M&Aで注目を集める表明保証保険
エスイノベーションで、事業承継取材を担当している大杉りさです。事業承継初心者講座。今回は、世界的に加入がスタンダードになりつつあるM&Aの「表明保証保険」です。海外では 30年以上も前から流通している保険ですが、日本では2020年頃から、国内M&A向けに大手の損害保険会社が発売を始めた。新しい保険です!。まずは、初心者の私と共に、「表明保証」という言葉の意味から理解していきましょう!
「表明保証保険」ってどんな保険?
はじめに、M&Aを行う際の「表明保証」の捉え方から。表明保証とは、売り手が買い手に対し、事業内容や法律関係が、正確・真実であることを表明し、その内容を保証するものです。M&Aの際に、これから契約する様々な事実や法律関係に、間違いはありません!と示す訳ですね。
M&Aの契約書には、表明保証条項が含まれています。そして、M&Aの交渉の際「表明保証」の内容が論点になることが…。もし表明保証に違反が発覚した場合、買い手にとっては大きなリスクにもなりかねません。その解決策のひとつとして、「表明保証保険」が注目を浴びています。
「表明保証保険」とは、M&Aで「表明保証違反」があった際、それによって発生した金銭的な損害を補償する保険です。
M&Aの際、買い手は、売り手が開示した情報をもとに買収の判断を行います。専門家に依頼した、十分なデューデリジェンス(DD)をもとに株式譲渡や取引条件を検討する訳ですが。もし、売り手が事実と異なる情報を提供していた場合…。買い手側は大きな損害を背負うことになります。
例えば、契約後に売り手側に「隠れた負債」「賃金の未払い」「在庫の評価額の誤り」が発覚した!このような場合、買い手は想定外の負債を背負う事になります。そんな時、買い手側が負った損害を保険金でカバーできるのが「表明保証保険」です。表明保証保険に加入していた場合には、売り手ではなく保険会社に補償を請求することになります。
表明保証条項の記載内容
代表的な、記載項目は以下の通りです。
・開示していない簿外債務が存在しない(不払い・滞納がない)
・第三者の特許権等を侵害していない
・訴訟や紛争がない
・DD・財務諸表や事業内容に間違いがない、全て記載されている
デューデリジェンス(DD)の精度を高めるため、法務会計事務所や、公認会計士などの専門家に、調査を依頼する企業がほとんどです。ですが、交渉中や買収後に、デューデリジェンスでは調査しきれなかったリスクが現れることも考えられます。
表明保証保険の補償の対象となるのは、契約書に記載されている『表明保証条項』で言及されているものに限られます。
「知る限り」と「知り得る限り」
前回の「何からはじめる?事業承継」でもお伝えした通り、証明保証違反が故意と限らないケースがあります。
経営者の皆さん!自社の経営情報は完璧に把握しています!と言い切れる自信はありますか?情報共有の漏れ、特に将来的な可能性の含みに関しては判断が難しいのも事実です。さらに、売り手としては契約時に知りようがなかった事実を、後で追求されても困ります。
知りようがない…。
実は、表明保証の交渉で売り手側は「知る限り」「知り得る限り」という表現を使用する事が多々あります。こう記載することで、表明保証の範囲を限定することができるのですね。
もちろん、買い手が売り手の表明保証違反の事実を認識していた場合は、免責事由(損害が発生しても保険金が支払われない)となります。
M&Aは一般的に、売り手よりも買い手の方が高リスクですので、このような保険を活用するのも事業承継を成功させるポイントです。
買い手のメリット
M&Aをスムーズに進められる
表明補償違反の損害リスクへの備え(早期のキャッシュイン)
補償請求の煩雑な手続きをプロに任せられる
売り手のメリット
表明補償違反のリスク回避
買い手との良好な関係維持
クリーンエグジット(M&A後、買い手企業からの損害賠償を回避し事業撤退できる)
表明保証保険に加入するには?
◯仕組み
火災保険などの損害保険と同じで、保険会社に一定の保険料を支払い、表明保証違反によって金銭的な損害が出た時は、損害額の一部が保険金として被保険者に支払われます
◯補償料
リスクの高低や補償内容に左右されます
必要な補償が案件によって異なります
◯保険期間
数年単位(請求可能期間に制限あり)
◯保険料の目安
補償限度額の1~3%
例えば、補償限度額2,000万円の表明保証保険なら、目安は20万~60万円
◯取扱機関
大手損害保険会社
銀行・金融機関
M&A仲介会社
買い手側、売り手側の交渉決裂を回避する為にも、M&A保険(表明保証保険)は非常に有効なスキームと感じました!これからも、中小企業のM&Aを円滑に進めるため、初心者講座を発信していきます。次回も一緒に学びましょう!エスイノベーション・大杉りさ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?