お節介と突き放し
障害者ガイドヘルパーのヨモギさん。
スーパーのセルフレジで、
「ん~~~、私、わからないなぁ~~?どうする?」と
さじを投げる(ふり?)
「え~~?」ちょっと困ったような利用者で知的障害をお持ちのAさん
(ヘルパーさんがやってくれるんじゃないの?)
ガイドヘルパー「移動介護従事者」は、視覚障害の方、身体の障害をお持ちの方、知的に障害をお持ちの方の移動を支援するための補助者のこと。
通院、学校や作業所の通所・帰宅時の利用のほか、休日や授業後・仕事終わり帰宅までの余暇活動での利用もある。
ガイドヘルパーの仕事は、利用者さま1人 対 ヘルパー1人で着くことが多いので、お互いに合意が取れていれば、比較的自由気ままにお付き添いするということになる。(もちろん、保護者の方のご希望も考慮)
お金のやり取りや、公共交通機関の乗り降りの補助、安全確保や体調の管理まで、すべきことはそこそこあるが、日常生活で健常者が無意識に行っていることだから、一つ一つは難しい仕事ではない。
簡単に言うと保護者さまの依頼に応じて、もしくは、利用者様の必要度に応じて、安全に移動することを支援する、それがガイドヘルパーの役割である。
さて、冒頭のAさん。
ヘルパーヨモギさんにわからないと言われ、困惑する。
これは珍しいことではなく
小さい子が「教えて教えて」と尋ねてきたときに、「自分で考えてごらん」と突き放す大人がやっているのと同じことだ。
利用者さん本人は、ヘルパーが答えをくれなかったら自分で考えようとする。
しかし、ヘルパーの殆どは人がいいので答えを先に出してしまう。
その方が安全で簡単だから。
ヨモギさんは天邪鬼なので、あえて焦らすのを選ぶ。
自分で選ぶこと。自分でやってみること、を体験することを許す。
成功も失敗も、経験。と考える。
怪我をしないように安全に配慮するのは大前提だけれど、少々の怪我はいっそ仕方がないかと思うこともある。
経験しなくては分からないことがある。そして、経験をしたいか経験したくないかは、利用者さん個々人を見ていれば、動作や表情でちゃんとわかる。
行きたくないところは誘っても行かない。食べたくないものは食べない。
利用者さんの性格によるが、やりたいことばかりアレコレやるいたずら好きもいるし、保護者の方の言われたこと以外一切しない人も居る。
Aさんは、ヨモギさんが教えてくれないので、仕方なく(?)
周りを見ながら、かご置き場にレジかごを置いてみる。
分からなくてヨモギさんを見上げる。
「ここは、こやってバーコード向けるのよ」とヨモギさん。
現金を入れて、画面をタッチして、おつりが出る。
Aさんはおつりとレシートを取り、持参の財布にしまう。
「よくできたね!何回かやったら覚えるね!」
レジが混んでいるときにはできないけれど、空いているときを見計らってまたやってみよう、と思う。
移動支援にもいろいろな考え方がある。
● 安全に何事もなく時間を過ごして帰ってくれればいい
● できるだけ体力を発散してほしい
(夜寝るため、又はイライラせず穏やかに過ごせるようになど)
● 楽しんでくれればそれでいい
● 移動支援に行く習慣を作ることで、心身のリズムを整えてほしい。
● できることを増やしてほしい
● できることは増やさないでほしい
● 移動支援で歩くことで運動の一助にしてほしい
できることが増えると、それに伴い、やりたいことにお金がかかってくる場合もあるが、ヨモギさんは、生きるということは、何らかの欲を叶えていくことだとも思うのだ。
許された枠内で、最大限の可能性が引き出せたら。
持ってる時間とお金の範囲内で、新しい経験ができたら。
自分で決めることを一つでも経験できたら
突き放してるようでも、これは私なりのお節介なんだろう、と
そんなことを考えながら、ヨモギさんは今日も大好きな移動支援をしにいくのだった。