

今日は朝から市役所へ。

息子の幼稚園では、「就労要件」で預かり保育を利用させてもらっている。1年に1回、勤務状況を報告するために現況届を提出するのだが、わが家は書類に不備があった。

そのため、追加で書類を提出する必要があったのだ。

しかし、市役所に行くのは、なんとも気が重い……。

なぜなら、過去の自分を思い出すから。

市役所時代は、いろんな闇を経験した。

市民からのクレーム。1時間以上の罵声。
上司からのパワハラ。同僚からのセクハラ。
組織の縦構造。

いろんなネガティブな出来事があっても「私はここしかないから」とじっと耐えて、しがみついていた。転職してうまくいく未来を想像できなかったのだ。

それに公務員は自分から辞めなければ、金銭面や福利厚生は充実している。
だから、その立場を手放せなかった

それでも、最後は退職の道を選択。
今は、フリーランスの世界を知った。

井の中の蛙が、大海に出たら世界はとんでもなく広かった。

そんな世界を知らない人たち、つまり、公務員として働いている方々をいつしか心の中で蔑むようになっていた。

「なんでここにいるんだろうと思うなら、辞めればいいのに・・・」

公務員として在職中のとき、辞めたがっている人が周りに多かった。私自身がそう感じていたから、そういう人を引き寄せたのだろう。

けれど、

スキルもないし。
年齢も年齢だし。
家族がいてお金がかかるし。

文句は言うものの、行動せずに現状維持している人が大多数だった。

だから、変われた自分を引き合いにして、心の中でマウントをとっていた。変われない人を落として。

めちゃくちゃ嫌なヤツだ。

そうやって自分を保たせていたのである。
私自身もフリーランスに転身したことを正解にしたかったのだ。

そんなふうにして感情が動くから、市役所に近づきたくなかった。

しかも、書類の提出先は保育課。
私が最後に所属していた職場と同じであった。

3階までエレベーターで上がり、エレベーターホールの表示を見て、保育課の場所を探す。矢印のとおりに進むと、保育課の看板が目に入る。

窓口の1つが空いていたので、職員さんに声をかけた。

「書類を確認するので、お待ちください」

そう言われて、椅子に座ったまま職員さんが座る職場をぼーっと見つめた。

すると、すぐ隣のママさんの声が耳に入る。

視線を向けると、0歳だろうか?
前向き抱っこした赤ちゃんをあやしながら、立ったまま職員さんに質問している。

どうやら保育園の申し込みについてらしい。
ママさんが質問する回答を、脳内で無意識にしている自分がいた。

公務員を辞めて2年。
まだまだ錆びついていない。
慣れとはすごい。

隣のママさんに対応している男性職員は、優しい声で懇切丁寧に説明している。

ママにとって復職できるかは、大きな関心事項だ。それを解消しようと、いろんな案を提示している。

声を聞きながら、窓口で答えていたあの頃の自分と重なった。

当時の私も、ママパパさんの不安を少しでも解消するべく、いろんなご提案をしていた。たとえば、保育園の申込数を多くすること。

保育園がいっぱいの現状に理解を示す人もいれば、怒る人もいた。人それぞれだ。

一方で、こんな方もいた。

「冨田さんに対応してほしい」

そう言って、窓口で指名されたことがあった。
窓口で丁寧に対応してくれたから、またお願いしたい。そう伝えてくれて、なんだか誇らしい気持ちになった。

保育園の入園が決まったときに、わざわざ窓口に来てくれて、お礼を言われたこともあった。

選挙事務で投票場に従事していたら、窓口で話したママさんに話しかけられたこともあったっけ。

全ては、窓口に来てくれる方に少しでも納得して帰ってもらおうと、自分なりに考えて実行してきた。

とにかく優しい声を出して、窓口が穏やかな時間になるよう努めた。

そんな過去の記憶と、窓口で話す男性の様子が、重なった。

すると、公務員に対する認識が自分の中で変化していることに気づく。

今の自分は預かり保育のおかげで、さまざまなチャレンジができている。

職員さんがいるおかげで、書類を提出できた。

保育事業があるおかげで、仕事ができている。

仕事をしているおかげで、息子の経験が増えている。

いろんな先生やお友達と関わることで、息子は成長している。

そう思ったら、公務員は尊い仕事をしていると書き換わった。

暗黒だと思い込んでいた過去が、素晴らしい仕事に携われたと芯から思えた。私は公務員として仕事ができて、ラッキーな人間。

そのおかげで、今があるんだ。
あの時代に、歯を食いしばってしがみついたから身についたスキルが確かにある。それが今の私を支えてくれている。

ありがたい。

そんなことを考えていた。なんだか胸がいっぱいだ。すると、職員さんが戻ってきて言う。

「○○が必要なので、郵送で送ってください」

ジャッジして見定めていた気持ちもなくなり、心の底から「ありがとうございます」と伝えられた。

私は公務員で良かった。
あるべき道を進んできたんだ。

そして、気づく。

今日は9月13日。
公務員を退職した日。

なんという日に気づきがあったのだろう。

シンクロに鳥肌が立つ。

あれから2年が経過した。
今を正解にできるかは、自分にかかっている。

公務員が嫌だから削除方式で仕事を選んだのではなく、今の仕事を選択してきた。選択できたことに感謝して3年目も進化していこう。

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冨田裕子(おーつー)
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