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今日も雨で現場が中止、と思いきや
「ごんちゃん、大工さんになる」
我が家の改修をしてくれた職人を見ながら、ごんはきらきらした目でそう言った。
「大工さんはいいね。いっぱい勉強して建築士さんになろうか」と言った。ごん母は何も考えずにそのように返事して、我が子の成長を夢見た。
それから15年。
ごんは19歳になった。
「おかん、これ見てや。だるいわ~」といってスマホのLINE画面を見せてくる。”今日、雨で中止らしい”と書いてある。社長からか。
「現場、雨っぽいから中止らしいわ。」
折角仕事に行く気になっているのに、雨だと中止。工事現場仕事のあるあるである。一昨日は休み。昨日は事務所に行ったけれど現場が降雨のため、そこで帰された。彼らは事務所に早朝集合して、荷物を積んで社用車に乗り、現場へ向かうのだ。
「弁当まで作ったのにね。」
白ご飯を詰めて、レンチン唐揚げを入れただけの弁当だが、ごちゃごちゃ入っているより好きなものだけシンプルに食べられるので好きらしい。
仕事に就いて給料があると現地で外食や買い食いをするのだが、ここ数か月まともに仕事に就いていないので、金欠。ゆえに家にあるものを持って行く。
「雨でも仕事くれる会社じゃないと、雨ばっかりで月収3万とかなるで。ちょっと考えとかないと。」
「しゃーないわ、梅雨やから。」
ごん母は、タメイキをつきつつも、自分にも仕事があるので、洗濯など朝の家事を進めていく。
ごんは、2階の部屋に戻ったが、ほどなく
「うわ~、今日仕事休みや~思ったのに、あるんやて。余計だるいわ~。」
と言いながら1階に降りてきた。
「ほな、行ってくるわ」
と、弁当水筒を持って、バイクにまたがって行く。
うすら白い機嫌悪そうな空から、忘れたころにパラパラ雫が降ってくる。やっと穏やかな日が始まりだした。
いつまで続くか分からないけれど、またこれにしばらく伴走しよう、とごん母は思う。見てるだけかもしれないとしても。
これは、近所の人には話せない、よくある家庭のADHD思春期の周りの話。
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