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俳文「一年の計」

「一年の計は元旦にあり」と言われる。伝え聞くところによれば、これは戦国大名の毛利元就が自分の息子に送った手紙の一節であるそうで、この後さらに、「一月の計は朔日にあり、一日の計は鶏鳴にあり」と続くらしい。いずれにしても、物事は最初が肝心であるから、計画をきちんと立て、それに従って行動することが望ましいという話である。毛利元就と言えば、3本の矢なら折れないと言って、3人の息子に協力をうながしたという逸話の方がはるかに有名だろうと思う。しかし初期のいしいひさいちには、息子たちが3本の矢どころか、鉄砲までへし折ってみせて、さっさと家督を譲れと父親に迫るという漫画があった。

英語圏でも同じようなことを考えていて、新年の抱負を意味する「New Year’s resolution」という言葉がある。この一年での大まかな方向性を表明するもので、そこを目指して具体的な計画をいろいろ立てるわけである。もっともその一方で、新年の抱負を守る人なんて誰もいないとも言われていて、米国のシットコムやアニメ番組では、新年の誓いを立てたそばから破ってしまうという場面が、笑いの種として描かれているのをよく見かける。

このたび、元日を機としてまとまった文章を書くという習慣を始めることにしたのは、その「一年の計」とか「New Year’s resolution」のようなものである。たしかに、一年の最初の日に物事を始めるのは気分の良いものである。とは言え、毎日書くことはもとより考えていない。毎日ということにこだわるあまり、自分でもおもしろいとは思われないことを書き散らすようになってしまっては、本末転倒との誹りを免れることはできまい。だからと言って、とりたてて書くことがないから「何もなし」として許されるのは、自分だけしか読まない日記だけであって、こんな公の場で、「何もなし」と言い放って、すました顔をしているわけにはいかないだろう。だから、書くことがあるときに書き、その代わりに、できる限り長く続ける。そのような料簡でいようと思っている。

 なにごともなき一日と初日記 俄風

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大瀨俄風
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